著作権とは?権利の種類と著作権侵害の事例とならないためのポイントを解説
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2024.06.18

著作権とは?権利の種類と著作権侵害の事例とならないためのポイントを解説

「著作権とはどういうもの?」「どのような行為が著作権侵害にあたるの?」といった疑問をお持ちではありませんか。

本記事では、著作権の概要や分類、侵害の要件、著作権侵害にあたらないよう注意するポイントについて解説します。

著作権について理解を深めれば、創作活動するうえで著作権侵害に関わるトラブルのリスクをなくせます。コンテンツの制作・利用に関わる方は、ぜひご一読ください。

著作権とは

著作権とはなにか、以下の流れでわかりやすく解説します。

  • 著作権の概要
  • 著作権の発生要件|無方式主義
  • 著作権の保護対象|「著作物」の定義
  • 著作権の保護期間|原則は著作者の死後70年

著作権の概要

著作権とは、著作物を創作した者(著作者)に与えられる利用に関する権利のことを指します。著作権の目的は、著作者の権利を保護する役割と、著作物の公正な利用を確保し文化の発展に貢献することです。

創作したコンテンツを、他人が許可なく勝手に使ったり、自分のものとして主張してきたりした場合、創作者の利益が侵害され創作意欲が失われる原因となります。

たとえば、漫画や小説などが海賊版サイトにアップロードされた場合、そのコンテンツは多くの人が無料で読めることになります。海賊版サイトは創作者に利益が還元されない仕組みのため、作品の創作者が創作意欲を失い、文化の発展が阻害されるおそれがあるでしょう。

著作権は、著作者はもちろん、創作したコンテンツの文化を守るための法律といえます。

参照: e-Gov法令検索「著作権法

著作権の発生要件|無方式主義

著作権は、著作物が創作された時点から自動的に発生すると著作権法第17条2項、同法第51条で定められています。

著作権を得るために作品を納入や発表したり、権利を登録したりなど法律上の手続きは必要ありません。権利の発生に手続きを必要としない考え方を無方式主義といい、国際的なルールとして知られています。

創作には、誰も思いつかないような高度な独創性は必須ではありませんが、制作者の個性が表現されていることが必要です。

参照:e-Gov法令検索「著作権法

著作権の保護対象|「著作物」の定義

著作権に保護される著作物の定義は、思想・感情を創作的に表現したものであり、文芸・学術・美術・音楽の広範囲に属するものをいいます。

そのため著作権と認められるには、以下の4点を満たす必要があります。

  • 思想または感情を含む
  • 創作したものである
  • 表現したものである
  • 文芸・学術・美術・音楽の範囲に属する

著作権法第10条第1項では、以下の項目が著作物として挙げられます。

分類

具体例

言語の著作物

論文、小説、俳句、講演、詩歌など

音楽の著作物

楽曲およびそれに伴う歌詞

舞踊・無言劇の著作物

日本舞踊、バレエ、ダンスなどの舞踊、パントマイムの振り付け

美術の著作物

彫刻、漫画、舞台装置、絵画など

建築の著作物

宮廷建築など芸術的な創造物(設計図は図形の著作物)

地図、図形の著作物

設計図、地図、図表、模型など

映画の著作物

劇場用映画、テレビドラマ、ネット配信動画、アニメ、ゲームソフトなど

写真の著作物

報道写真、風景写真、グラビアなど

プログラムの著作物

コンピュータプログラム(PCアプリ、スマホアプリなど)

参照:e-Gov法令検索「著作権法

著作権の保護期間|原則は著作者の死後70年

著作権には保護期間があり、著作者の死後、一定期間は著作物が保護されますが、保護期間が経過した後には権利は消滅します。

著作物の保護期間は作権法第51条、同法第57条で定められており、原則、著作者が死亡した年の翌年から起算して70年が経過するまで有効です。保護期間の終了後は、著作物を社会全体の共有財産として自由に利用できるようになります。

たとえば、著作物の著作者が1950年の4月1日に死亡した場合の著作物の保護期間は、創作されたときから死後70年後の2020月12月31日までとなります。

また、共同制作した著作物については最後まで残った著作者の死後70年が経過するまでが保護期間です。

例外として以下のように定められている著作物もあります。

対象の著作物

保護期間

無名・変名の著作物

原則、著作物の公表後70年が経過するまでの間、著作権は存続する(著作権法第52条)。

団体名義の著作物

原則、著作物の公表後70年が経過するまでの間、著作権は存続する(同法第53条)。

映画の著作物

原則、著作物の公表後70年が経過するまでの間、著作権は存続する(同法第54条)。

ベルヌ条約の加盟国等を本国とする著作物

本国における著作権の存在期間が、日本の著作権法にもとづく存在期間よりも短い場合には、本国の相続期間が適用される(同法第58条)。

著作者が亡くなった後も、著作権法第60条によって著作権の侵害となる行為をしてはならないと定められています。ただし、後述する著作人格権については、著作者の死をもって消滅します。

参照:e-Gov法令検索「著作権法

著作権の分類

著作者の権利(著作権)は、大きく以下の2つに分けられます。

  • 著作権(財産権)
  • 著作者人格権

著作権(財産権)

著作権(財産権)は、著作者の財産的な利益を守る権利です。

著作権(財産権)には以下の種類があり、著作者は各権利を独占的に行使できます。

著作権(財産権)の種類

権利の内容

複製権
(著作権法第21条)

著作物を印刷、写真、複写、録音、録画等の方法によって有形的に複製する権利

上演権・演奏権
(同法第22条)

著作物を公に上演、または演奏する権利

上映権
(同法第22条の2)

著作物を公に、スクリーンやディスプレイに映写する権利

公衆送信権・公の伝達権
(同法第23条)

テレビやインターネットなどを通じて著作物を公に送信する権利

口述権
(同法第24条)

言語の著作物を朗読など口頭で公に伝える権利

展示権
(同法第25条)

美術の著作物、または未発行の著作物の原作品を公に展示する権利

頒布権
(同法第26条)

映画の著作物の複製物を頒布(販売や貸与など)する権利

譲渡権
(同第第26条の2)

著作物を、その原作品・複製物の譲渡により公に提供する権利

貸与権
(同法第26条の3)

著作物を、その複製物の貸与により公に提供する権利

翻訳権・翻案権等
(同法第27条)

著作物を翻訳、編曲、変形、脚色、映画化、その他翻案する権利

二次的著作物の利用に関する原著作者の権利
(同法第28条)

二次的著作物の原著作物の著作者が、当該二次的著作物の利用に関し、当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する権利

これらの権利は、他の人が著作者に無断で使用することは禁止とされています。著作者は当該行為を第三者に対して許諾することが可能です。

参照:e-Gov法令検索「著作権法

著作者人格権

著作者人格権は、著作権者の人格的な利益を守る権利です。著作者だけが所有できる権利で、他人に譲渡や相続できません(著作権法第59条)。そのため、著作者人格権は、著作者が死亡した際は原則的に消滅します。

著作人格権には以下の種類があります。

著作者人格権の種類

権利の内容

公表権
(著作権法第18条)

著作物でまだ公表されていないものを公表する権利
(同意を得ないで公表されたものを含む)

氏名表示権
(同法第19条)

著作物を公表する際に、著作者名を表示するかしないか、また表示する際は実名か変名いずれを公表するかを決められる権利

同一性保持権
(同法第20条第1項)

著作物の内容、または題号(タイトル)を自分の意に反して、勝手に変更、改変されない権利

参照:e-Gov法令検索「著作権法

著作権侵害の要件

著作権侵害の要件は以下のとおりです。

  • 著作権の保護対象である(著作物性がある・著作権制限の対象外)
  • 類似性がある
  • 拠性がある
  • 許諾のない利用である
  • みなし侵害に該当する

ここでは、各要件について説明します。

著作権の保護対象である(著作物性がある・制限の対象外)

著作権侵害の要件として著作物性があり、著作権の制限対象ではないことが挙げられます。

「著作物性がある」とは、作成者の個性や創作性が表現されているなど、著作権法2条1項の著作物の定義に当てはまることを指します。

また、著作権法13条で定められた権利の目的とならない著作物である場合は、著作権が制限されることに注意が必要です。著作権が制限される対象として以下が挙げられます。

  • 憲法そのほかの法令、または地方公共団体の条例、規則など
  • 国や地方公共団体の機関、独立行政法人が発する告示、訓令、通達など
  • 裁判所の判決、決定、命令および審判など
  • 上記3つの翻訳物や編集物で国もしくは地方公共団体又は独立行政法人の作成するもの

上記のような著作権の制限の対象とならない場合に、著作権の保護対象であるといえます。

参照:e-Gov法令検索「著作権法

類似性がある

侵害が疑われる著作物と他人の著作物の表現方法が類似、または同じ場合は著作権侵害にあたる可能性があります。

東京地方裁判所で行われた平成25年の損害賠償等請求事件など、完全一致していないにもかかわらず類似性が認められた事例もあります。

自作のシールやスタンプなどのイラストを制作している原告が、類似するシールを販売する被告に対して著作権侵害を訴えた事例です。

引用:裁判所 - Courts in Japan「平成25年 第17433号 損害賠償等請求事件別紙

一見単純なイラストではありますが、太い葉脈の複数の葉を白と黒で描き分ける点が共通しているとして、原告独自の手法であると認定されました。

シンプルなものであっても、著作物の根幹となる独自の部分が類似していれば著作権侵害に認定されるという事例です。

参照:裁判所 - Courts in Japan「平成25年 第17433号 損害賠償等請求事件全文

依拠性がある

著作権侵害が認められるには、侵害の疑いがある著作物が、他人の著作物に依拠(既存の著作物をもとに)して創作されたことが必要です。

他人の作品に依拠せず(もとの作品を知らず)に類似した場合は著作権侵害にはなりません。

許諾のない利用である

著作者の許諾を得ないまま無断で利用した場合や、自分が創った著作物だと騙して利用すると著作権侵害の対象となります。

保護期間内の著作物の利用には、基本的に許諾が必要です。

みなし侵害に該当する

直接的に著作権を侵していなくても、著作権侵害とみなされる場合には、著作権侵害の要件に当てはまります。

著作権法が定める著作者人格権、著作権などに該当しなくとも、経済的利益を害する行為など、実質的には著作権侵害として取り扱うべき行為を「みなし侵害」といいます(著作権法第113条)。

たとえば、著作権者の許諾を得ずに漫画の海賊版をスキャンしてSNSで公開する、映画の海賊版をダウンロードして共有するなど複製された著作物を頒布する行為です。

参照:e-Gov法令検索「著作権法

近年、著作権侵害問題においては生成AIによる生成物が議題にのぼることも増えてきています。生成AIのイラストに関する著作権問題は、以下の記事も参考にしてください。

著作権侵害にあたらないケース

他人の著作物を利用しても著作権侵害にあたらないケースは、以下のとおりです。

  • 著作権の保護対象外である(著作物性がない)
  • 著作権者から著作物利用の許諾を得ている
  • 著作権の譲渡を受けている
  • 許諾不要で利用できる場合に該当する

それぞれのケースを解説します。

著作権の保護対象外である(著作物性がない)

利用したコンテンツに著作物性がない場合には、著作権侵害に該当しません。

短い文章やありふれた表現、単なる事実やデータの利用は著作権侵害対象にならない可能性があります。ただし、それをもとに独自の工夫があれば、著作権の対象になります。

著作権者から著作物利用の許諾を得ている

著作権者から著作物利用の許諾を受けた場合の利用は、著作権侵害になりません。

著作者から許可を得た場合、許諾された利用方法や条件の範囲内において、著作物を利用できます(著作権法第63条第1項)。

そのため、著作物を使いたい場合は、著作者の許諾を得られれば、著作権を侵害せず対象の著作物の利用が可能です。

ただし、許諾を得た条件の範囲外での利用は著作権侵害に該当するため注意しましょう。

参照:e-Gov法令検索「著作権法

著作権の譲渡を受けている

著作権者から著作権を譲渡された場合、著作権侵害には該当しません。

著作権は第三者に対する譲渡が認められており、譲渡を受けた場合は著作物の権利が移動するため、当該権利にしたがって著作物の利用が可能です(著作権法第61条1項)。

ただし、著作者人格権については、著作者に自動的に発生する権利のため、譲渡したり、相続させたりすることは不可能です。

参照:e-Gov法令検索「著作権法

許諾不要で利用できる場合に該当する

著作権法第30条にある私的使用目的の複製や、同法32条のルールに沿った引用の場合は著作権侵害に該当しません。

私的使用目的の複製について、著作物を複製・模写したものを個人または家庭の範囲で利用するのであれば著作権侵害にはあたらないです

たとえば、デザインの勉強のために、自宅で好きなキャラクターを模写することは問題ありません。

また、著作物はルールを守れば引用しても問題ないことが定められています。引用部分や出所出典を明らかにして表記することで、著作権を侵害せず利用可能です。

参照:e-Gov法令検索「著作権法

なお、模写の著作権侵害についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

著作権を侵害するとどうなる?

著作権を侵害すると以下の可能性があります。

  • 差止請求を受ける
  • 損害賠償請求を受ける
  • 刑事罰を受ける

差止請求を受ける

著作権者は、著作権を侵害する者または侵害するおそれがある者に対し、侵害の停止・予防の請求などの「差止請求」が可能です(著作権法第112条第1項)。

また、差止請求の際に、侵害行為を構成したものや、侵害行為に生じた物の廃棄等、侵害の予防に必要な行為を請求する権利もあります(同法第112条第2項)。

「差止請求」された場合、対象の商品、コンテンツの回収、機材の撤去などを強いられるので、企業の業績に大きな影響を与える可能性があります。

参照:e-Gov法令検索「著作権法

損害賠償請求を受ける

著作権侵害をした場合、著作権者が利益を侵害した行為に対して、それにもとづく損害賠償の請求を行うケースがあります(民法709条)。

損害額は著作権法第114条の2にて推定規定が設けられ、著作権者の損害額に関する立証負担を軽減しています。

そのため、侵害した側の立場から見た場合、損害賠償責任が認められやすい傾向にあり請求される可能性が高いです。

参照:e-Gov法令検索「民法
参照:特許庁「著作権侵害への救済手続

刑事罰を受ける

著作権侵害をした場合、権利者が告訴することにより、刑事罰を受けることがあります。

処罰の対象と内容は以下のとおりです。

処罰の対象者

処罰の内容

著作権、出版権、著作隣接権の侵害者
(著作権法第119条第1項)

10年以下の懲役、または1,000万円以下の罰金

著作者人格権、実演家人格権の侵害者
(同法第119条第2項)

5年以下の懲役、または500万円以下の罰金

企業等法人による侵害
(同法第124条第1項2号)

3億円以下の罰金

参照:e-Gov法令検索「著作権法

著作権を侵害しないために注意すべきポイント

著作物の利用は、著作権法にしたがって侵害しないよう以下の2点に注意を払う必要があります。

  • 著作権者から許諾を得る
  • 著作者人格権の不行使を求める

それぞれ説明する内容を把握して、著作物を使用する際は意識しておきましょう。

著作権者から許諾を得る

著作権法で保護されている場合、著作権者に許諾を得てから著作物を利用する必要があります

まず著作権法により保護対象かどうか調べましょう。保護対象は、保護期間内(原則、著作者の死後70年間)であり、著作物性があるものが該当します。次に、著作物の利用方法や使用料などの条件を確認しましょう。

また、著作権者から許諾を得る際には、ライセンス契約を結んでおくとトラブル防止になります。著作物を使用する際は、著作権法の対象であることを確認し、著作者から許諾を得ることを徹底して著作権侵害を避けましょう。

著作者人格権の不行使を求める

著作権侵害をしないための注意点として、著作権を譲渡してもらう際に「著作者人格権を行使しない」と契約する対策が必要です。著作権(財産権)の譲渡は可能ですが、著作者人格権は譲渡ができません。

そのため、著作物を無断で修正されない権利である「同一性保持権」を主張された場合は、動画など著作物の譲渡後も著作者の了解なく、修正作業ができなくなるおそれがあります。

このような不具合を避け、著作物を自由に使えるようにするために「著作者人格権を行使しない」契約を明記しておく必要があるのです。

著作権法改正の要点

2023年1月に著作権法の改正が成立し、2024年1月より以下の内容が適用されています。

  • 著作物等の利用に関する新たな裁定制度の創設等
  • 立法・行政における著作物等の公衆送信等可能とする措置
  • 海賊版被害等の実効的救済を図るための損害賠償額の算定方法の見直し

いずれの法改正もSNSの普及や行政のデジタル化、インターネット普及による著作権侵害の対策など、IT化が進む現代社会に適応するための改正といえます。

また、2023年6月に施行された著作権法改正の内容は以下のとおりです。

  • 図書館向けデジタル化資料送信サービスの実施
  • 放送番組のインターネット同時配信等の権利処理の円滑化

デジタル化資料送信の実施により、絶版資料等、各図書館に保管されている一部資料のメール受け取りが可能となりました。また放送番組のインターネット配信が普及したことに伴い、著作権の規制が緩和されています。

それぞれの改正ポイントは以下の記事で詳しく解説しているので、こちらもご確認ください。

著作権の取り扱いを正しく理解することが重要

著作権の取り扱いを正しく理解することは侵害のリスクを避けるため、また自社の著作物を守るために重要です。

たとえば、なんとなく使用した写真一枚、書類一枚も許可なく使用すれば著作権侵害となり大きな問題になる可能性があります。

著作権を正しく理解して無意識に権利を侵害しないように、コンテンツを使用する際には注意して業務にあたりましょう。

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