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「ChatGPTの商用利用は著作権侵害にあたるのか」「ChatGPTを使って自社のWeb記事を作成したいけれど、商用利用してもよいのか」
コンテンツ制作の現場でChatGPTを活用する際に上記のように考える方は多いのではないでしょうか。
ChatGPTの使用や商用利用そのもので著作権侵害にはなりません。しかし使用方法を誤ると、他者の著作権を侵害する可能性もあります。
本記事では、ChatGPTの使用で著作権を侵害しないための対策と、商用利用の可否を詳しく解説します。コンテンツ制作でChatGPTを利用している方や、ChatGPTの商用利用を検討している方はぜひご一読ください。
ChatGPTの商用利用自体は、著作権侵害にあたりません。ChatGPTで生成されたコンテンツの著作権はOpenAI社ではなくコンテンツ生成者のものとなるためです。
OpenAI社は生成されたコンテンツに関する権利、権原、および利益がある場合はすべての権限をコンテンツ生成者に譲渡すると利用規約に記しています。
また、ChatGPTでコンテンツを生成すること自体も著作権侵害にはあたりません。ChatGPTでコンテンツを生成する際の著作権侵害の基準は、通常の著作物と同じで既存の著作物との類似性・依拠性があるかがポイントになります。
ChatGPTは膨大なデータをもとにコンテンツを生成するため、基本的には特定の著作物との類似性・依拠性が認められることはあまりありません。ただし類似性・依拠性が認められるコンテンツが生成された場合は、著作権侵害とみなされることがあるため注意が必要です。
日本では、著作権のある既存コンテンツをChatGPTの学習ソースとして活用することも著作権侵害にあたらないとされています。情報解析のような「著作物に表現された思想または感情の享受を目的としない利用」の場合は、原則として著作権の許諾なく行えます。
参照:OpenAI社「利用規約」
参照:文化庁「AIと著作権」42~45ページ
参照:文化庁「AIと著作権」30~40ページ
ChatGPTで生成されたコンテンツが著作権侵害にあたる要件は以下の2つです。
著作権侵害の要件として、判例では既存コンテンツとの類似性と依拠性の両方を満たすことが必要とされています。類似性と依拠性の要件について詳しく解説します。
「類似性」とは後発の作品が既存の著作物と同一、あるいは類似していることです。類似性の有無の判断は、他人の著作物の「表現上の本質的な特徴」を直接感得できるかどうかが基準となります。
類似性があると認められるためには、「創作的表現」が共通していることが必須です。創作的表現とは、制作者の思想または感情などの個性の表現のことです。
なお、創作的表現は作品として具体化されてはじめて著作物とされます。それゆえに、イメージやアイデアは「具体的な表現ではない」とされ、類似性は認められません。
たとえば、独創的なストーリーが特徴の小説に後発の小説のあらすじが共通していても、その共通点は「表現ではないアイデア」とされます。
また既存著作物との共通部分が、創造性のない単なる事実やありふれた表現である場合も類似性は認められません。たとえば、パンダのイラストを描く際に体の色を白と黒で塗り、笹を持たせることは、事実かつありふれた表現であるため類似性は認められません。
参照:文化庁「AIと著作権」
参照:公益社団法人著作権情報センター CRIC「著作物って何?」
「依拠性」とは既存の著作物に依拠して複製等がされたことを表します。
依拠性の有無の判断は、既存の著作物に接して、それを自己の作品のなかに用いているかどうか(独自創作等でないか)が基準です。既存の著作物の存在を知らず、独自に創作した作品が偶然一致した場合は依拠性が認められません。
依拠性については、次の3点が総合的に考慮されます。
依拠性が認められる例として、過去に目にした絵画を参考にして類似する絵画を制作した場合や、著名な既存の楽曲にインスピレーションを受けて類似する楽曲を制作した場合が挙げられます。
これらは既存の著作物の存在を知って、かつ類似した作品を制作したといえるため、依拠性が認められて著作権侵害にあたります。
参照:文化庁「AIと著作権」
なお、著作権についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
ChatGPTの使用で著作権に関する問題が指摘された海外の事例を2つ紹介します。
上記2つの事例では、情報源を許可なく学習ソースとして使用したことが争点となっています。
2023年、CNNやダウ・ジョーンズのニュースメディアがChatGPTの学習ソースに無断利用されたとして抗議をしました。
この事例においては、ニュースメディアを学習ソースとして利用する際に、OpenAI社がニュースメディアに対して適切なライセンスを取得していなかった点が問題となりました。抗議の内容は、ニュースメディアの無断利用は利用規約違反であるというものです。
参照:バンソウDX「ChatGPT(チャットGPT)は著作権侵害しているのか?公式の見解を含め解説」
Web記事や書籍をスクレイピングしたとして、OpenAI社が訴訟された事例を2つ紹介します。
スクレイピングとは、Webサイトやデータベースなどの情報源から情報を収集・抽出し、利用しやすく加工することです。ChatGPTのような生成AIツールでは、開発・学習目的で活用されます。
2023年7月、アメリカのClarkson法律事務所がOpenAI社に対して訴訟を起こしました。Clarkson法律事務所によると、OpenAI社は不正に3,000億語のWebスクレイピングをして、個人情報を同意なしに収集したとしています。
また、2023年6月にはカリフォルニア州の2人のアメリカ人作家が、無許可で大量の書籍をスクレイピングされたとしてOpenAI社に対して訴訟を起こしました。この訴訟で作家2人は、ChatGPTの仕組みである大規模言語モデルそのものが著作権侵害による派生作品であると主張しています。
参照:バンソウDX「ChatGPT(チャットGPT)は著作権侵害しているのか?公式の見解を含め解説」
ChatGPTの使用で著作権を侵害した場合、日本では損害賠償請求や刑事罰が適用されます。著作権を侵害した者に対して、著作権者は下記の請求が可能です。
侵害者の故意・過失の有無 | 請求・罰則 | 内容 |
---|---|---|
故意・過失問わず | 差止請求 | ・侵害行為の停止 (具体例:投稿の削除要請) ・予防措置の請求 (具体例:投稿の配信停止を求める訴訟を提起) |
故意または過失がある | 損害賠償請求 | 侵害により被った損害の賠償請求 |
故意がある | 刑事罰 | 10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金 またはその併科 (侵害者が法人の場合は3億円以下の罰金) |
参照:文化庁「AIと著作権」
参照:公共社団法人著作権情報センターCRIC「著作物を無断で使うと? | 著作権って何? | 著作権Q&A」
ChatGPTの使用で著作権を侵害しないためのポイントは下記の3点です。
ChatGPTの商用利用そのものは著作権侵害にあたりません。しかし知らずに著作権を侵害しないように、どのような使用が著作権侵害にあたるのか具体的なポイントを押さえておくことが大切です。
ChatGPTの使用で著作権を侵害しないためには、元データが著作物であるかどうかを確認することが重要です。
コンテンツの元データに著作物が含まれる場合は、生成されたコンテンツと既存の著作物との間に類似性・依拠性などの侵害基準を満たさないよう配慮する必要があります。あわせて、権利者が求める利用規約を守って使用することが重要です。
前述した著作権に関する問題が指摘された海外での事例では、利用規約に反して無断で学習データとしたことが焦点となっています。著作権侵害をしないよう、参照元の利用規約を確認し適切な対応が求められます。
著作権を侵害しないために、ChatGPTの運営元であるOpenAI社の利用規約もこまめにチェックする必要があります。現状、OpenAI社の利用規約ではChatGPTの生成したコンテンツに関する権利、および利益がある場合はすべての権限をコンテンツ生成者に譲渡することになっています。
しかし、今後のOpenAI社の経営方針や法規制によって、利用規約が変更になる可能性もありえるでしょう。利用規約が変更になった場合は速やかに従うことが求められます。
同様に、文化庁の著作権に関する見解にも更新がないかどうかこまめにチェックすることが重要です。また、ChatGPTの著作権に関する実際の判例もこまめにキャッチアップし、法的見解のトレンドを把握しておきましょう。
AI分野は発展が著しく、急な法改正や規約変更も十分起こりえる話です。また、技術発展に伴って法的見解のトレンドも変化していく可能性が高いといえます。
ChatGPTによって生成されたコンテンツは投稿・発表する前に必ず見直しが必要です。そのまま利用するのではなく、生成後は既存コンテンツとの類似性・依拠性がないかどうかチェックすることで著作権侵害を避けましょう。
具体的な対策としてコピペチェックツールの活用が挙げられます。コピペチェックツールとは、生成されたコンテンツとWeb上の既存コンテンツがどれくらい似ているかをチェックするためのツールです。
生成されたコンテンツが既存コンテンツをそのまま流用していないか、あるいは似通っていないか確認しましょう。
コピペチェックに加えて、生成されたコンテンツの内容が正しいものかどうかファクトチェックすることも重要です。ChatGPTで生成されたコンテンツは不正確な情報を参照し、誤りのある情報を含んでいる場合もあります。記載されている内容が事実かどうか、根拠を確認するファクトチェックが求められます。
日本ではChatGPTによって生成されたコンテンツは生成者が著作者となり、著作権が発生します。文化庁の見解では、人が思想や感情を創作的に表現するための「道具」としてAIを使用したと認められれば、AIが生成したコンテンツは著作物に該当し、AIコンテンツの生成者が著作者となるためです。
ただし、生成ボタンを押すだけなど人の思想感情が含まれず、AIが自律的に生成したものは著作物に該当しません。思想感情のような「人による創作的寄与」が具体的にどこまでなのかは、文化庁で検討されている最中です。
なお、海外では文化庁の見解と異なるケースがあります。2023年8月、アメリカのワシントンD.C.でAIが生成したアート作品が著作権保護の対象ではないという判決が出ました。
参照:文化庁「AIと著作権」
参照:Generative AI Media「画像生成AIの著作権は?著作権侵害にあたるケース・あたらないケースを解説」
ChatGPTの商用利用そのものが著作権侵害にはあたりません。しかし、著作権に対する認識不足の状態で利用すると、知らずに著作権を侵害してしまう危険性があります。
ChatGPTで生成されたコンテンツに既存コンテンツとの類似性・依拠性がある場合は、著作権侵害にあたるため注意が必要です。著作権侵害を防いでChatGPTを使用してコンテンツを作成する場合は次の3点を心がけましょう。
ChatGPTをはじめAIは発展が著しい領域です。ChatGPTを活用する際は利用規約や法的見解をこまめにキャッチアップしていくことが求められます。
IPにまつわる知識・ニュースを随時発信しています。