東京生まれ、渋谷ラバー。2011年小説『空のつくりかた』刊行。その後アパレル企業のコピーライティングをしたり、webメディアを立ち上げたり。最近の悩みは、趣味が多すぎてなにも極められないこと。でもそんな自分が好きです。
当記事は「AI Wave Tokyo」に取材のうえ作成いたしました。
【トークセッション登壇者】
Kindred Ventures:Steve Jang氏
fal. ai:Burkay Gur氏
Aww:Sara Giusto氏
Perplexity:Aravind Srinivas氏
Extropic:Guillaume Verdon氏
Stability AI:Jerry Chi氏
Sony AI:Michael Spranger氏
米シリコンバレーに拠点を置くベンチャーキャピタルファームKindred Ventures(キンドレッドベンチャーズ)は、2024年6月19日(水)に初めて日本(TRUNK(HOTEL) /渋谷区)にて「AI Wave Tokyo」を開催。
シリコンバレーより来日したPerplexity、Sony AI、Extropic、fal. ai、そして日本のAww、Stability AIといった最注目のAI・ITスタートアップが、課題解決に向けた最先端のAI技術ソリューションや商品、サービスについて発表しました。
いずれもAI界を牽引している企業ばかりで、それぞれの観点から異なる技術やミッションを語られていたのですが、共通して浮かび上がってきたのは「創造性」「クリエイティブ」という言葉。IP(知的財産)創出にも大きな影響を与える各社の技術を目の当たりにしてきたのでレポートいたします!
Kindred Ventures創設者のSteve Jang氏による開会のあいさつから始まった当イベント。次に登壇したのは、fal. ai共同創設者のBurkay Gur氏です。
fal. ai
機械学習モデルの実行とスケーリングのためのサーバーレスクラウドプラットフォームを提供しており、これを利用すれば、開発者はインフラの管理なしにAIアプリケーションの構築とデプロイを行うことができる。
Burkay Gur氏は、モデルの「創造性」に注目しているといい、fal. aiが開発したそれはまさしく創造的な作業に優れていると説明しました。というのも、AIを活用することで、高品質なコンテンツ制作が簡単になるため。
今回のAI Waveが日本で行われたのは、世界基準で優れたAI・IT技術と日本企業を結ぶ目的があったわけですが、それをふまえGur氏は、日本はビジュアルコンテンツにおいて他国をリードしているといい、だからこそfal. aiの技術によって日本が先頭に立つことになるのではないかと期待を寄せます。
現在AIは主に消費者によって広く利用されているということもあって、スピード感、つまりGPUの稼働率を上げることが求められているところ。fal. aiは最適化されたモデルを提供しているため、エンジニアが通常多くの時間を費やして作成するモデルを、実に簡単にアプリケーションに組み込むことができるそうです。
AIによって創造的な仕事が変革されつつあることの実例として、クライアントであるバーチャルコンパニオンのcharacter ai、クリエイターツールのCaptions、ゲーム企業向けツールのLayerを挙げ、fal. aiがいかにその貢献をしているかを示しました。
いま注目しているのはモデルの「創造性」
Aww(アウ)
高度な3Dモデリング、アニメーション、AI技術を駆使して、リアルなバーチャルヒューマンを制作・プロデュースする日本企業。ピンクのボブヘアがトレードマークのバーチャルヒューマンimmaは世界的にも有名。
AwwのプロデューサーSara Giusto氏がまず紹介したのは、Awwのプロデュースするバーチャルヒューマンのなかでもひときわ注目を集めているimma(イマ)について。
彼女はポルシェ、IKEA、BMWなど国内外問わずさまざまな企業に起用されており、現在100万人以上のフォロワーを抱えるSNS上では、弟(plusticboy、imma同様にAwwがプロデュースしているバーチャルヒューマン)や愛犬、そしていたって“普通”の日常、あるいは社会的なできごとへの関心を発信しています。
プロデューサーのSara Giusto氏は、これを「ストーリーテリングの革命」と表し、リアルイベントに登壇するといった活動によって、web上だけでなくますます現実世界に影響を及ぼしていることを伝えました。
さらには次のステップとして、AIと掛け合わせることで、より自然な会話を実現し、そして何百万人のファンと同時に会話できるようにすることを目指していると発表。
今後バーチャルヒューマンはChatbotを筆頭に、銀行や病院など活躍の幅を広げ、100年後の歴史にその項目ができているかもしれません。「今はその歴史の1ページ目」だと彼女は語ります。
immaはForbesの「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2020」に選出
次は対談で、Perplexityからは創設者、共同創設者のAravind Srinivas氏が登壇。Kindred VenturesのスピーカーはもちろんSteve Jang氏です。
Perplexity(パープレキシティ)
最先端の自然言語処理と機械学習技術を駆使した、革新的なAI搭載検索エンジンとChatbotを提供している生成AI系スタートアップ。2024年6月17日ソフトバンク株式会社との協業を発表し、日本市場に参入した。
Perplexityが提供しているAI Chatbot型検索エンジン「Perplexity AI(パープレキシティエーアイ)」は、ChatGPT-4o(GPT-4o)やClaudeの最新モデルClaude-3も利用できるのが特徴。
会話型インターフェースでテキストや画像の生成といったマルチモーダル機能を有し、異なる言語モデルの切り替えを可能にすることで、従来の検索エンジンと一線を画しています。
対談では、2022年8月の創設から先般ソフトバンク社と協業にいたるまでの歩みについて振り返りながら、Perplexityがオンラインで質問をするとリンクのみが返される「サーチエンジン」ではなく、きちんと回答が得られる「アンサーエンジン」であると解説。
今後については、「なにかを発見し、それをもって決定にいたるまでのプロセスを一貫してサポートできる環境を作っていきたい」と語りました。
ソフトバンクグループと戦略的提携してGoogleの検索エンジンに対抗予定
Extropic(エクストロピック)
2022年設立。物理学ファーストの観点から、熱力学コンピューティングによってAI機能の強化につながる革新的なアプローチをLitepaperにて発表。物理学と融合させて、新しいパラダイムを創造することを目指す。
Extropicの創設者でありCEOのGuillaume Verdon氏は、AIコンピューティングの需要はますます高まっていくことを前提にしたうえで、確率論を表すには非効率的で、さらには世界を無限に表現しつづけることはできないと言います。
そこで熱力学AIハードウェアの開発に注力していることを発表。なんでも、GoogleにてTensorFlow Quantum(TFQ)という量子機械学習ライブラリの開発を主導した際に、新しいハードウェアの必要性を感じたのだそう。
来年2025年の早い段階で初めてとなるプログラミングしたシリコンチップの検証を予定していると発表し、この分野における先駆者として、物理学の観点でともにAIを推進していける仲間を探していると呼びかけていました。
AI機能を強化する物理学ベースのAIの最先端にいる企業
Stability AI
世界をリードする生成AI企業。「人類の可能性を活性化するための基盤を築くこと」をミッションに、画像、言語、コード、音声などのリソースを最小限に抑え、画期的でオープンなAIモデルを提供している。
Stability AI日本支社の創設者Jerry Chi氏は、クリエイティブなAIアプリケーションに可能性を感じていると切り出します。たとえば、text to image(テキストを入力するだけでAIが画像を生成)、image to video(写真を取り込むだけでAIが動画を生成)といったアプリケーションを多く活用しているそう。
というのも、テキストや音声、画像、動画などをさまざまな方法で組み合わせることで、よりパワフルなAIモデルやシステムを生み出すことができるから。日本は長く築かれたカルチャーも影響し、テキストモダリティ中心という特徴がありますが、今後は領域を広げていくことで、より可能性を広げられると示唆します。
実際にStability AIがこれまでほかの企業と協働でAIを活用することで、マーケティングやデザイン、ECでの販促などさまざまなシーンにおけるソリューションを見出してきた事例も発表されました。
AIを人々の、人々による、人々のためのツールに
最後は対談で締めくくられました。Sony AIからはCOOのMichael Spranger氏、Kindred Venturesからは、やはりSteve Jang氏が登壇。
Sony AI
ソニーグループのAI技術研究開発を専門とする企業。エンターテインメントやクリエイティブ分野における新しい体験の創出、産業プロセスの効率化、ヘルスケア向上といった、より多くの分野でAIによる革新を目指している。
最後のトークテーマは主に、Sony AIがこれまでどのような分野でそのAI技術を活用してきたのか、そして今後どのように発展させていくのかといったところ。
そのなかで、Michael氏が語ったのは「クリエイターセントリックでいたい」ということ。Sony AIはさまざまな分野における革新を目指しながらも、特にエンターテインメントに注力しています。
これからの時代、クリエイターが表現できる場を増やすためには生成AIはますます欠かすことができない存在になるでしょう。
また強いグループシナジーを持つソニーグループが、今後ローカル企業とどのように協力し合って結びつきを強めていくのかといった点に期待を示していました。
特に力を入れているのは人間の想像力・創造性を高めるエンターテインメント分野
当イベントを主催したKindred Venturesについてもご紹介すると、2014年にサンフランシスコを拠点に創設されたベンチャーキャピタルファーム。
特に初期段階、シードステージのスタートアップ企業にフォーカスし、資金投資だけでなく、ネットワークの提供、経営戦略などさまざまな面でサポートをしています。
これまでの投資先は、Uber、ブルーボトルコーヒー、コインベース、Poshmark、Postmatesなど。
最近は、当イベントにも参加されたPerplexityをはじめ、Color Health、dYdX、Forward、Humane、Magic Eden、Tonal、Whisper Aero、Zoraなど、AI、コンシューマー・インターネット、分散型システム、インフラ/ツール、フロンティア・テクノロジーをテーマとする新興企業への投資も活発です。
今回登壇した創設者のJang氏は、2023年、2024年と2年連続でForbesの「ミダス・リスト」において世界のテック系ベンチャーキャピタル投資家トップ50のひとりに選出されました。
これまでの投資家としてのキャリアを通じて、評価額10億ドル以上の企業を10社支援し、うち3社は現在上場。
そもそも2000年〜2010年代にかけて、モバイル、メディアストリーミング、オンラインコミュニティ、開発者ツールなどの新興企業の共同創業者・創業メンバーを務め、同時に友人のサイドプロジェクトやスタートアップに投資しはじめたことから、2014年にエンジェルファンドとしてKindred Venturesを誕生させたそうです。
現在においてKindred Venturesは、投資先企業のリードインベスターとして、6億ドルのAUMを持つ初期段階のファンドとして知られています。
今後AIがより発展し、国内外問わず社会における存在感を強く発揮していくことになったら、同時にKindred Venturesの持つ視点の再評価、さらにはベンチャーキャピタルそのものの必要性も高まっていくでしょう。そしてその未来はすでに訪れていると感じます。
当記事は「AI Wave Tokyo」に取材のうえ作成いたしました。
【トークセッション登壇者】
Kindred Ventures:Steve Jang氏
fal. ai:Burkay Gur氏
Aww:Sara Giusto氏
Perplexity:Aravind Srinivas氏
Extropic:Guillaume Verdon氏
Stability AI:Jerry Chi氏
Sony AI:Michael Spranger氏
東京生まれ、渋谷ラバー。2011年小説『空のつくりかた』刊行。その後アパレル企業のコピーライティングをしたり、webメディアを立ち上げたり。最近の悩みは、趣味が多すぎてなにも極められないこと。でもそんな自分が好きです。