切り抜き動画は著作権法違反になる?安全に利用する方法やペナルティについて解説
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2024.11.08

切り抜き動画は著作権法違反になる?安全に利用する方法やペナルティについて解説

「切り抜き動画を作成して投稿すると著作権法違反になる?」「他者のコンテンツを切り抜いて利用したいけど法的なトラブルになることは避けたい」といった疑問や要望を抱えていないでしょうか。

切り抜き動画は、YouTubeやSNSで人気を集める手段として多くの人に利用されています。しかし無断で他人のコンテンツを使用する行為は、著作権法違反と見なされる可能性があるため注意が必要です。

本記事では、切り抜き動画がどのようなケースで著作権法違反となるのか、また安全に利用するための方法や違反時のペナルティについて解説します。正しい知識を身につけ、トラブルを回避しながら安全にコンテンツを制作したい方は、ぜひ最後までご覧ください。

INDEX
  1. 切り抜き動画とは
  2. 切り抜き動画の著作権の扱い
  3. 無許可で切り抜き動画を作成・投稿することは著作権侵害にあたる
  4. 切り抜き動画の作成・投稿が著作権侵害にならないケース
  5. 切り抜き動画を投稿して著作権を侵害した場合に取られる措置
  6. 切り抜き動画投稿による著作権法違反の逮捕事例
  7. 切り抜きの収益化停止
  8. 切り抜き動画作成時は許諾をとって著作権侵害を避けよう

切り抜き動画とは

切り抜き動画とは、YouTube上に投稿された長尺動画やライブ配信・アニメなどの動画の一部を切り抜き、作成・投稿した動画のことです。

動画の重要ポイントやおもしろいシーンのみが抜粋されており、視聴者にとって魅力的で需要の高いコンテンツといえます。切り抜き動画をうまく活用すれば、再生数や登録者数の増加が期待でき、収益化も可能です。

また、もとの動画を作成したクリエイターのチャンネルも成長する可能性があり、双方にメリットがあります。しかし切り抜き動画を作成・投稿しているのは著作権者ではなく、視聴者やファンなど第三者であるケースも多いです。

他人が作成した動画を無断で使用した場合、著作権侵害になる可能性があるため注意しましょう。

切り抜き動画の著作権の扱い

切り抜き動画の著作権は、もとの動画の作成者、すなわち著作者に帰属します。著作権とは、著作物の利用を管理する権利のことです。

切り抜き動画は、既存の著作物を部分的に切り抜いた作品であるため、新たな著作物とは見なされません。著作物の定義である「思想または感情を創作的に表現したもの」には該当しないためです。

著作物と見なされるためには「創作性」が求められます。単なる切り抜きを行っただけでは創作性は認められにくいです。そのため切り抜き動画の著作権は、もとの動画の作成者に帰属すると考えられます。

なお、著作権についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

無許可で切り抜き動画を作成・投稿することは著作権侵害にあたる

著作権者に許可を得ずに、切り抜き動画を作成・投稿することは、著作権侵害にあたります。とくに、著作権に内包される以下の権利に留意しなければいけません。

翻案権

著作物を翻訳・編曲・変形・翻案する権利

複製権

著作物を複写・録画・録音・印刷・模写する権利

公衆送信権

インターネットなどを介し、著作物を公衆に送信する権利

切り抜き動画は、もとの著作物を一部編集・改変して作成する創作物であるため、翻案権に抵触する可能性があります。また切り抜き動画を作成する過程で、もとの動画をコピーする行為が発生しますが、著作権者の許諾がない場合は複製権の侵害となるため注意が必要です。

さらに、切り抜き動画を無断でYouTubeや他のオンラインプラットフォームに公開する行為は、公衆送信権侵害に該当します。

上記のように、切り抜き動画は著作権に内包されるさまざまな権利に抵触する可能性が高くなります。とくに、著作権者の許諾を得ていない場合は、法律上の問題が発生する可能性もあるため注意しなければいけません。

切り抜き動画の作成・投稿が著作権侵害にならないケース

切り抜き動画が著作権侵害にならないケースは以下のとおりです。

  • 著作権者の許可を得る
  • 二次創作ガイドラインに沿って使用する
  • YouTubeであればContent IDを利用する
  • 動画の一部を引用として利用する

著作権者の許可を得る

著作権者の許可を得た場合、切り抜き動画を作成・投稿しても著作権侵害になりません。切り抜き動画を使用する際は、まず著作権者に正式な同意を得ることが基本です。

許可を得る際は、トラブルを避けるために以下を実施しましょう。

  • 契約書や合意書などを取り交わし、双方の署名や押印を書面で残す
  • 著作権者から承諾を得たメールを送受信者・受信日などがわかる状態で残す

上記のように、著作権者に同意を得たことが客観的にわかるものが適切です。万が一のトラブルの際に証拠として利用でき、適切な対応をスムーズに行えます。

著作権者の合意を得て対策をしっかり講じることで、切り抜き動画を安全に作成・投稿できるでしょう。

二次創作ガイドラインに沿って使用する

二次創作ガイドラインに沿って使用すれば、著作権侵害になりません。二次創作ガイドラインとは、著作権者が自身の著作物をどの程度二次利用できるのかを定めた、ルールや基準のことです。

著作権者が定めたガイドラインに沿った利用であれば、著作物を自由に使えます。著作権者は二次利用を許可することで、自身の作品の知名度やブランド力を高められるメリットがあります。

著名なYouTuberなどは、切り抜き動画や二次利用のための専用ガイドラインを設けていることも多いので、事前に確認しておくとよいでしょう。利用できる範囲や条件など、詳細を把握しておくことが重要です。

YouTubeであればContent IDを利用する

YouTubeで切り抜き動画を使用する場合、Content IDの利用も有効です。Content IDとは、YouTubeの自動コンテンツ識別システムで、アップロードされた動画が著作権で保護されたコンテンツを含んでいるかどうかを識別します。

活用すれば著作権者との収益分配が可能です。著作権者にも利益がもたらされるため、切り抜き動画の許可を得やすくなる可能性があります。

参照:YouTube「Content IDの仕組み

動画の一部を引用として利用する

切り抜き動画の作成・投稿が著作権侵害にならないように、動画の一部を「引用」して利用する方法もあります。引用とは、自説の補強などを目的として、他人の著作物を引くことです。著作権法の例外として扱われます。

引用として認められるためには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 公表された著作物であること
  • 引用する必然性があること
  • 使用したい著作物との明確な区分があること
  • 原則として原形を保持して使用すること
  • 主従関係があり引用部分は必要最小限にとどめること
  • 著作権者の名誉を傷つけたり意図に反した使用をしないこと
  • 出典を明記すること

切り抜き動画の多くは流用箇所が多いため、量・質ともに従属関係を作れません。引用として利用する際は慎重に取り扱い、要件を満たせるかたちで適切な範囲を切り抜く必要があります。

参照:JMPA 日本医書出版協会「引用と転載

切り抜き動画を投稿して著作権を侵害した場合に取られる措置

切り抜き動画を投稿して著作権侵害をしてしまった場合、以下のペナルティが科せられる場合があります。

  • 投稿動画が削除される
  • チャンネル・アカウントが停止される
  • 収益化が停止される
  • 法律で罰せられる

投稿動画が削除される

著作権を侵害した場合、投稿動画が削除されることがあります。著作権者が自分の作品を無断でYouTubeに掲載されたと判断した場合、「著作権侵害による削除通知」を提出できるためです。

切り抜き動画をアップロードしたユーザーには、著作権侵害の警告が適用されるまで7日間の猶予が与えられます。7日間以内に動画を削除すれば、著作権侵害の警告を受けることはありません。

ただし何も対処せず7日間が過ぎると、著作権侵害の警告が有効になり、対象のコンテンツは削除されます。

参照:YouTube ヘルプ「動画の削除に関するトラブルシューティング
参照:YouTube ヘルプ「スケジュール設定された著作権侵害による削除通知について

チャンネル・アカウントが停止される

著作権を侵害すると、アカウント停止、いわゆる「垢BAN」されるリスクがあります。

著作権侵害の警告を3回受けると、アカウントと関連のあるチャンネルがすべて停止され、アップロードされた動画は削除されます。なお、一度停止されたアカウントは再度利用できません。

つまりチャンネルの所有者は、チャンネル自体を失うことになります。一つの動画に対して著作権侵害の警告をされるのは、一度に1回のみです。

著作権侵害の警告を初めて受けた際は、コピーライト スクールを受講しなければいけません。コピーライト スクールでは、著作権に関する基礎知識や、YouTubeにおける著作権がどのように保護されているのかを学べます。

参照:YouTube ヘルプ「著作権侵害の警告に関する基礎知識

収益化が停止される

YouTubeのチャンネル収益化ポリシーに違反していると判断された場合、収益化が一時的に停止、もしくは完全に無効になる可能性があります。最悪の場合、YouTubeパートナープログラムに関連するすべての収益化ツールを利用できなくなるため注意が必要です。

また、収益化しているYouTubeチャンネルは、Googleアカウントに紐づけられているため、AdSenseアカウントも無効となります。ポリシー上の理由で無効になったアカウントは再度利用できず、新規にアカウントを開設することもできません。そのため、収益化の手段が大幅に制限されることとなります。

参照:YouTube ヘルプ「YouTube のチャンネル収益化ポリシー
参照:Google AdSense ヘルプ「ポリシー上の理由により AdSense アカウントが無効となっている場合

法律で罰せられる

著作権侵害を理由に、民事上もしくは刑事上で罰せられる可能性があるため注意が必要です。具体的に以下のような責任に問われます。

民事責任

刑事責任

・侵害行為の差止請求

・損害賠償の請求

・名誉回復などの措置

・10年以下の懲役

・1,000万円以下の罰金

・上記の併科

上記のように、著作権侵害に対しては法的な措置が適用されます。

参照:e-Gov法令検索「著作権法

切り抜き動画投稿による著作権法違反の逮捕事例

実際に、切り抜き動画をYouTubeにアップロードし、著作権法違反で逮捕された事例があります。被告は人気の高い長編映画を10分程度に短く編集した、いわゆる「ファスト映画」を投稿し、収益を得ていました。

これを受け、大手の映像会社13社が損害賠償を求めて訴訟を起こしたのです。裁判の結果、被告は「故意に著作権を侵害した」と認定され、5億円の賠償が命じられました。

被告が実際に得た利益は700万円ほどでしたが、賠償金はそれを大幅に上回る額です。著作権侵害に対するペナルティは非常に重く、安易に切り抜き動画を利用するリスクの大きさが理解できるでしょう。

参照:朝日新聞デジタル「「収入は700万円程度だが…」ファスト映画で5億円賠償判決

切り抜きの収益化停止

他者のコンテンツを使用した切り抜き動画に独自性がない場合、たとえ著作権者の許諾を得ていても、収益化ポリシーに違反することがあります。違反すると、収益化が停止される可能性も考えられます。

2024年7月に、「著作権者から許諾を得ていたにもかかわらず収益化が停止された」との投稿がSNS上で話題になりました。切り抜き動画の作成者は、YouTube側に異議を申し立てましたが、以下の理由で棄却されています。

  • 他社が制作したコンテンツを投稿することは、再利用コンテンツのポリシーに違反している
  • 著作権者から書面で許可を得ていても他人のコンテンツのプロモーションは付加価値とは見なされない

上記の事例からも、YouTubeで収益を得るためには、コンテンツにオリジナリティが求められることは明らかです。

他者のコンテンツを切り抜く場合は、既存の動画を大幅に変更して独自性をもたせる必要があります。たとえば、自分の解説や意見を付け加えれば、新たな視点を視聴者に提供することになり独自性を高められます。

グラフィックやエフェクトなどを追加すれば、視覚的に新しいコンテンツに生まれ変わるでしょう。切り抜き動画だとしても、独自性のあるコンテンツを作成するためには手の込んだ編集が必要となります。

参照:YouTube ヘルプ「YouTube のチャンネル収益化ポリシー

切り抜き動画作成時は許諾をとって著作権侵害を避けよう

無許可で切り抜き動画を作成・投稿することは著作権侵害にあたります。切り抜き動画を安全に使用したい場合は、著作権者に許諾を取って、著作権侵害を回避しましょう。

また、著作権者の許諾を得ている場合も、独自性がなければポリシー違反として収益化が停止される可能性が高いです。収益化したい場合には、独自性を持たせた動画制作に取り組みましょう。

法律やポリシーを無視した行為は、大きなリスクを伴います。「簡単に利益を得られそうだから」と、安易な気持ちで無断使用すると、重い刑罰に問われる可能性もあるため注意が必要です。

ルールを守りながら切り抜き動画を安全に活用して、健全なコンテンツ制作を行いましょう。

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