映画の著作権の取り扱いとは?保護期間や著作者の定義を解説
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2025.02.25

映画の著作権の取り扱いとは?保護期間や著作者の定義を解説

「映画の著作権の保護期間は何年?」
「映画の著作権は誰のもの?」
「著作権を侵害せずに映画を利用する方法は?」

上記のような疑問をお持ちではないでしょうか。映画は多くのクリエイターが関わって制作される総合芸術であるため、著作権のルールが煩雑です。ストリーミングサービスやSNSでの共有が当たり前となった現代においては、知らないうちに著作権を侵害するリスクも考えられます。

そのため既存の映画作品を無断で公開したり、二次利用したりする際は、著作権における映画の定義や、著作権の取り扱いについて理解しておかなくてはなりません

本記事では、映画の著作権の保護期間や著作権上における映画の定義、著作者、著作権を侵害せずに使用する方法を解説します。著作権法違反の事例も紹介しているので、映画を安全に取り扱うためにぜひ参考にしてください。

INDEX
  1. 映画の著作権の保護期間は70年
  2. 著作権上の「映画」はテレビドラマやSNS動画も含まれる
  3. 著作権を侵害せず映画の著作物を使用する方法
  4. 映画の著作物における著作者の定義
  5. 映画の使用における著作権侵害の例
  6. 映画の著作権法違反の事例
  7. 著作権上における映画の定義を理解しよう

映画の著作権の保護期間は70年

映画の著作権の保護期間は、以下のように定められています。

映画の著作権

保護期間

公表している場合

公表の翌年1月1日から起算して70年

未公表の場合

制作完了から70年間

映画に録音・録画されている音楽

著作物の著作者が亡くなった翌年の1月1日から起算して70年間

映画は映像や音楽など、複数の著作物が集まって構成される作品です。そのため、それぞれ異なる著作権の保護期間が適用されます。

たとえば、1990年に公表された映画の場合、映画そのものの著作権は公表されてから70年後の2060年に消滅します。

一方、映画内で使用した音楽の著作権は、著作者の死後70年間が保護期間となるため、仮に著作者が2010年に死去した場合は2080年の12月31日まで保護されます。

映画が公表されてから70年経過しても、映画内で使用されている音楽などの著作権は消滅していない可能性もあるため、それぞれの権利状況を確認することが重要です。

参照:文化庁「著作権テキスト」38ページ

著作権上の「映画」はテレビドラマやSNS動画も含まれる

著作権上における「映画」は、劇場公開用映画だけではなく、テレビドラマやSNS動画なども含まれます。

著作権法における映画の著作物は、「映画の効果に類似する視覚的又は聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ、物に固定されている著作物を含む」と定義されているためです。

引用:e-Gov 法令検索「著作権法

映画の著作物に含まれるものと含まれないものの具体例は、以下のとおりです。

映画の著作物に含まれるもの

映画の著作物に含まれないもの

  • 劇場用映画
  • テレビドラマ
  • アニメーション
  • ドキュメンタリー
  • Netflixなどの動画配信サービスで見られる作品
  • YouTubeなどのSNS動画
  • ゲームソフトの映像部分
  • 人工衛星や防犯カメラなど自動的に撮影された映像
  • 簡易的な指示だけを与えてAIが自動的に生成した映像
  • テレビ番組の生放送
  • インターネットの生配信

映画の著作物として認められるためには、物に固定されている必要があります。

生放送や生配信は原則映画の著作物として認められませんが、放送と同時に録画されている場合は物に固定されている状態にあたるので、映画の著作物として保護されます。

著作権を侵害せず映画の著作物を使用する方法

著作権を侵害せず映画の著作物を使用する方法は、以下のとおりです。

  • 著作権者から許諾を得る
  • 保護期間が終了した映画の著作物を使用する
  • 法人契約(業務視聴契約)を結ぶ
  • 業務用のDVDやビデオを使用する
  • 私的利用を目的として使用する

なお、著作権についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

著作権者から許諾を得る

著作権侵害をせず映画の著作物を使用したい場合は、著作権者から許諾を得る、もしくは著作権の譲渡を受ける必要があります。許諾や譲渡の交渉をする際は、使用目的や使用範囲などを明示し、文書で契約を結んでおきましょう。

ただし、著作権の譲渡を受けたとしても著作者人格権は著作者に残るため、以下のように著作者人格権を侵害する用途での利用はできません。

  • 著作権者の名誉を害する使用
  • 著作権者の意に反する作品の改変

著作権者と連絡を取る手段がない場合は、文化庁の審判を受け、補償金を支払い利用する方法もあります。

参照:公益社団法人著作権情報センター「著作物を正しく利用するには? | 著作権って何? | 著作権Q&A
参照:文化庁「著作者の権利

保護期間が終了した映画の著作物を使用する

保護期間が終了した映画の著作物は著作権が消滅しているため、無断で使用しても著作権侵害になりません。著作権が消滅した著作物は「パブリックドメイン」と呼ばれ、誰でも自由に使用できます。

たとえば映画『ローマの休日』(1953年)は、2003年の12月31日に著作権が切れており、安価なDVDが発売されました。ただし、著作者人格権を侵害する利用は禁止されています。

なお、パブリックドメインについてはこちらの記事で詳しく解説しています。

法人契約(業務視聴契約)を結ぶ

専門チャンネルなどの有料放送を流したい場合は、法人契約を締結することで、著作権を侵害せずに映像の著作物を使用できます。

ただし、チャンネルによっては契約できない場合があります。また、複数のチャンネルを利用したい場合は、チャンネルごとに法人契約が必要です。

なお法人契約をしても、映像を録画して二次利用することは認められていません。契約内容で認められた範囲内での利用に留めましょう。

業務用のDVDやビデオを使用する

DVDやビデオを流す場合、業務用を使用すれば著作権侵害と見なされません。ただし、以下の条件を遵守することが前提です。

  • 正規ルートで入手したものであること
  • 提供会社の使用条件を遵守すること

コピーや非正規品を使用した場合は著作権侵害に該当するため、必ず正規ルートで入手しましょう。

また、映画の使用条件は提供会社によって、上映可能な場所や目的などの制約が異なります。事前に利用規約を確認し、不明点や疑問点がある場合は提供会社に問い合わせましょう。

私的利用を目的として使用する

私的目的として使用する場合も、著作権侵害と見なされません。著作権法第30条第1項によると、私的利用を目的とする場合は著作物を複製することが認められています。

ただし、映画の盗撮については適用されません。盗撮によって制作されたコピー映画が多数流出し、映画産業に大きな被害が発生したことにより、映画の盗撮の防止に関する法律が施行されました。

盗撮により映画の著作権侵害をした場合は、懲役刑や罰金刑など罰則の対象となりえます。私的利用の目的だとしても、盗撮を違法とすることで、海賊版の流通防止の役割をはたします。

参照:文化庁「映画の盗撮の防止に関する法律
参照:e-Gov 法令検索「著作権法

映画の著作物における著作者の定義

映画の著作物における著作者の定義は以下のとおりです。

  • 映画の著作者は監督や演出担当者などが該当する
  • 原作者や出演者は著作者に該当しない
  • 法人著作の映画は会社が著作者となる

それぞれ詳しく解説します。

映画の著作者は監督や演出担当者などが該当する

著作権法16条で定義されている映画の著作者は以下のとおりです。

“映画の著作物の著作者は、その映画の著作物において翻案され、又は複製された小説、脚本、音楽その他の著作物の著作者を除き、制作、監督、演出、撮影、美術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者とする。”

引用:e-Gov 法令検索「著作権法

著作物の全体的形成に創作的に寄与した者とは、映画に対して終始イメージを持ちながら、創作活動の全体に関与し参画した人を指します。「モダン・オーサー」と呼ばれ、プロデューサーや監督、カメラマン、美術などが映画の著作者になりえます。

劇場用映画等の場合、著作権者は映画制作者となることが一般的です。映画制作者は、映画を企画し、責任を保有する者を指し、多くの場合は映画制作会社が該当します。

映画制作者が複数名いる場合は、共同著作物として扱われます。著作権を共同で保有するため、著作物を利用する際は原則全員の同意が必要です。

原作者や出演者は著作者に該当しない

映画の原作者や出演者は著作者に該当しません。著作者から除外される人は、以下のとおりです。

  • 映画の原作となった小説や脚本の著作者
  • 映画で使用された音楽などの著作者
  • 俳優や歌手など映画の出演者

映画の原作者や脚本家、音楽作家などは「クラシカル・オーサー」と呼ばれます。クラシカル・オーサーは脚本や音楽の著作者ですが、映画の著作者ではありません

また、映画に出演している俳優は、著作隣接権者として保護を受けます。映画を制作する際は関与する人が多数になるため、権利関係が複雑にならないよう規定が定められています。

法人著作の映画は会社が著作者となる

法人著作の映画は、会社が著作者です。具体的には、映画を制作した従業員の映画会社やテレビ局などが著作者と見なされます。

ただし、以下の権利は放送事業者に帰属するため注意しましょう。

  • 支分権(放送する権利)
  • ネット配信の権利
  • 放送事業者に複製物を頒布する権利

また、モダン・オーサーが放送会社の従業員の場合、放送会社が著作権者・著作者になります。

映画の使用における著作権侵害の例

映画の使用における著作権侵害の例は、以下のとおりです。

  • 映画の切り抜き映像を無断で制作する
  • 映画を無断でネット上にアップロードする
  • 無許可でパブリックビューイングを行う

それぞれについて解説します。

映画の切り抜き映像を無断で制作する

映画の切り抜き映像を無断で制作する行為は、著作権侵害に該当します。

映画の著作権はさまざまな権利で構成されており、無断で切り抜き映像を制作した場合は以下の権利を侵害する可能性があります。

権利

概要

複製権

著作物を複製(コピー)する権利

上映権

著作物を上映する権利

公衆送信権

インターネット上のアップロードなど、公衆へ送信する権利

翻案権

編曲・脚色などを行い、新たな創作をする権利

著作権者に損害を与えた場合、損害賠償の請求や刑事責任を問われることがあります。

なお、切り抜き動画の著作権の取り扱いについてはこちらの記事で詳しく解説しています。

映画を無断でネット上にアップロードする

映画を無断でアップロードする行為は、公衆送信権の侵害に該当します。不特定多数の人が無償で映画を視聴できるようになると、著作権者が正当な対価を得られにくくなるためです。

恒常化すると制作者側は費用を得られなくなるため、良質な映画や動画コンテンツが生まれなくなることも懸念されます。

無許可でパブリックビューイングを行う

無許可でパブリックビューイングを行うことも著作権侵害と見なされます。上映権や公衆送信権を侵害するためです。

映画がパブリックドメインに属していない限り、上映する際は著作権者の許可が必要です。以下の状況はすべてパブリックビューイングに該当します。

  • 野外で大型スクリーンを使用した上映
  • カフェやバーでの上映
  • 地域のイベントや文化祭での上映

パブリックビューイングの規模は、侵害の有無に関係ありません。また、営利目的ではなくても視聴者がいる場合は、公衆に向けた上映と見なされ、著作権侵害に該当します。

映画の著作権法違反の事例

ファスト映画を動画サイトに投稿した男女2人が、映画会社やテレビ局13社から訴訟された事例を紹介します。ファスト映画とは、他人の著作物である映像を無断で編集・改変し、短時間で内容がわかるようにまとめた動画のことです。ファスト映画は主従関係の要件を満たさず、引用に該当しないと考えられます。

項目

内容

概要

・被告の男女2人が『シン・ゴジラ』や『おくりびと』など、計54作品の映画を10分程度の長さに編集

・無許可で制作したでファスト映画を、YouTubeに無断アップロード

・動画は1,000万回以上再生され、700万円程度の広告収益が発生

訴訟内容

・東宝や松竹など、大手映画会社やテレビ局13社が、損害賠償を求め訴訟

・被害総額を約20億円と算定し、一部の支払いを請求

裁判所の判決

・著作権侵害と認定し、原告側の主張を認める

・1回の再生につき200円が相当と判断し、被告に5億円の賠償命令

事例からわかるように、映画の著作物の無断利用は著作権侵害に該当する行為であり、法的責任を負います

参照:読売新聞「ファスト映画の損害額「1回再生で200円」、無断投稿の2人に5億円賠償命令…東京地裁

著作権上における映画の定義を理解しよう

著作権上における映画の定義は幅広く煩雑なので、映画を利用する際は慎重な取り扱いが求められます。劇場用映画だけではなく、テレビドラマやSNS動画なども含まれるため、安易に利用してはなりません。

切り抜き動画の制作や無断でネット上にアップロードする行為、パブリックビューイングで上映する行為なども著作権侵害に該当します。

著作権上の映画の定義を正しく理解することで、法的リスクを回避できます。映画を扱う際は、著作権侵害と見なされないよう細心の注意を払いましょう。

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