ディズニーのマーケティング戦略は?フレームワークやビジネスモデルについて解説
#エンタメIP
2024.10.24

ディズニーのマーケティング戦略は?フレームワークやビジネスモデルについて解説

マーケティングに関する仕事をするなかで、「ディズニーのように売れる仕組みを作りたい」と考える方は多いのではないでしょうか。

ディズニーのマーケティングにおいては、顧客に特別な体験を提供することで、ロイヤルカスタマーを獲得しています。

この記事では、東京ディズニーリゾートのマーケティング戦略について、活用例とともに解説します。ディズニーの経営戦略やビジネスモデルから学び、自社商品、サービスの認知や購入につなげたい方はぜひ参考にしてください。

INDEX
  1. マーケティング戦略の前に押さえたいディズニーリゾートの経営戦略
  2. ディズニーのマーケティング戦略
  3. 7Pから見るディズニーのマーケティングの活用例
  4. ディズニーのビジネスモデル
  5. ディズニーの事例から学んでマーケティング戦略を成功させよう

マーケティング戦略の前に押さえたいディズニーリゾートの経営戦略

東京ディズニーリゾートの強みであるブランド力を支える、経営戦略のポイントを以下の観点から解説します。

  • 世界観を作り込む
  • 人材育成に力を入れる
  • 楽しみ方を増やして利益を拡大する

世界観を作り込む

東京ディズニーリゾートでは、唯一無二の世界観を演出するために、建物から音楽までさまざまなものがテーマに沿って設計されています。

パーク内を「青空を背景とした巨大なステージ」と捉えて、あらゆるものにテーマやストーリーを設定することで非日常空間を創り出しているのです。

来場者をゲスト、ステージで働く従業員をキャストと呼ぶのも特徴的です。日常を感じさせる要素を排除し、ディズニーの世界観を五感で楽しめるようなショーを提供します。

映画の中に入り込んだような空間を演出しゲストの気分を高めることで、その世界観に没入できるグッズなどの購買意欲も高めているといえるでしょう。

参照:株式会社オリエンタルランド「パーク運営の基本理念

なお、ブランディングで得られる効果についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

人材育成に力を入れる

東京ディズニーリゾートで働く従業員に、徹底した人材教育を受けさせているのも大きな特徴です。

東京ディズニーリゾートを運営しているオリエンタルランドでは、従業員のキャリアと能力開発を目指し、従業員向け研修プログラムを実施しています。全従業員が入社時にディズニーの哲学やテーマパークについて学ぶためにプログラムを受講し、入社1・3年目にはフォローアップ研修も受けます。

企業として成長するためには、従業員の自立的な成長が不可欠です。そのため、それぞれのキャリアに合わせた研修を用意し、従業員自身が必要な知識やスキルを考えて学べるような体制を整えています。

テーマパークに来たゲストがホスピタリティあふれる従業員の接客術に魅力を感じられれば、リピーター獲得が期待できるでしょう。従業員の人材力を強化させることによって、事業価値の向上や長期的な経営戦略の実現を目指しています。

参照:株式会社オリエンタルランド「研修と教育

楽しみ方を増やして利益を拡大する

パークで遊ぶだけでなく買い物や食事、宿泊などさまざまな楽しみ方を提供することで、利益拡大を狙えるのも強みです。東京ディズニーリゾートは、東京ディズニーランド・東京ディズニーシーの2つのテーマパークとホテル、複合型商業施設、さらにモノレールなどで構成されています。

運営元であるオリエンタルランドの2023年度の売上高は、下表のとおりです。

事業

売上高

テーマパーク事業

約5,130億円

ホテル事業

約880億円

イクスピアリ事業

約65億円

モノレール事業

約50億円

参照:株式会社オリエンタルランド「セグメント情報

ホテル事業やショッピングモールであるイクスピアリ事業、リゾート内を周遊するモノレール事業など、幅広い事業から収益を得ています。

テーマパークのみならず、周辺施設による幅広い楽しみ方を提供することで、利益を伸ばしているといえるでしょう。

ディズニーのマーケティング戦略

ディズニーのマーケティング戦略に関して以下の観点で解説します。

  • サービスマーケティング
  • マーケティングミックスの7P

サービスマーケティング

サービスマーケティングは、ディズニーのマーケティング戦略で重要と考えられる、サービスや顧客体験の提供にフォーカスしたマーケティングのことです。有形の商品やサービスとは違った観点が必要でしょう。

具体的には、接客方法や商品購入の特典などに特化したマーケティングを行います。サービスマーケティングにおける、サービスの特性は以下のとおりです。

サービス

特性

無形性・非有形性

エンターテインメント・教育など、物理的な形のないサービス

同時性・不可分性

エステサロンの施術や塾の授業など、生産と消費が同時に発生するサービス

消滅性・非貯蔵性

ホテルの部屋やチケットなど、貯蔵や保管ができないサービス

異質性・変動性

飲食店の調理や美容室の施術など、だれが・いつ提供するかで品質が変わるサービス

マーケティングミックスの7P

サービスマーケティングを実践するには、マーケティングミックスのフレームワーク「7P」について知っておきましょう。

7Pは、マーケティング戦略を立案するうえで欠かせない要素である4Pにサービス業界のマーケティングに有効といわれる3Pを加えた、以下の7つの要素で構成されています。

<4Pの要素>

  • Product(商品・サービス)
  • Price(価格)
  • Place(流通)
  • Promotion(販売促進)

<3Pの要素>

  • Personnel(人・要員)
  • Process(業務プロセス・販売プロセス)
  • Physical Evidence(物的証拠)

7つの要素を管理し、提供する商品やサービスの品質、顧客体験の向上を目指すというサービスマーケティングの概念です。東京ディズニーリゾートでの活用例とともに、次章で7Pについて詳しく解説します。

なお、マーケティング戦略についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

7Pから見るディズニーのマーケティングの活用例

東京ディズニーリゾートのマーケティング戦略を、以下のサービスマーケティングの7Pの観点で紹介します。

  • Product(商品・サービス)
  • Price(価格)
  • Place(流通)
  • Promotion(販売促進)
  • Personnel(人・要員)
  • Process(業務プロセス・販売プロセス)
  • Physical Evidence(物的証拠)

Product(商品・サービス)

Productは、どのように商品やサービスを売るのか戦略を考え、企画、開発することです。

ディズニーにおけるProductは、非日常的な空間での特別な経験を提供することでしょう。光と音楽で彩る豪華なパレードや、アトラクションでの世界観構築といった、日常を排除した幻想的な世界での体験があてはまります。

また、ディズニーのキャラクターは、多くの人に周知されブランド化されており、キャラクターごとに作られたグッズは高い人気を得ています。消費者のニーズに合わせた製品・サービスの開発は、品質だけでなくデザインやアフターサービスなど、さまざまな観点において魅力を高めることが必要です。

自社商品やサービスにおいて大切にするべきは、消費者が自社サービスに求めているのは何かを明確にし、ターゲットのニーズに合う企画、開発を行うことだといえるでしょう。

Price(価格)

Priceは、競合や市場価格、売上などを考慮したうえで、適切な価格設定を行う戦略のことを指します。

東京ディズニーランドと2001年に開業した東京ディズニーシーの1デーパスポート価格は、定期的に値上げしています。価格改定の推移は、以下のとおりです。

1983年

3,900円

1987年

4,200円

1989年

4,400円

1992年

4,800円

1996年

5,100円

1997年

5,200円

2001年

5,500円

2006年

5,800円

2011年

6,200円

2014年

6,400円

2015年

6,900円

2016年

7,400円

2019年

7,500円

2020年

8,200円

2021年(3月)

8,700円(変動価格の最大価格)

2021年(10月)

9,400円(変動価格の最大価格)

2023年

10,900円(変動価格の最大価格)

この値上げ分の利益を元手に、新しいアトラクション建設や新規サービス開発など、顧客満足度への投資を行っています。2023年には価格の変動幅が広がり、2024年時点で東京ディズニーランド、東京ディズニーシーの1デーパスポートの価格は7,900〜10,900円です。

新型コロナ感染症の流行前よりも1日あたりの入園者数を制限することで、2019年度より来場者数が下がっているものの、ゲスト一人あたりの売上高は向上しています。来場者数減によって混雑が解消され、ゲストの満足度向上につながっていると考えられます。

価格設定については、プロモーションにかかる予算はどのくらいなのか検討が必要です。くわえて、サービスの価値に見合うかどうか、顧客が購入しやすい価格なのかなど、さまざまな視点から考えて設定することが大切といえるでしょう。

参照:株式会社オリエンタルランド「入園者数
参照:株式会社オリエンタルランド「上場以来のゲスト1人当たり売上高推移

Place(流通)

Placeは、ターゲット顧客に対して最適な流通経路と販売場所を確保し、いかに製品やサービスを提供できるかを考える流通戦略のことです。

東京ディズニーリゾートの最寄駅であるJR舞浜駅までは、東京駅から電車で約15分と都心から近く、主要都市からバスでの直行便も用意されています。

建設当時は、半径50km以内に3,000万人以上が居住する抜群の立地でした。パーク開園にあたりどの場所が適しているか、徹底的にリサーチして決定されています。

参照:株式会社オリエンタルランド「2017マニュアルレポート

Promotion(販売促進)

Promotionは、ターゲット顧客などに合わせて、どのような方法で製品やサービスを認知させるのかを考えるプロモーション戦略です。

東京ディズニーリゾートでは、多角的な広告展開に加えて飲食や物販にも力を入れており、常に顧客体験の向上を目指しています。たとえば、クリスマスや年末、卒業シーズンの春キャン(学生を対象にした割引チケット)などが有名です。定期的なイベントを行い、特別な体験ができる機会を発信しています。

顧客満足度が高いため、UGC(口コミ)も継続的に発信され、費用のかからないプロモーションにもつながっています。一度では楽しみ尽くせない内容の数多くのエンターテイメント要素を有しており、ゲストにまた来たいと思わせるのも戦略の一つです。

また、テーマパークへの再投資を行い、新規アトラクションの導入などによってリピーター獲得につなげています。

なお、ターゲットマーケティングについてはこちらの記事で詳しく解説しています。

Personnel(人・要員)

Personnelは、従業員や関係者、ターゲットとなる顧客を含め自社に関わるすべての人を指しています

ディズニーは、充実した研修制度により従業員の接客力を高めることで、顧客満足度に貢献しています。ゲストのハピネスを創造するために、安全を最優先した行動を徹底し、従業員の行動基準として掲げているのが以下の5つの鍵です。

Safety(安全)

安全な場所、やすらぎを感じる空間を作りだすために、ゲストにとっても、キャストにとっても安全を最優先すること

Courtesy(礼儀正しさ)

“すべてのゲストがVIP”との理念に基づき、言葉づかいや対応が丁寧なことはもちろん、相手の立場にたった、親しみやすく、心をこめたおもてなしをすること

Inclusion(インクルージョン)

さまざまな考え方や多様な人たちを歓迎し、尊重すること

Show(ショー)

あらゆるものがテーマショーという観点から考えられ、施設の点検や清掃などを行う他、キャストも「毎日が初演」の気持ちを忘れず、ショーを演じる

Efficiency(効率)

安全、礼儀正しさ、ショーを心がけ、さらにチームワークを発揮することで、効率を高めること

引用:株式会社オリエンタルランド「行動規準「The Five Keys~5つの鍵~」(東京ディズニーリゾート)

たとえば、パーク内の清掃スタッフは立ったまま床を拭いますが、これは周囲に気を取られたゲストがスタッフに気づかずぶつかってしまうリスクを避けるための行動です。礼儀正しさやショーの要素よりも、安全を優先して行動しています。

また、さまざまなものをテーマショーと考える東京ディズニーリゾートでは、清掃スタッフがモップでイラストを描くパフォーマンスも有名です。

卓越したホスピタリティによりゲストの満足度を向上させることで、従業員の満足度も向上し、相互関係により独自の競争優位性を獲得しています。サービス業界においては、サービスを提供する側、サービスを受ける側どちらの視点も不可欠でしょう。

Process(業務プロセス・販売プロセス)

Processは、顧客にサービスを提供する手順や品質管理などのことです。

ディズニーでは、顧客に合わせたサービスを提供できるような体制を整えています。たとえば、小さな子どもを連れていても楽しめるようにベビーセンターの設置をしたり、車椅子のままアトラクションを利用できる専用スペースを用意したりしています。

1日あたりの入園できる来場者数を制限することも、戦略の一つです。過剰に長い待ち時間が発生しないように配慮し、体験価値向上を目指しています。

また、チケット購入やレストラン予約、待ち時間のチェックなどができるアプリを用意しているのもポイントです。パークでの行動をスムーズに行えるように工夫するなど、顧客エンゲージメントを促進し、リピーターの獲得にもつなげています。

顧客がスムーズに高品質なサービスを受けられるようプロセスを改善することで、満足度も高まるといえるでしょう。

Physical Evidence(物的証拠)

Physical Evidenceは、サービス業のように形のないサービスの品質を可視化して、顧客に示す要素のことです。

ディズニーにおいては、非日常的な空間を創り出すために建物から音楽まで園内すべてのものにテーマを設定し、一貫性を維持しています。日常空間から遮断するために、建物や樹木などで外が見えないよう工夫がされているのも特徴の一つです。徹底して世界観を作り込むことで、さまざまな世代の人々が一緒に楽しめる世界を提供しています。

Physical Evidenceに大切なのは、顧客にサービスの品質を実感してもらい、顧客体験を向上させることといえるでしょう。

ディズニーのビジネスモデル

東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドは、「夢・感動・喜び・やすらぎの提供」を使命とする企業です。利益を元手と捉えて、新規アトラクションなどに投資を行っています。

引用:株式会社オリエンタルランド「OLCのビジネスモデル

利益を生む方法は売上の向上と費用を削減することと考え、顧客満足と安全や品質を保ちながら、利益の最大化を目指しています。売上向上のために、パークの来場者を増加させるための施策を検討、実践することが不可欠です。

また、従業員の人件費はしっかり確保しつつ、主な費用となる販促活動費やメンテナンス費などを常に最適にするよう検討しています。

企業使命をより高いレベルで実現させていくことが、オリエンタルランドが経営するテーマパーク事業のビジネスモデルです。

ディズニーの事例から学んでマーケティング戦略を成功させよう

ディズニーは、マーケティングによって生み出されるブランド力が強みといえます。ブランド力を支える要因として、徹底して作り込まれた世界観と、他社とは一線を画すホスピタリティが挙げられます。

サービスの質を向上させ、自社独自のブランドは何か、顧客に提供できる価値はどのようなものかを考えて他社との差別化をはかることは欠かせません。

ディズニーのようにサービスマーケティングを実践し、戦略を立てましょう。

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