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「パブリックドメインの絵画を利用したい」「パブリックドメインの有名な絵画は商用利用できる?」
上記のような疑問をお持ちではないでしょうか。結論からいうと、パブリックドメインの絵画は、誰でも自由に利用できます。
とはいえ「クレジット記載が必須」「商用利用禁止」などのルールが定められているケースもあるため、利用する際は注意しなければいけません。
本記事では、パブリックドメインの絵画を利用できるWebサイトや、利用する際の注意点を紹介します。
パブリックドメインの絵画についての正しい知識を取り入れることで、著作権侵害などのトラブルを回避可能です。ぜひ最後までご覧ください。
パブリックドメインの絵画を商用利用できる条件は以下のとおりです。
パブリックドメインの絵画は著作権が消滅しているため、誰でも自由に利用できます。個人利用はもちろん商用利用も可能ですが、著作権が切れているかどうか裏取りしておくと安心です。
後述しますが、パブリックドメインでも利用すると料金を徴収されるケースもあるので、念のため規約なども確認しておきましょう。
また著作権がある場合は、著作権者の許可がなければ作品を無断で使用してはいけません。
なお、パブリックドメインの基礎知識や商用利用する方法についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
パブリックドメインの絵画を公開している主なWebサイトは、以下のとおりです。
フランスのルーブル美術館の公式サイトでは、50万点以上の作品をオンラインで閲覧・無料ダウンロードできます。
2024年9月時点で、絵画は1万点以上公開されており、すべてダウンロード可能です。世界的に有名な『モナ・リザ』などの作品も含まれています。
ただし、日本語検索ができません。英語やフランス語で検索しなければいけないため、不慣れな方は手間取る可能性があります。
アメリカ・ニューヨークにある世界最大級のメトロポリタン美術館は、約18万点の所蔵作品をオンラインデータベースで閲覧可能です。
ヨーロッパの絵画コレクションは、13世紀から20世紀初頭までの芸術作品が2,500点以上揃っています。
フェルメールやゴッホ、モネなど有名な西洋画家の作品だけではなく、葛飾北斎や歌川広重など日本の浮世絵などもダウンロード可能です。また、ヨーロッパのドレスや武器など、幅広いジャンルの画像をダウンロードできます。
検索をする際は、アートコレクションの「Open Access」のチェックボックスを入れると、パブリックドメイン作品のみに絞り込めるので便利です。
The Metoropolitan Museum of Art
アムステルダム国立美術館は、オランダに関連するアーティストの芸術作品を中心に、80万点以上をパブリックドメインとして公開しています。
気に入った作品を、自分専用のコレクションとしてオンライン上に保存可能です。ただし、無料ダウンロードするためには会員登録をしなければいけません。
代表的な作品に、ヨハネス・フェルメール作の『牛乳を注ぐ女』や、レンブラント・ファン・レイン作の『夜警』などがあります。
カテゴリ別やアーティスト別などに分けて検索ができるので、目当ての作品を見つけやすいでしょう。
Rijksmuseum, hét museum van Nederland
アメリカのワシントンD.C.にある、ナショナル・ギャラリー・オブ・アートは、約13万点ものコレクションを持ち、5万点を超える作品がパブリックドメインとなっています。
ゴッホやモネなど、19世紀頃のアーティストの作品が多いことが特徴です。レオナルド・ダ・ヴィンチの『ジネーヴラ・デ・ベンチの肖像』など、ルーブル美術館にも引けを取らない名作を所蔵しています。
サイトトップページの下部「Open Access Images」から、パブリックドメイン作品の検索が可能です。
デンマークの首都にあるコペンハーゲン美術館は、約4万点の作品がパブリックドメインとなっています。
アーティスト別や国別、年代別など絞り込み検索ができ、パブリックドメインの許可のある作品は、クレジットを記載すれば自由に使用・改変可能です。ルーベンスやムンク、ピカソなどを所蔵していますが、パブリックドメインではない作品も多いため注意しましょう。
アメリカ・ニューヨークにあるシカゴ美術館は、5万点以上の作品が無料公開されています。無料ダウンロードできる作品は、基本的にパブリックドメインとして利用可能です。
モネやルノワール、ゴッホなど西洋のアーティスト作品だけではなく、葛飾北斎の浮世絵など日本画のコレクションも充実しています。高解像度で高倍率のズーム機能が搭載されているため、作品のディテールまで鑑賞可能です。
「CC0(クリエイティブ・コモンズ・ゼロ)パブリックドメイン指定」ラベルの付いている画像は、自由に利用できます。公式サイトでは、クレジットを記載するようアナウンスしているので、利用する際は注意しましょう。
Home | The Art Institute of Chicago
オランダにあるゴッホ美術館には、約5,000点の作品が収蔵されています。画像は無料ダウンロードできますが、商用利用に関しては専用のフォームからリクエスト送信が必須です。
ゴッホの名画をはじめ、ゴッホが妻へ送った手紙など、歴史的に貴重な資料もあります。
The Museum about Vincent van Gogh in Amsterdam - Van Gogh Museum
Paris Musées(パリ・ミュゼ)は、パリ市内の14の市立美術館・博物館のコレクションを管理する公共団体で、歴史的価値の高い作品が39万点以上無料公開されています。
人気アーティストの作品よりも、フランスの歴史に関連する作品が多いのが特徴です。昔のコインの画像や、処刑に使われていたギロチンの画像、王族の肖像画、パリの風景画などさまざまな作品があります。
美術館別やテーマ別に検索できますが、日本語検索には対応していません。英語もしくはフランス語で検索する必要があります。
パブリックドメイン作品は、クレジット表記なしで商用利用も可能です。ただし、クレジット記載することを推奨しています。
Les collections en ligne des musées de la Ville de Paris
NDLイメージバンクは、国立国会図書館所蔵のオンライン展示で、8,500点以上の画像を掲載しています。出典を記載すれば、自由に転載が可能です。
日本の浮世絵や図書・雑誌から、著作権保護期間を満了した選りすぐりの画像が集められています。葛飾北斎や歌川広重などの有名作品もダウンロード可能です。
大英図書館は、世界最大級規模といわれる1億7,000万点以上もの資料を所蔵しています。そのうちの約100万点をパブリックドメインとして利用可能です。
絵画やイラストだけではなく、地図やタイポグラフィなど、さまざまな作品が揃っています。
The British Library: The National Library of the UK
Artveeは、著作権が切れパブリックドメインとなった世界の絵画やイラストを掲載しているコレクションの素材サイトです。無料ダウンロードが可能で、商用利用もできます。
ジャンルごとにカテゴリが分かれており、以下のように数多くのパブリックドメインの絵画を掲載しています。
ダウンロードした作品は、クレジット表記する必要がありません。有名な作品から知る人ぞ知る作品まで、幅広い作品を公開しています。
パブリックドメインQは、自由にダウンロード・商用利用が可能な画像素材集サイトです。クレジット表記も必要なく、改変や再配布もできます。
モネやゴッホ、ジェームズ・アンソールなどの有名絵画や、日本の風景画など多くの作品がダウンロード可能です。ダウンロードできる画像は以下のジャンルに分かれています。
3択クイズに正解するとダウンロード可能になるユニークなシステムを取り入れています。間違えても再度トライできるので安心してください。
ダウンロードは自由に行えますが、著作者の名誉を毀損するような悪質な改変は、著作者人格権の侵害になる場合があるため注意が必要です。
商用利用できるパブリックドメインの有名な絵画を3つ紹介します。
フィンセント・ファン・ゴッホの有名な絵画『ひまわり』もパブリックドメインなので商用利用可能です。ゴッホは1890年、37歳の若さで亡くなりました。没後70年以上経過しているため、ゴッホの作品はパブリックドメインとなっています。
ゴッホの『ひまわり』は、全部で7枚ありますが、そのうちの1枚は太平洋戦争の空軍の襲撃で焼失してしまいました。
しおれたものから満開のものまで、さまざまな段階のひまわりが描かれています。生前売れることはありませんでしたが、ゴッホの死後オークションにて高値で取引されるようになりました。
今ではゴッホの代表作として、世界的に有名な絵画となっています。
クロード・モネの『睡蓮』もパブリックドメインなので商用利用できます。『睡蓮』は、フランス北部のジヴェルニーにあった自宅の庭にある池をモデルとして描かれた有名な絵画です。
モネは1926年、86歳で亡くなりました。没後70年以上経過しているため、パブリックドメインとして利用可能です。
『睡蓮』はモネの代表作の一つで、約300枚描いたといわれています。約30年に渡り、同じ景色を異なる時間や天候で描き続けた作品です。
「印象派」と呼ばれるモネは、自然の美しさを感覚的に表現し、見る人にその瞬間の感覚を伝えようとしました。
フランスのルーブル美術館に所蔵されている人気作品、レオナルド・ダ・ヴィンチの『モナ・リザ』もパブリックドメインなので商用利用可能です。
レオナルド・ダ・ヴィンチは、1519年に67歳で亡くなりました。『モナ・リザ』は、レオナルド・ダ・ヴィンチの作品の中でも最高傑作といわれています。また、盗難事件などで世界的にも注目が集まった作品です。
『モナ・リザ』は、多くのパロディやオマージュを生んでいます。
パブリックドメインの絵画を商用利用する際の注意点は以下のとおりです。
パブリックドメインでも、著作者人格権を侵害することは厳禁です。著作者の死後70年で著作権は消滅しますが、著作者人格権は消えません。
著作権人格権とは、著作者が作品に対してもつ「名誉」や「思い入れ」など精神的利益を守る権利のことです。そのため、著作者人格権を侵害する加工や、中傷にあたる悪質な改変などは禁止されています。
作品の意図をねじ曲げる使い方は、著作者の人格や精神を傷つけるものとみなされるため注意と配慮が必要です。
パブリックドメインを利用して新たに作られた二次的著作物、いわゆる「二次創作」はその著作者に対して著作権が発生します。
二次的著作物を無断で使用すれば、著作権の侵害にあたるため注意が必要です。二次的著作物も、その著作者の死後70年まで保護されます。
海外の著作物は、保護期間が異なる場合があるため注意しなければいけません。日本では、著作物の保護期間は「著作者の死後70年」となっていますが、海外の保護期間は国によって異なります。
たとえば、メキシコは100年、コロンビアは80年です。各国の著作権法の定義によって、パブリックドメインの定義も変わるため注意しましょう。
参照:公益社団法人日本写真家協会「Q:著作権の保護期間が著作者の死後70年以上の国は何処ですか?」
パブリックドメインでも有料のケースがあるため注意しましょう。国によって「有料パブリックドメイン」が存在するためです。
本来、パブリックドメインは無料で利用できるものですが、国の公有財産を商用利用する際に、許可と料金の支払いが必要なケースがあります。パブリックドメイン作品の利益を、芸術創作への援助として増やすことが目的です。
たとえば過去に、『ヴィーナスの誕生』の画像を衣料品の装飾に無断で商用利用したとして、イタリアの美術館がフランスのファッションブランドを訴訟しました。求めた損害賠償は、10万ユーロ(日本円で約1,600万円)です。
海外ではこのような事例もあるため、とくに商用利用したい場合は気をつけなければいけません。また、著作隣接権が存在しているケースもあるので注意が必要です。
著作隣接権とは、著作物を公衆に伝達する役割を担う者に与えられる権利のことを指します。絵画の場合は、出版社などに著作隣接権が存在する可能性があるため侵害しないように気をつけましょう。
参照:Walled Culture「A concept that should not exist at all is already implemented: the “paying” public domain」
パブリックドメインと混在しやすい用語の違いを理解しておく必要があります。パブリックドメインと似た用語は以下のとおりです。
用語 | 意味 |
---|---|
著作権フリー | ・パブリックドメインとほぼ同義 |
ロイヤリティフリー | ・ロイヤリティとは著作権や特許のライセンス料を意味する言葉 |
OSS(オープンソース) | ・ソースコードが無償で公開されており改変や配布ができるソフトウェア |
「フリー」とついていても、著作権が切れていない場合があるため注意しましょう。
パブリックドメインの絵画を利用したい場合は、美術館などの公式サイトを活用しましょう。世界的に有名な絵画が自由に利用できるケースが多くあります。
とはいえ、「クレジットの記載が必須」「商用利用禁止」など規約が定められているケースもあるため注意しなければいけません。信頼できるサイトを選定し、ルールを守って安全に利用しましょう。
IPにまつわる知識・ニュースを随時発信しています。