版権キャラクターとは?著作権侵害になるケースや安全に利用する方法を解説
#IPとは
2025.02.19

版権キャラクターとは?著作権侵害になるケースや安全に利用する方法を解説

「版権キャラクターってなに?」「版権キャラクターの権利を侵害せずに利用する方法を知りたい」

「版権キャラクター」という言葉が何を意味するのか、疑問に思う方は多いのではないでしょうか。

版権キャラクターとは、個人や企業が著作権を持っているキャラクターのことです。利用する際は、著作権を侵害しないように注意しなければなりません。

この記事では、版権キャラクターの概要や著作権侵害になるケースを解説し、安全に適切に利用する方法を紹介します。版権キャラクターに関する理解を深め、著作権を侵害しない安全な利用を心がけましょう。

INDEX
  1. 版権キャラクターとは
  2. 版権キャラクターの例
  3. キャラクターにまつわる版権の基礎知識
  4. 版権キャラクターの利用が著作権侵害にあたるケース
  5. 版権キャラクターを利用しても著作権侵害にならないケース
  6. 版権キャラクターを利用して著作権侵害をした場合のリスク
  7. 版権キャラクターを安全に利用する方法
  8. 版権キャラクターの利用時に注意すべきこと
  9. 版権キャラクターは著作権等を侵害しないように利用しよう

版権キャラクターとは

版権キャラクターとは、個人や企業が著作権を持っているキャラクターのことです。「版権キャラ」と略されることもあります。

版権は著作権法における出版権にあたり、著作物の複製・販売に関する独占的な権利を意味します。著作権の旧称でもあるため、現在の法律では使用されていませんが、創作分野などにおいて慣例的に用いられることもあります。

版権キャラクターは著作権を持つため、無断で複製や販売などをすると著作権を侵害することになります。版権キャラクターのイラストを公表したり、そのグッズを制作したりしたい場合は、版権元に許可を得なければなりません。

なお、版権について、また著作権の仕組みや侵害行為については、以下の記事で詳しく説明しています。

版権キャラクターの例

版権キャラクターの例は、以下のとおりです。

  • 既存コンテンツに登場するキャラクター
  • ライセンスキャラクター
  • 公的機関のキャラクター
  • 企業のイメージキャラクター

既存コンテンツに登場するキャラクター

既存の公表されているコンテンツに登場するキャラクターとは、具体的に漫画やアニメ、ゲームなどに登場するキャラクターなどです。この場合、キャラクターの版権は原作者やゲームの開発会社が持っています。

以下が例です。

  • アンパンマン
  • ミッキーマウス
  • ドラえもん
  • ピカチュウ
  • マリオ
  • トトロ
  • モンキー・D・ルフィ

なお、「アンパンマン」や「ミッキーマウス」、「ドラえもん」、そして「ピカチュウ」をふくむポケモン関連コンテンツ、「トトロ」をふくむスタジオジブリ作品の著作権については、以下の記事で詳しく解説しています。

ライセンスキャラクター

ライセンスビジネスに利用されるキャラクターの具体例は、以下のとおりです。

  • ハローキティ
  • マイメロディ
  • リラックマ
  • ちいかわ

ライセンスビジネス、キャラクタービジネスとは、キャラクターそのものを商材として、広告販売やメディア展開をするビジネスのことです。キャラクターの版権は、ほとんどの場合、そのビジネスを展開する企業が持っています。

キャラクタービジネスそのものについては、以下の記事で解説しています。あわせて「ハローキティ」や「マイメロディ」などを抱えるサンリオと「ちいかわ」のビジネス戦略についてもご参照ください。

公的機関のキャラクター

公的機関が権利を持つ版権キャラクターの例を挙げると、以下のとおりです。

  • くまモン(熊本県)
  • けんけつちゃん(厚生労働省)
  • マイナちゃん(デジタル庁)
  • くーちゃん(日本宝くじ協会)

具体的には国や地方自治体などの公的機関が、地域やサービスを象徴するアイコンとしてキャラクターを利用する場合があてはまります。このときキャラクターの版権は、その公的機関が持っていることがほとんどです。

なお、「くまモン」の著作権については、以下の記事で詳しく解説しています。

企業のイメージキャラクター

企業のイメージキャラクターには、以下のような例が挙げられます。

  • ペコちゃん(株式会社不二家)
  • ガリガリ君(赤城乳業株式会社)
  • スーモ(株式会社リクルート)

企業の商品やサービス、または企業自体のアイコンとして使われるものがあてはまるでしょう。この場合、キャラクターの版権は、企業自体が持っていることがほとんどです。

キャラクターにまつわる版権の基礎知識

ここからは版権キャラクターを利用する際に著作権を侵害しないために、それがどのように発生しているか解説します。

著作権法上は、キャラクターそのものに著作権は発生しないが、キャラクターを表現したイラストなどに著作権が発生するという原則があります。

著作権は、思想や感情が創作的に表現された著作物にのみ発生するものです。キャラクターは、性格や外見をイメージさせる抽象的なアイデアにすぎないため、著作物としての条件を満たしません。

ただし以下のような行為を行うと、表現されたと見なされ著作権が発生します。

  • イラストを描く
  • フィギュアを作る
  • 小説に登場させる

視覚的なデザインや文章表現を無断で利用すると、著作権侵害にあたるため注意が必要です。

参照:e-Gov法令検索「著作権法

なお、キャラクターにまつわる著作権について詳しく知りたい方は、以下の記事をお読みください。

また、著作権法におけるアイデアについては、以下の記事で詳しく解説しています。

版権キャラクターの利用が著作権侵害にあたるケース

版権キャラクターの利用が著作権侵害にあたるケースを解説します。

  • 版権キャラクターのイラストをコピーする
  • 版権キャラクターのイラストを描いて公表する
  • 版権キャラクターを使って二次創作する

版権キャラクターのイラストをコピーする

版権キャラクターのイラストを無断でコピーする行為は、著作権侵害に該当します。著作権法第21条に定められる複製権(既存の著作物をコピーする権利)を侵害するからです。

コピーに該当する行為は以下のとおりです。

  • 原作者のイラストをSNSに転載する
  • 版権キャラクターの写真を撮ってネット上にアップする
  • 版権キャラクターのイラストを模写して公表する

版権キャラクターのイラストをコピーして使いたい場合は、必ず版権元に許諾を得なければなりません。

参照:e-Gov法令検索「著作権法

なお、模写する際における著作権についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

版権キャラクターのイラストを描いて公表する

版権キャラクターのイラストを無断で描いて公表する行為は、著作権侵害に該当します。

模写をした場合は複製権、アレンジを加えたイラストの場合は著作権法第27条の翻案権(既存の著作物を改作する権利)を侵害するからです。

過去の裁判例には、特定のイラストを複製していなくとも、同一性が認識されたことで複製権侵害が認められたケースもあります。そのため、キャラクターの特徴が十分に表現されたイラストであれば、コピーでなくても侵害と見なされる可能性があると考えられます。

個人的に楽しむなど私的な範囲での利用であれば問題ありませんが、不特定多数の方に向けて公開したり、SNSにアップロードしたりする場合は著作権侵害になりかねません。版権キャラクターのイラストを公表したいのであれば、版権元の許可を得ておきましょう。

参照:e-Gov法令検索「著作権法
参照:裁判所 ー Courts in Japan「昭和51年 昭和46(ワ)151号

なお、イラストの著作権については、以下の記事で詳しく解説しています。

版権キャラクターを使って二次創作する

版権キャラクターを使って二次創作する行為は、著作権侵害に該当します。著作権法第27条で定められている翻案権を侵害するからです。

二次創作の代表的な例として、漫画やアニメの夢絵を描いて楽しむことが挙げられます。夢絵とは、版権キャラクターと自作したキャラクターが一緒に描かれる二次創作イラストのことです。

キャラクターを用いて新たな作品を作れるのは著作者だけなので、夢絵を描いてSNSに投稿したり販売したりする行為は、著作権侵害に該当します。

夢絵​などの​二次創作が事件化するケースは現状少ないですが、版権元が訴えなければ罪にならない親告罪ゆえに取り締まりきれていないのが主な理由です。

ファン活動の活性化を図って黙認しているにすぎないことも多いので、本来は著作権侵害であることをきちんと認識しておきましょう。

なお、二次創作の著作権については、以下の記事で詳しく解説しています。

版権キャラクターを利用しても著作権侵害にならないケース

版権キャラクターを利用しても著作権侵害にならないケースは、以下の4つです。

  • 私的利用の範囲内で利用する
  • 教育目的で利用する
  • 著作権フリーのキャラクターを利用する
  • 著作権者の利用許諾を得ている

私的利用の範囲内で利用する

版権キャラクターを、個人利用や家庭内利用など私的な範囲でのみ利用する場合は、著作権侵害になりません。著作権法第30条で、私的使用のための複製が認められているためです。

版権キャラクターのイラストを描いたりコピーしたりしても、自分自身や家庭内で楽しむことは許されます。一方で会社内の業務における使用は、たとえ世間に公表しないとしても私的利用とは認められません。

参照:e-Gov法令検索「著作権法

教育目的で利用する

版権キャラクターを教育目的で利用する場合は、著作権侵害にあたりません。著作権法第35条で、学校その他の教育機関における複製が認められているためです。

授業の過程における利用を目的とするならば、必要な範囲において複製や翻案が許されます。たとえば、社会科の授業資料にご当地キャラクターを挿入することが可能です。

ただし、オンライン授業の録画などをネット上にアップする場合は、教育機関の設置者が版権元に補償金を支払う必要があります。

参照:e-Gov法令検索「著作権法

著作権フリーのキャラクターを利用する

著作権フリーのキャラクターであれば、利用しても著作権侵害になりません。著作権フリーに該当する著作物は、以下のとおりです。

著作権が消滅したもの

原則として著作者の死後70年が経過した著作物

著作権が放棄されたもの

著作者が著作権を放棄することを明言した著作物

これらは著作権が存在していないため、利用の条件や用途の制限なく自由に利用可能です

有名なキャラクターの例を挙げると、「くまのプーさん」の原文が日本において著作権が消滅しています。

「くまのプーさん」の著作権については、以下の記事で詳しく解説しています。

なお、著作権フリーのキャラクターを使う方法を詳しく知りたい方は、以下の記事をお読みください。

また、著作権フリーと似た用語としてパブリックドメインがあります。パブリックドメインとは、著作権などの知的財産権が消滅して誰でも自由に利用できる共有財産となった状態のことです。

パブリックドメインの基礎知識については、以下の記事で詳しく解説しています。

著作権者の利用許諾を得ている

著作権者の利用許諾がある場合は、許諾された範囲内で版権キャラクターを利用することが認められます。著作権者は著作物の利用を許諾する権利を持っているからです。

また版権元があらかじめ利用に関するガイドラインを公表しているケースもあります。収益目的の利用をしないなどの条件を満たせば、規約で認められた範囲内で版権キャラクターを自由に利用できます。

ただし、利用規約の範囲を超えた利用は著作権侵害になるため注意が必要です。

版権キャラクターを利用して著作権侵害をした場合のリスク

版権キャラクターの利用によって著作権侵害を問われた場合、民事・刑事の双方で責任を負うリスクがあります。

民事上で請求されうる内容は、以下のとおりです。

差止請求(著作権法112条)

キャラクターの利用行為をやめることを求められる

名誉回復等の措置請求(著作権法115条)

侵害行為によって害された名誉を回復するための措置を求められる(謝罪や訂正の掲載など)

損害賠償請求(民法709条)

侵害行為によって著作権者に生じた損害額を請求される

刑事罰については、以下のとおりです。

著作権・著作隣接権の侵害(著作権法119条1項)

10年以下の懲役、または1,000万円以下の罰金またはその両方(法人の場合は3億円以下の罰金)

著作者人格権の侵害(著作権法119条2項1号)

5年以下の懲役、または500万円以下の罰金またはその両方

なお、著作隣接権とは、著作物の伝達に役割を持つ実演家や制作業者などに与えられる権利を指します。たとえば、版権キャラクターの登場するアニメ映像を無断複製した場合、制作会社が持つ著作隣接権を侵害してしまいます。

また著作者人格権とは、著作者の精神的利益を保護する権利です。著作者の意に反して著作物の内容や氏名表示の方法を改変したり、著作物を勝手に公表したりした場合は侵害を問われます。

参照:e-Gov法令検索「著作権法
参照:e-Gov法令検索「民法

版権キャラクターを安全に利用する方法

版権キャラクターを安全に利用する方法として、ライセンス契約の締結があります。

キャラクターのライセンス契約とは、版権元に対価を支払う代わりにキャラクターの使用を認めてもらうことです。

とくに、版権キャラクターを使ってビジネス展開をしたい場合は、正当な利用を保証するためにライセンス契約の締結が欠かせません

版権キャラクターの利用時に注意すべきこと

版権キャラクターを利用する際は、次の点に注意すべきです。

  • ライセンス契約を曖昧な内容で結ばない
  • 利用許諾の範囲を守る
  • キャラクター名を使う際は商標登録を確認する
  • イラスト等の有償依頼は応じない

ライセンス契約を曖昧な内容で結ばない

版権キャラクターのライセンス契約を結ぶ際は、曖昧な内容にならないように注意しましょう。

契約内容が明確に定まっていなければ、許諾範囲や使用料に関する認識に齟齬が生まれ、トラブルに発展する可能性があります。

契約内容を決める際は、以下のような条項が含まれていることを確認し、規定内容もできる限り具体的に定めましょう。

  • キャラクターの使用許諾の範囲
  • 使用許諾料の計算方法や支払い方法
  • 独占的許諾であるのかどうか
  • 利用者側の遵守事項
  • 秘密保持義務
  • 使用許諾期間満了後の対応(販売停止や破棄など)
  • 再許諾の可否
  • 契約の更新・解除に関する事項
  • 損害賠償に関する事項

利用許諾の範囲を守る

利用許可を得ている版権キャラクターを扱う際は、許諾の範囲を必ず守りましょう

範囲を超えた利用は著作権者の許可を得ていない無断使用に該当するため、著作権侵害になります。

とくに注意して確認すべきポイントは、以下のとおりです。

  • 商用利用できる範囲
  • 加工や修正の可否
  • 二次創作の可否
  • クレジット表記等の必要な著作権表記

ライセンス契約を締結した場合や、ガイドラインなどで利用範囲が定められているケースにおいては、許諾の範囲内で版権キャラクターを利用しましょう。

キャラクター名を使う際は商標登録を確認する

版権キャラクターの名前を使う場合は、商標登録の有無を確認しましょう。商標登録されているキャラクター名を無断で使用すれば、商標権侵害になりかねません。

商標とは、事業者が自身の商品・サービスを他のものと区別するために用いるマークやネーミングのことです。登録手続きをすることで法にもとづく独占的な使用権である商標権が発生します。

キャラクター名が商標登録されているかどうかは、特許情報プラットフォームの「J-PlatPat」で確認しましょう。

参照:INPIT「J-PlatPat

なお、商標の基礎知識については、以下の記事で詳しく解説しています。

イラスト等の有償依頼は応じない

版権キャラクターのイラスト制作を有償で​依頼されても応じないようにしましょう。版権キャラクターのイラストを描いて報酬を得る行為は、著作権侵害に該当します。

イラストレーターとして活動する方は、他意なく版権キャラクターのイラストを依頼されることがあるかもしれません。事実、そのまま依頼を受ける人もいますが、著作権者が黙認してくれているだけで著作権を侵害していることに変わりありません。

報酬があるからといって依頼に応じないように注意しましょう。

版権キャラクターは著作権等を侵害しないように利用しよう

版権キャラクターとは、個人や企業が著作権を持っているキャラクターのことです。無断で利用すれば、著作権侵害を問われかねません。

著作権侵害になるケースや利用が許されるケースを確認し、キャラクターを活用したい場合は契約を結ぶなどして安全な利用を心がけましょう。

IP業界のトレンド、
追えていますか?
メルマガ会員様に、
最新情報を定期配信 !
今すぐ
登録

プライバシーポリシーに同意された⽅は「メル
マガに登録」ボタンをクリックしてください。

この記事を書いたライター

Follow Me
この記事をシェアする