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「キャラケーキは著作権侵害になるの?」「キャラケーキによって著作権を侵害するとどうなる?」「キャラケーキを作る際の注意点を知りたい」といった疑問をおもちではありませんか。
キャラケーキを作って販売した場合、著作権侵害にあたる可能性があります。アニメや漫画などのキャラクターのイラストは著作権で保護されており、利用には著作権者の許可が必要であるためです。著作権侵害であることを知ったうえでキャラケーキを購入することも著作権侵害になるので注意しましょう。
本記事では、キャラケーキに関連する著作権侵害について、実際の事件を紹介しながらわかりやすく解説します。キャラケーキが著作権侵害にならないケースも紹介するため、キャラケーキを販売または購入したい方は最後までご覧ください。
著作権者の許可を得ずにキャラケーキを作って販売する場合、著作権侵害の可能性があるので注意しなければいけません。アニメや漫画などに出てくるキャラクターのイラストは著作権によって保護されているためです。
また、著作権侵害であることを知ったうえでキャラケーキを注文することも著作権侵害行為です。
著作権侵害に該当する行為をした場合、民事上の請求や刑事上の罰則を受けます。キャラケーキを販売したり購入したりする際は、著作権侵害行為にならないよう慎重な対応が求められます。
なお、キャラクターの著作権についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
『鬼滅の刃』のキャラクターのイラストが描かれたケーキを販売した女性が、著作権法違反(複製権侵害)の疑いで書類送検されました。
事件の概要は以下のとおりです。
鬼滅の刃のキャラクターイラストは、アニメや漫画で表現されているため著作物に該当します。13,000~15,000円程度で販売していることから明らかに営利目的の利用であり、私的利用の範囲外です。つまり「複製権」の侵害と考えられます。
また、Instagramを通じて宣伝・販売を行っていることから「公衆送信権」の侵害の可能性もあります。「複製権」と「公衆送信権」について以下にまとめました。
内容 | 対象となる行為 | |
---|---|---|
複製権 | 著作権者のみ、著作物を複製する権利がある(21条) | 著作物を複写・録画・録音・模写・スキャナーで読み取るなど |
公衆送信権 | 著作権者のみ、著作物を公衆へ送信できる権利がある(23条) | 著作物をテレビやラジオで放送する・インターネットにアップロードする・不特定多数へメールやFAX送信するなど |
「複製権」と「公衆送信権」はいずれも著作権に含まれる権利です。
参照:読売新聞「「鬼滅」ケーキ無断販売、職人の女を書類送検…インスタで客募り430万円売り上げ」
参照:高知新聞「「鬼滅」ケーキ販売疑い書類送検 渋谷34歳女性、インスタ通じて」
参照:JAC 一般社団法人 学術著作権協会「著作物の複製利用について」
著作権者の許可を得ずにキャラケーキを販売した場合は著作権侵害となり、民事上の請求や刑事上の罰則を受けます。
民事上の請求と刑事上の罰則について以下にまとめました。
民事上の請求 | 侵害行為の差止請求・損害賠償の請求・不当利益の返還請求・名誉棄損などの措置の請求など |
---|---|
刑事上の罰則 | 10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金など(法人による侵害の場合は3億円以下の罰金) |
著作物の保護期間経過後や、私的利用など著作権が制限される場合は著作権侵害にはなりません。
著作権の保護期間は著作者の逝去後70年間です。保護期間は、著作者が死亡した年の翌年1月1日から計算します。たとえば、著作者が2024年に死亡した場合、2025年1月1日から計算して、2094年12月31日までが保護期間となります。
著作物 | 著作者の死後70年 |
---|---|
無名・変名の著作物 | 公表後70年 |
団体名義の著作物 | 公表後70年 |
映画 | 公表後70年 |
実演 | 実演が行われた後70年 |
レコード | レコードの発行後70年 |
ただし、著作権の保護期間は国によって異なります。国外の著作物に出てくるキャラクターのイラストをキャラケーキで取り扱う際は、使用する国の法律に従いましょう。
参照:公益社団法人著作権情報センター「著作物を無断で使うと?」
参照:文化庁「著作物等の保護期間の延長に関するQ&A」
キャラケーキを作っても著作権侵害にならないケースは以下の3つです。
それぞれ詳しく解説しましょう。
個人で楽しむ程度であれば、著作権侵害にはなりません。著作権法は私的利用の場合において著作権者の承諾を得ないキャラクターの利用を認めているためです。
私的利用の範囲は「個人的または家庭内など、限られた範囲内での使用を目的とすること」と定められています。
つまり、自宅でキャラクターやアイドルなど推しの写真をプリントしたケーキを作って食べる分には問題ありません。
参照:文化庁「著作者の権利の制限」
非営利、もしくは無料で報酬を受け取らない場合は、著作権侵害になりません。つまり、非営利目的でキャラケーキを作り、イベントなどで無償提供することは可能です。
ただし、たとえ低価格でもキャラケーキを提供して報酬を得ると、著作権侵害の可能性が発生するので注意しましょう。SNSなどを通じてキャラケーキを販売する行為は、購入に至らなかった場合も営利目的とみなされます。
また営利目的ではなく趣味で作ったキャラケーキであっても、公衆送信権を侵害する可能性があるため、SNSなどにアップするのは避けましょう。
著作権者の許可を得たうえでキャラケーキを作ることは著作権侵害になりません。大手コンビニエンスストアがキャラクターのクリスマスケーキなどを販売するケースが該当します。
ファミリーマートでは2023年のクリスマスケーキとして「ちいかわ」や「すみっコぐらし」のキャラケーキを提供しました。公式にコラボしており、著作権者に許可を得たうえで成り立っていると考えられます。
引用:ファミリーマート「ファミマでしか買えない大人気キャラクターとのコラボケーキが多数登場!『ファミマのごちそうクリスマス』」
Copyright © FamilyMart Co., Ltd. All Rights Reserved.
ローソンやセブン-イレブンも「プリキュア」や「シナモロール」など人気キャラクターのクリスマスケーキを提供しています。
引用:ローソン「キャラクターケーキ | クリスマス」
Copyright © Lawson, Inc. All Rights Reserved.
キャラケーキを購入する際は、著作権者に許可を得た信頼できる販売元から購入するようにしましょう。
参照:ファミリーマート「ファミマでしか買えない大人気キャラクターとのコラボケーキが多数登場!『ファミマのごちそうクリスマス』」
参照:ローソン「キャラクターケーキ | クリスマス」
参照:サンリオ「セブン-イレブン限定!シナモロールのクリスマスケーキが登場♪」
キャラケーキを作って販売するなど、著作物を利用する際は以下のいずれかが必要です。
それぞれの方法について以下で解説しましょう。
著作権法で保護されている場合は、著作権者を調べて利用承諾を得て使用します。
トラブルを避けるため、著作物の利用方法・利用承諾の範囲・使用料・支払方法などに合意し、文書で契約を結ぶことが望ましいです。ライセンス契約とも呼ばれます。
ライセンス契約を結ぶ際は、以下のような点を定めて契約しましょう。
契約対象 | 対象物の名称・概要・定義など |
---|---|
契約期間 | 具体的な日付や日数・契約期間終了後の取り扱いなど |
使用金額(ロイヤリティ) | 一括支払い・販売金額の何割かなど |
対象範囲 | 使用できる地域やエリア・用途・販売方法など |
解約・解除 | 一方が解約違反をした場合の取り扱いなど |
著作権者の所在がわからない場合は、文化庁長官の裁定を受けて利用できるケースもあります。ただし裁定を受けるためには、相当な努力をしても著作権者と連絡が取れない状況であることを認めてもらわなければいけません。
具体的な流れは以下のとおりです。
申請中に著作権者と連絡が取れた場合は、文化庁長官は裁定を行いません。申請者と著作権者が協議を行い、著作物利用の許可を得ます。
参照:文化庁「裁定の手引き ~権利者が不明な著作物等の利用について」
著作権の譲渡を受けると、著作物を自由に利用できます。ライセンス契約との違いは、著作権の譲渡後、もとの著作者は著作権を失うので著作物の使用ができない点です。
著作権の譲渡を受ける契約は、新たに創作してもらった著作物を継続的に利用するケースなどが考えられます。たとえば、外部のイラストレーターに企業のロゴやイメージキャラクターを依頼した場合などです。
外注先に代金を支払ってイラストを受け取ったとしても、著作権の譲渡を行わなければ著作権者はイラストレーターのままです。
企業のロゴやイメージキャラクターを他の場所で使われては、企業のイメージに悪影響を及ぼすことも考えられます。事前に著作権の譲渡契約を締結するなど、適切な手続きが必要です。
ただし著作者人格権は譲渡できません。著作者人格権の内容は以下のとおりです。
公表権 | 未公表の著作物を公衆に提示する権利 |
---|---|
氏名表示権 | 著作物を公表する際、著作者名を表示するか否かを決定する権利 |
同一性保持権 | 著作物の内容を改変されない権利 |
著作権の譲渡を受けた後でも、無断で著作者の公表や著作物の改変をしないよう注意しましょう。
キャラケーキの著作権に関する注意点は以下の3つです。
それぞれについて以下で解説しましょう。
著作権は、著作物の利用にあたり著作者に与えられる権利のことです。キャラケーキに利用されたキャラクターの著作権者は著作者であるため、キャラケーキを作成した人に著作権が発生するわけではありません。
著作権には、創作された著作物の無断コピーや利用を防止する目的があります。著作権法51条によると、著作物がオリジナリティを持ち、表現された時点で自動的に権利が発生するため、手続きは不要です。保護期間は、原則として著作者が死亡した年の翌年以降70年が経過するまでとされています。
参照:e-Gov法令検索「著作権法」
なお、著作権法についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
私的利用や非営利目的でもキャラケーキをSNS上に公開する行為は避けましょう。
基本的に私的利用や非営利目的であれば、無許可でキャラケーキを作ってもよいことは前述しました。ただし、作ったキャラケーキをInstagramやブログなどに載せる行為は著作権法の「公衆送信権」を侵害する可能性があります。大勢の人がアクセスし、閲覧できるためです。
公衆送信権とは、著作物を公衆に向けて送信する権利を指します。公衆送信権は著作者に占有される権利なので、著作権者の許可が必要です。
参照:公益社団法人 日本写真家協会「Q:公衆送信権とはどんな権利ですか?」
キャラクターそのものには著作権はありません。キャラクターは具体的表現から昇華した抽象的概念やアイデアであるためです。
ただし、アニメや漫画化されると著作権によって保護されます。漫画の1コマやイラストなど具体的な表現が存在するためです。キャラケーキの場合もキャラクターのデザインを複製するものであるため、著作権侵害に該当します。
なお、著作権とキャラクターについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
キャラケーキを作る際は著作権に細心の注意を払わなくてはいけません。許可なしでキャラクターを使用した場合、著作権侵害になるためです。
キャラケーキを販売するには、著作権者に対して許可取りが必要であることを押さえておきましょう。また、注文する際も著作権侵害と認識していた場合は同罪となるので注意が必要です。
キャラケーキは私的利用で楽しむ分には問題ありませんが、SNSへの投稿は公衆送信権を侵害するおそれがあるので避けましょう。
著作権についてしっかりと理解をして、キャラケーキを楽しんでください。
IPにまつわる知識・ニュースを随時発信しています。