史上最年少で伊丹十三賞を受賞。のんさんに突撃インタビュー!
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2024.11.09

史上最年少で伊丹十三賞を受賞。のんさんに突撃インタビュー!

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第16回伊丹十三賞(2024年)をのんさんが受賞されました!この賞は、デザイナー、イラストレーター、俳優、エッセイスト、テレビマン、雑誌編集長、映画監督とさまざまな分野で時代を切り拓いてきた伊丹十三氏にちなんで創設されたもの。

そのため授賞の対象となる分野も幅広く、毎年エッセイ、ノンフィクション、翻訳、編集、料理、映像、アクティング、イラストレーション、デザインなどさまざまな領域から驚くべき才能を発揮した方に贈られています。過去の受賞者を挙げるときりがありませんが、たとえばタモリ氏や池上彰氏、是枝裕和氏、星野源氏、小池一子氏など、活躍の場も年齢も性別も問いません。

なかでものんさんは史上最年少での受賞。授賞理由は「俳優、ミュージシャン、映画監督、アーティスト……困難を乗りこえ自由な表現に挑み続ける創作活動にたいして」と発表されており、近年ますます活躍の場を広げ、挑戦を続ける彼女の背中を押す受賞になったことでしょう。

今回はそんな偉大な賞を授与されたばかりののんさんにインタビューをしてきました!

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のん

俳優・アーティスト。音楽、映画製作、アートなど幅広いジャンルで活動。2022年2月に自身が脚本、監督、主演を務めた映画作品『Ribbon』公開(第24回上海国際映画祭GALA部門特別招待作品)。2022年9月、主演映画『さかなのこ』で、第46回日本アカデミー賞を受賞。2024年12月27日、主演映画『私にふさわしいホテル』公開予定。DMMTVにて実写ドラマ『幸せカナコの殺し屋生活』2025年2月公開予定。

のんさん、伊丹十三賞を受賞した率直な感想

伊丹十三賞受賞おめでとうございます!今の心境をお聞かせください。

すごくうれしいです!最初聞いたときは「本当かな?」とびっくりしました。歴代の受賞者が素晴らしい方ばかりで自分には縁遠いと思っていたので、私が受賞していいんだろうかと驚いたんですけど、自分の歩んできた道、活動すべてに対して授けてくださったのが本当にうれしいです。

俳優として賞をいただいたことはあったんですけど、映画制作やアート、すべての活動を通していただくことは初めてで感激しています。

俳優としてだけでなく、音楽活動や映画制作、そしてアートの制作など日々さまざまな顔を見せてくださいますが、どのように切り替えていらっしゃるのでしょうか?

なんというか、自分が表現していくうえで一番いいものを出しているという感覚ですね。今まで活動してきたすべての経験が影響し合って表現力が磨かれていくのを自分でも感じます。

たとえば最初は俳優として映像の世界に入っていましたが、音楽の世界の方やアートの世界の方に出会うことで、それぞれのルールや言葉、空気感を知ることができて、より一層個々の個性を感じるようになりました。

「映像現場のこういうところが好きだな」と思う一方で、音楽の「一緒にステージに立ったらもうみんな仲間」みたいな感覚も素晴らしいなと思うと、それを役者として持ち帰ったときに、垣根をなくして自由な発想で演技をする頼りになるんですよね。

それでまた「演じるときの現場の集中力も好きだな」って改めて思えるので、いろんな世界を知ることで、発想も考え方も、自分がどうやってそこに溶け込んだらいいかという振る舞いも、どんどん自由に広がっていると感じます。

新しいところに飛び込むのは怖くないですか?

そうですね、恐怖を感じる前に飛び込んでいるという感じかもしれません(笑)。あんまり話をするのが得意じゃないから、人と対峙したときには恐怖心があるんですけど、自分がカメラの前やステージの上でなにか表現をするということには恐怖心も抵抗もないんですよね。

「満足できないから続けられる」打ちのめされた宮本信子さんの言葉

さまざまな活動をされているなか、あえて「俳優のんさん」にフォーカスを当ててお聞きしますが、演じるうえで大切にしていることはありますか?

たとえばアメリカの俳優で演技指導者のリー・ストラスバーグさんの開発した「メソッド演技法」 には、役柄が感じている痛みと同じ感覚を自分の内面から掘り下げたり、いろんな役作りの仕方があるんですけど、正しいコーチがいないとうまくいかないといわれていますので、盗めるとこだけ取り入れています。

そういう演技法とはまた違う方法をひとつ挙げるなら、自分の欠点と役柄の欠点をすり合わせていくということを大事にしています。役柄の持っている特性を自分の経験や自分の内部から見つけられると、実感を伴った演技につながるんです。

長所を共通させるというのも役柄に魅力を持たせる大事な方法だと思うんですけど、 短所や欠点を自分に引きつけて解釈することで人間性に奥行きが出ると思っていますね。

自分の欠点と向き合うのは、すごくエネルギーを使う行為ですよね。このたびの伊丹十三賞受賞の際のスピーチで「自分の持っているものが死なないように生きようって思いました」っておっしゃっていたのがすごく印象的だったのですが、大事なものを守るにも強い意志が必要だと思います。

ずっと継続して強い気持ちを持ちつづけるために、普段から意識されていることなどはありますか?

なんの根拠もなく自分を信じきる、疑わないというのが大事だと思っています。でも私も、ふと立ち止まっては「本当に自分のやっていることはいいことなのか」「自分は求められているのか」と考えてしまうこともあります。

そういうときに支えてくれる人や、自分が大事にしていることに賛同してくれたり「そこがいいよね」って尊重してくれたりする人と一緒にいることもすごく大事だと感じますね。

「ひとりじゃない」と感じられると、より一層力を発揮できそうですね。今後ののんさんの活動がますます楽しみですが、最後に展望についてお聞かせいただけますか?

いま表現していることを天井知らずでどんどん高めていきたいですね。頂上のない山を登りつづけているような感覚です。

「なにかひとつ目標がある」というよりも「行けるところまで行こう!」という感じですか?

目標はあるんですけど、ものすごく遠いんです。なのでそこにひたすら登りつづけています。

一度、宮本信子さんに「毎日満足いかなくて『駄目だー』って思っちゃうんですよね」って相談したら、「満足できないから続けられるのよ」って返されたんですね。

ということは宮本さんも満足していないんだ!って気づいたときに、目指しているのが本当に途方のない道なんだということに気づきました(笑)。

「まじ!?」って打ちのめされたんですけど、でもそう思えるのもかっこいいですよね。これからも終わりなき旅を続けていきたいと思います!

インタビュー:西田二郎、浦田みなみ
写真:蒲生善之
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この記事を書いたライター

浦田みなみ
浦田みなみIP mag編集長

東京生まれ、渋谷ラバー。2011年小説『空のつくりかた』刊行。その後アパレル企業のコピーライティングをしたり、webメディアを立ち上げたり。最近の悩みは、趣味が多すぎてなにも極められないこと。でもそんな自分が好きです。

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