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「広報活動のKPIの設定があいまいで効果があがらない」「そもそも広報活動のKPIとは何?」
このように広報活動の目標やKPIの設定方法がわからないと悩む広報担当者は多いのではないでしょうか。
広報活動の成果がきちんと可視化されなければ、社内での広報に対する評価が下がり、予算やリソースを抑えられるおそれがあります。広報担当者のモチベーション維持も困難です。
しかしKPIの設定が適切であれば、広報活動の効果を高め成果に結びつけられるようになります。
本記事では、広報におけるKPIとは何か、そしてKPIの必要性、設定や管理のポイント、具体的なKPI指標を解説します。
社外のステークホルダーにポジティブなインパクトを与え、経営層に活動の成果をアピールしたい広報担当者は、ぜひ参考にしてください。
KPI(Key Performance Indicator)とは「重要業績評価指標」のことで、広報活動の目標に対する達成状況を定量的に観測するための指標です。
広報活動におけるKPIは、設定されたゴールに対し「だれが」「いつまでに」「何を」「どれくらい」行動すればよいかを定量的に表します。KPIを設定しておけば、達成できなかった場合に、チームや組織のアクションに課題があると把握できます。
広報活動の最終目標を達成するためには、業績管理の重要な中間指標であるKPIの適切な設定が必須です。
広報活動にKPI設定が必要な理由は以下の4つです。
KPIを設定すれば、目標達成に向けた進捗状況や、克服すべき課題の可視化が可能です。
KPIが設定されていれば、現状とあるべき状態とのギャップに気づき、課題と進捗状況をもとに目標達成に向けたやるべきことを把握できます。
さらに設定されたKPIをもとに定期的な評価・見直しを実施すれば、多様化する顧客ニーズを素早くキャッチでき、柔軟・迅速な対応が可能です。
広報施策に適切なKPIを設定すれば、目指すゴールが明確になり、スムーズなプロジェクトの進行が可能です。
設定した目標やKPIがあいまいでは、メンバーは何がゴールで、何のためのプロジェクトなのか、何をやるべきなのかがわからなくなるかもしれません。しかし明確なKPIを設定しメンバー間や社内で共有できれば、施策実行の足並みがそろい、広報施策の効果を高められるでしょう。
KPIは、広報活動の意義を経営層に理解してもらうために必要です。設定したKPIをもとに効果測定した結果を提示することで、成果を定量的に伝えられます。
広告と異なり、広報活動は売上向上のような短期的なインパクトを与えにくいことが特徴です。しかし明確なKPIにもとづく活動の成果を可視化し提示すれば、経営層が中長期に及ぶ広報活動の意義と目的を把握できます。
広報活動のKPIを設定するステップは、以下の4つです。
KPIを決めるより先に、事業のKGI(最終目標)を設定します。最終目標の例は以下です。
最終目標が決まってはじめて、広報やPR活動のプロセスを洗い出せます。たとえば最終目標が売上向上であれば、プロセスとしてインフルエンサーとのコラボレーションやメディアでの露出アップなどが必要です。
順番としては、はじめにKGIと現状の数値とのギャップを把握し、次のステップでギャップを埋めるためにやるべきことを洗い出します。KPIを決めるのはそれからです。
KGIを明確にしたら、広報・PR活動が目標達成に貢献するための具体的なプロセスを、ゴールから逆算して洗い出します。
まず目標達成に必要な要素(KSF)をすべてリストアップし、整理します。次にKPI設定の準備として、洗い出した要素とプロセスを具体的な活動に細分化する作業が必要です。
KSFとは「Key Saccess Factor(重要成功要因)」を意味する、KGI達成のために必要な要素のことです。
たとえば、KGIが「年間〇〇万円の売上を達成する」の場合のKSFは「Webマーケティングの強化」、KPIは「指名検索数〇〇%アップ」などが考えられます。
目標の達成度を客観的に測定・管理するために、Step2で細分化した要素・プロセスを数値化しKPIとして設定します。
企業の戦略や方針に則り、企業の目標達成に直接結びつく指標の選定が重要です。たとえば企業が商品の認知度向上を目指す場合のKPIには「メディア露出の質と量の向上」「キャンペーンの応募数増加」などが挙げられるでしょう。
このとき目標の達成に必要な行動と量、こなすべきフローなどの全体像を一目で把握できる「KPIツリー」を作成すると管理しやすくなります。KPIツリーを作成すれば、最終目標であるKGIと細分化されたKPIの関連性を視覚的に把握でき、目標の共有も容易です。
KPIを設定したら目標への進捗度合いを定期的に計測し、KPIの設定や施策の取り組みが適切かどうかの評価・改善も大切です。
KPIは一度設定して終わりではなく、状況に応じて見直しと再設定が必要です。設定したKPIに対し、定期的な「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(評価)」「Act(改善)」のPDCAサイクルを回しましょう。振り返りと改善の繰り返しは広報・PR活動の効果の最大化につながります。
効果計測と評価・見直しを仕組み化できれば、KPI設定の精度をより高められます。
広報活動のKPIを設定する際に、押さえておくべき4つのポイントを解説します。
KPIを以下の「SMARTの法則」に従って設定すれば、目標が明確になり社内の関係者と共有しやすくなります。
Specific(具体的に・明確に) | KPIは誰もが理解でき、認識が異ならないよう具体的かつ明確に設定される必要がある。 |
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Measurable(計測可能な) | KPIは具体的な数値で設定されることが重要。 |
Achievable(達成可能な) | KPIは達成可能でやや高めのストレッチ目標として設定されることが適切。 |
Relevant(目的・ビジョン・戦略と関連した) | KGIおよび企業の目的やビジョン、戦略と関連したKPIであることが重要。 |
Time-bound(期限のある) | KPIには期限の設定が必要である。 |
SMARTの法則に従って設定した目標は、達成のためにやるべきことが誰の目にも明確です。
一つひとつのKPIがわかりやすく明確であればあるほど、施策の遂行時に成果の追求が容易です。設定基準が明確だと重要な数値のみに絞りやすく、管理や進捗把握も行いやすくなります。
広報活動の効果をあげるためには、広報活動の成熟度・フェーズに合わせたKPI設定が重要です。広報活動の成熟度には、大きく分けて以下の3つのフェーズがあります。
広報活動のフェーズ | 活動の内容と方向性 |
---|---|
露出の量拡大フェーズ | 自社の知名度を高めるために、プレスリリースなどさまざまな情報を数多く発信するフェーズ |
活動の質向上フェーズ | パブリシティを安定的に獲得できるようになり、質の高いパブリシティを獲得する行動へ切り替えるフェーズ |
メディア統合フェーズ | 他部門・複数メディアが連携してステークホルダーへ発信するメッセージを統一し、企業のブランド価値を高めるフェーズ |
露出の量拡大フェーズでは、広告換算値のような露出量を測る指標を重視し、活動の質向上フェーズでは、ユーザーの行動変容や経営への貢献を測る指標を重視しましょう。
広報活動のフェーズと効果測定方法については、以下の記事で詳細に解説しています。
広報活動の効果を測るKPIを設定する際には、成果だけでなく「行動目標」「露出目標」の観点から管理できる指標も設けましょう。広報PRにおいては、必ずしも活動量が結果に直結するわけではないためです。
広報活動の施策は成果が出るまでに時間がかかります。将来の成果につながるアクションとアウトプットが評価されず、短絡的な施策にばかり注力すれば、いずれ成果が途絶えてしまうでしょう。
着目すべき行動目標(アクション指標)、露出目標(アウトプット指標)には以下のものがあります。
指標の種類 | 具体的な指標の例 |
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行動目標(アクション指標) |
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露出目標(アウトプット指標) |
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成果目標(アウトカム指標) |
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自社や自社商品・サービスの知名度が高くない段階ではとくに、成果だけを追うKPI設定にならないよう留意しましょう。
より高い精度で広報活動の効果測定を行うためには、「量的」「質的」両面の指標を組みあわせる必要があります。
広報はステークホルダーとの関係構築を目的とするため、広報活動に対するポジティブな反響がどれだけあるかの把握が重要です。
ステークホルダーの好意的な反響を示す「質的」指標の例は以下です。
メディア露出数が確保でき、基本的な効果測定が可能になった段階で質的要素を考慮しなければ、効果測定の結果と評価にギャップが生じやすくなります。量的指標とともに質的要素の数値化指標をKPIに設定すれば、評価が適正化され、ゴールへの進捗をより正確に測れます。
広報活動のフェーズや目的に合わせてKPIを設定できるよう、広報活動の効果測定に適したKPIの例を質的指標を中心に紹介します。
NPSとは「Net Promoter Score」の略で、目に見えないブランドへの愛着、信頼などを数値化して可視化し、顧客ロイヤリティを算出する指標です。
活動の質向上に注力するフェーズで活用できる質的指標で、NPSの数値は自社や商品・サービスが顧客からどの程度受け入れられているのかを表します。
NPSの数値向上は将来的なリピート率アップや顧客単価アップにつながるため、広報活動のKPIとして広く活用される指標です。
第三者によるSNSの好意的な発信の数も、広報活動の有効な質的指標です。
第三者が発信した内容は企業が発信する広告よりも客観性が高く、消費者から信頼されやすい傾向があります。自社や商品に対する客観的かつ好意的な投稿が拡散されれば、消費者からの信頼度や好感度が向上すると期待できます。
そのためSNSの好意的な投稿数は、将来的な売上向上につながる指標として近年重要視されているのです。
口コミサイトに寄せられた好意的な口コミの数も、広報活動のKPIに適切な質的指標の一つです。
商品購入やサービス利用を検討する際に、口コミサイトを参考に購入を決める消費者が増えています。そのため口コミサイトで好意的な投稿が多いほど、商品やサービスの信頼性が高まり、売上向上につながると期待できます。
重点メディアでの掲載数も、広報活動のKPIに適した指標の一つで、主に露出拡大フェーズで多く使用されます。
ただし単なるメディア掲載数ではなく、自社の理念や方向性と合致したメディアで掲載された数を指標とする点に意味があります。掲載内容(質)を重視し、自社に関してポジティブな内容を掲載してくれるメディアを重点メディアに選択することが重要です。
一般名称での検索ではなく、自社や自社商品・サービス名で検索される指名検索数は、自社サービスが認知されていることを表す有効な指標です。
広報活動において自社の露出を増やし、知名度を高めているフェーズで多く指標に使用されます。指名検索が増えてきたら、次の施策にはSEOやリスティング広告が有効です。
インターネットや対面、郵送などで調査されたブランド認知度調査の結果も、広報活動のKPIに適した指標の一つです。
ブランディングを測る指標として経営貢献につながる成果目標(アウトカム指標)に位置づけられ、マーケティング施策としてのブランド認知度調査で測定します。
自社ブランドの認知度と同時に、同業他社に対する市場での立ち位置を把握する指標として用いられることも多いです。
認知度調査については、以下の記事で詳細に解説しています。
PV数(ページビュー数)とCV数(コンバージョン数)も、広報活動の指標として有効です。とくに活動の質強化フェーズで参照されます。
PV数の定期的な測定により、自社認知度の正確な評価が可能です。新商品を発表してWebサイトのPV数が増えた場合、新商品の広報やPR活動が成功していると評価してよいでしょう。
一方CV数とは成約数のことです。広報やPR活動が最終的な成果、つまり実際の顧客行動にどれだけ影響を与えているかを示す指標です。
Webサイトにおいては、サイトの目的に応じたPV数・CV数をKPIとして設定すれば、目標達成に向けてやるべきことを把握できます。
リードとは見込み顧客を意味し、アプローチに対し新たに興味を示すアクションを見せた見込み顧客の数がリード獲得数です。
広報やPR活動においては、以下の方法でホワイトペーパーのダウンロードや問い合わせをしてきた潜在顧客の数を表します。
リード獲得数をKPIに設定した場合、潜在顧客に対するアプローチ数だけ「問い合わせや商品購入の窓口を広げられた」と判断できます。
イベント・キャンペーンの応募数は、顧客の参加意欲や関心の度合いを測定する指標です。
応募データから顧客動向の把握ができ、マーケティング部門におけるリード獲得にもつなげられます。
KPI設定と効果測定により、広報・PR活動がもたらした効果を定量評価でき、活動の継続的改善と広報・PR活動の価値の明確化が可能です。
自社広報のフェーズやターゲットに合わせてKPIを設定し、定期的な評価と改善のサイクルを回せば、より精度の高いKPIを設定でき、成果の上がる広報活動を実現できます。
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