ゲーム実況・配信の著作権の扱いは?確認方法や侵害事例を解説
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2024.09.27

ゲーム実況・配信の著作権の扱いは?確認方法や侵害事例を解説

「ゲーム実況の著作権について知りたい」「ゲーム実況で著作権侵害にならない方法を知りたい」と考えている方は多いのではないでしょうか。

ゲーム内の映像や音声は著作物として保護されており、無断で使用すると著作権侵害になる可能性があります

本記事では、ゲーム実況や配信における著作権の扱いについて詳しく解説します。具体的な確認方法や許可の取り方、そして著作権侵害のリスクや実際の事例についても紹介します。

本記事を読むことで、安心してゲーム実況配信を楽しめる知識を身につけられるでしょう。

INDEX
  1. ゲーム実況は許可がないと著作権侵害になる
  2. ゲーム実況で著作権侵害をしないために!利用許可を取る方法・確認方法
  3. ゲーム実況前に確認したい大手ゲーム会社の著作権に関するガイドライン
  4. ゲーム実況が著作権を侵害するケースとは
  5. ゲーム実況で著作権侵害をした場合のリスク
  6. ゲーム実況が著作権侵害と判断された事例
  7. ゲーム実況の著作権を守り、ガイドラインに沿った配信をしよう!

ゲーム実況は許可がないと著作権侵害になる

ゲーム実況は著作権者の許可がないと著作権侵害になります。ゲーム内の映像や音声が著作物として保護されているためです。

著作権は、創作者が自身の著作物を無断で使用されないように保護するための権利です​。ゲーム実況では、著作権のうちゲーム映像を上映する「上映権」と、インターネットを通じて配信する「公衆送信権」が関わります。

“(上映権)第二十二条の二 著作者は、その著作物を公に上映する権利を専有する。”
引用: e-Gov法令検索「著作権法

“(公衆送信権等)第二十三条 著作者は、その著作物について、公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行う権利を専有する。

2 著作者は、公衆送信されるその著作物を受信装置を用いて公に伝達する権利を専有する。”
引用: e-Gov法令検索「著作権法

上記の権利を侵害するため、ゲーム実況をするときには必ずゲーム会社の許可が必要です。ただし、ゲーム会社によってはガイドラインを公開していて、条件付きで許容している場合もあります。ゲーム実況のガイドラインは、以下の段落で詳細に解説します。

なお、著作権侵害についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

ゲーム実況で著作権侵害をしないために!利用許可を取る方法・確認方法

ゲーム実況で著作権侵害をしないためには、以下の方法で利用許可の確認が必要です。

  • 公開されているガイドラインを見る
  • 直接問い合わせる

公開されているガイドラインを見る

著作権侵害をしないためにゲーム会社のガイドラインを確認しましょう。ゲーム実況をする配信者およびその視聴者が増加したことを背景に、条件付きで許可しているゲーム会社が増えてきました。

ゲーム会社の公式サイトやSteamなどのソフト配信プラットフォームにアクセスし、ガイドラインのページを探しましょう。ゲーム実況に関する具体的な条件や禁止事項がわかります。

ガイドラインは更新されることがあるため、定期的なチェックが必要です。またゲームタイトルごとに設定されていることもあるため注意しましょう。

直接問い合わせる

ガイドラインが公開されていない場合は、ゲーム会社に直接問い合わせましょう

ゲーム会社の公式サイトを確認し、問い合わせフォームなどから連絡を取ります。配信の許可を求めるときには、その目的や内容、使用するプラットフォームなどを具体的に伝えます。

許諾を得た場合も条件を守って、その範囲内でゲーム実況をしましょう。

ゲーム実況前に確認したい大手ゲーム会社の著作権に関するガイドライン

大手ゲーム会社5社の実況に関するガイドラインについて解説します。

  1. 任天堂
  2. スクウェア・エニックス
  3. コナミ
  4. バンダイナムコエンターテインメント
  5. カプコン

1.任天堂

任天堂は、個人の非営利目的のゲーム実況に対して一定の条件を満たせば許可しています。個人で営利を目的としない限り、著作物を利用した動画や静止画の投稿を認めているのです。ただし、ゲーム内容の改変や不適切なコンテンツの配信は禁止されています。

指定されたシステムを利用する場合は、投稿を収益化することも可能です。たとえば、YouTubeの「YouTubeパートナープログラム」やニコニコ動画の「クリエイター奨励プログラム」については、ガイドラインの範囲で収益化できます。

会社名

任天堂

実況の許可

配信可能なプラットフォーム

YouTube、ニコニコ動画、Twitchなどの指定のシステムを利用した場合

主な禁止事項

ゲーム内容の改変や不適切なコンテンツの配信は不可

参照:任天堂「ネットワークサービスにおける任天堂の著作物の利用に関するガイドライン

2.スクウェア・エニックス

スクウェア・エニックスは、日本在住の個人ユーザーであればゲーム実況を許可しています。

スクウェア・エニックスのガイドラインは、ゲームタイトルごとに異なるため、各タイトルの公式サイトで確認する必要があります。

たとえば『ドラゴンクエスト』シリーズは、非商用目的であれば動画共有サイトの配信が認められています。

ただしゲームシナリオに大きく関係するシーンについては、他のユーザーの楽しみを奪わないためにも「ネタバレ」の表記をするなど配慮が必要です。また、ムービーシーンや音楽のみの配信は禁止されています。

会社名

スクウェア・エニックス

ゲーム名

ドラゴンクエストシリーズ

実況の許可

配信可能なプラットフォーム

一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)と音楽に関する利用許諾契約締結済の動画共有サイト(「YouTube」「ニコニコ動画」等)

主な禁止事項

ネタバレやムービーシーンのみの配信は原則禁止

参照:スクウェア・エニックス「配信ガイドライン | ドラクエ・パラダイス(ドラパラ)ドラゴンクエスト公式サイト

3.コナミ

コナミは、ゲームタイトルごとにガイドラインを用意しています。それに従えば実況や配信を行うことに問題はありませんが、個人以外の利用の場合は別途利用申込みフォームで申請が必要です。

また、該当ゲーム以外の宣伝広告に使用することや誹謗中傷、反社会的活動の目的での投稿は禁止されています。

たとえば『桃太郎電鉄ワールド ~地球は希望でまわってる!~』は、YouTubeやTwitchでのプレイ動画の配信が許可されていますが、他の商品やサービス、企業の宣伝広告に用いることは禁止されています。

会社名

コナミ

ゲーム名

桃太郎電鉄ワールド ~地球は希望でまわってる!~

実況の許可

配信可能なプラットフォーム

Facebook
ニコニコ動画/ニコニコ生放送
OPENREC.tv
Twitch
YouTube
Mirrativ
TwitCasting
Instagram
Mildom
TikTok
SHOWROOM
Threads
17LIVE

主な禁止事項

・営利目的での投稿
・他の商品・サービスや企業等の宣伝広告に使用
・誹謗中傷や反社会的活動を目的とした投稿
・宗教活動や政治活動を目的とした投稿
・公序良俗に反する内容
・違法な情報と組み合わせた内容
・本ゲームに対する改造や解析の結果など公表されていない要素を含む投稿
・当社からの委託または当社との提携を誤認させる投稿
・第三者が作成した動画またはスクリーンショットの無許諾での転載

参照:コナミ「桃太郎電鉄ワールド ~地球は希望でまわってる!~ | 動画投稿ガイドライン」」

5.バンダイナムコエンターテインメント

バンダイナムコエンターテインメントのゲームは、指定されたゲーム実況ポリシーを守ることでゲーム実況ができます。

バンダイナムコエンターテインメントのガイドラインに従えば、YouTubeのパートナープログラムやSuper Chat機能などの収益化手段を利用可能です。ただし、ゲーム実況は個人の配信に限定され、原則として法人は認められません。

たとえばeスポーツ大会を開催する場合には、実況ポリシーを守れば個人活動は許可されます。しかし法人としての利用は実況ポリシーの適用外になるため、別途問い合わせて確認が必要です。

会社名

バンダイナムコ

実況の許可

配信可能なプラットフォーム

YouTubeにおけるパートナープログラムやSuper Chat機能など

主な禁止事項

営利目的、公序良俗に反する行為

参照:バンダイナムコエンターテインメント「ゲーム実況ポリシー|バンダイナムコエンターテインメント公式サイト

6.カプコン

カプコンのゲームソフトは、ガイドラインと禁止事項を守ればゲーム実況が可能です。

具体的にはYouTubeやTwitch、Facebookなどでゲーム実況が可能ですが、発売日前のコンテンツを公開することや不適切な表現を用いた配信は禁止されています。

たとえば発売日前に非公式にリリースされた動画などの配信は削除されます。

会社名

カプコン

実況の許可

配信可能なプラットフォーム

YouTube、Twitch、Facebook、お客様ウェブサイト、動画共有サイト

主な禁止事項

発売日前のコンテンツの公開

参照:カプコン「カプコン動画ガイドライン(個人向け)

ゲーム実況が著作権を侵害するケースとは

ゲーム実況を行うことで著作権侵害となるケースは、主に以下の4つです。

  1. 許可なく商用利用する
  2. ネタバレや特定シーンを配信する
  3. 不適切なコンテンツや内容を改変する
  4. 発売前のコンテンツを公開する

1.許可なく商用利用する

ゲーム会社の許可なく商用利用することは、著作権侵害に該当します。ゲームは著作物として保護されており、個人での利用のみ認められているためです。

ゲーム会社の多くは非営利目的での使用を条件としており、商用利用には厳しい制限を設けています。

たとえば、YouTubeパートナープログラムやTwitchアフィリエイトプログラムなどの特定の収益化システムを通じてのみ収益化が許可される場合があります。収益化をする場合には、各ゲーム会社のガイドラインを確認しましょう。

もし、無許可でゲーム実況の商用利用をする場合には、著作権者からの訴訟リスクや損害賠償請求が発生する可能性があるので注意しましょう。

2.ネタバレや特定シーンを配信する

ゲーム実況でネタバレや特定シーンを配信すると著作権侵害にあたる可能性が高まります。ゲーム会社がガイドラインでシナリオやエンドコンテンツの配信を禁止しているケースが多いためです。

ゲーム会社の多くは、ゲームシナリオに大きく関係するシーンについては、今後プレイするユーザーのために配信を禁止しています。ただし、ゲーム会社によっては条件付きで配信が可能です。

たとえば、スクウェア・エニックスの『ドラゴンクエストXI』は、シナリオの重要部分の配信を制限していますが「ネタバレあり」の表記をすることで配信ができます。

参照:ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて S 公式サイト「動画・生配信・画像投稿に関するガイドライン

3.内容の改変や不適切な言動を含むコンテンツの配信をする

内容の改変や不適切な言動を含むコンテンツの配信は、ゲーム会社のガイドラインに違反し著作権侵害となることが多いです。

許可なくゲームの一部を編集したり、ゲーム内容を改変することは禁止されています。また、不適切な言動や暴力的、卑猥な内容の配信も厳しく禁止されています。

たとえばコナミはゲーム内容の改変や不適切なコンテンツの配信を明確に禁止しており、違反すると法的措置を取られる可能性があります。

4.発売前のコンテンツを公開する

許可なくゲームの正式な発売前にコンテンツを公開することは、著作権侵害と見なされます。未公開のものを公表するかどうか決めることは著作権者の権利(公表権)であるためです。

とくに、未公開のゲーム映像や情報を配信することは避けましょう

たとえば、任天堂は発売前のコンテンツの無断公開を厳しく取り締まっており、違反者に対して法的措置を取る場合も考えられます。

ゲーム実況で著作権侵害をした場合のリスク

ゲーム実況で著作権侵害をすると以下の2つのリスクが生じます。

  1. プラットフォーム上のペナルティ
  2. 法的な罰則

1.プラットフォーム上のペナルティ

著作権侵害が認められると、プラットフォーム上でペナルティが科されるリスクがあります。主なペナルティは以下のとおりです。

  • 当該コンテンツの削除
  • アカウント停止
  • 収益化の停止

たとえば、YouTubeでは著作権者が有効な申し立てを送信すると、動画が削除され著作権侵害の警告が適用されます

ユーザーが著作権侵害の警告を3回受け取った場合、該当アカウントと関連付けられているチャンネルが停止されます。さらにアカウントにアップロードされたすべての動画が削除され、新しいチャンネルを作成することもできません。

ペナルティにより配信活動が大きく制限されるため、著作権侵害は避けましょう。

参照:YouTube「著作権侵害の警告に関する基礎知識

2.法的な罰則

ゲーム実況で著作権を侵害すると、民事責任や刑事責任を問われる可能性があります。

  • ゲーム実況により著作権を侵害した際の民事責任
  • ゲーム実況により著作権を侵害した際の刑事責任

ゲーム実況により著作権を侵害した際の民事責任

著作権侵害が認められた場合、著作権者から次の請求を受ける可能性があります

著作権法

請求

概要

第百十二条

侵害行為の差止請求

違法にアップロードされたコンテンツの削除や、著作権を侵害する行為の中止を命じられる

第百十四条

損害賠償請求

侵害によって生じた損害に対する賠償。損害賠償の金額は、著作権侵害によって生じた実際の損害や逸失利益にもとづいて算出される。

第百十五条

名誉回復措置の請求

著作権者の名誉が侵害された場合、謝罪広告の掲載などの名誉回復措置が求められる。

参照: e-Gov法令検索「著作権法

上記の法的リスクを避けるために、ゲーム実況をするときにはガイドラインを遵守することが重要です。

ゲーム実況により著作権を侵害した際の刑事責任

ゲーム実況による 著作権侵害が悪質な場合は、刑事責任に問われかねません

著作権法第百十九条で、著作隣接権を侵害する行為をした者は、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金に処し、またはこれを併科する旨が定められています。

さらに、著作権法第百二十四条では、法人の侵害行為があった場合は最大3億円の罰金が科されるとしています。

参照: e-Gov法令検索「著作権法

ゲーム実況が著作権侵害と判断された事例

ゲーム実況が著作権侵害と判断された事例として以下の2つを紹介します。

  • 事例1:ネタバレありの動画を無断で掲載した
  • 事例2:収益化の対象となっていないゲームタイトルを実況配信した

事例1:ネタバレありの動画を無断で掲載した

2023年5月、『STEINS;GATE 比翼恋理のだーりん』のストーリーをネタバレする動画をYouTubeに無断で投稿した男性が、著作権侵害の疑いで配信者としてはじめて逮捕されました。

仙台地方裁判所は、被告の行為が著作権者に金銭的な被害をもたらす可能性があると判断し、懲役2年の刑に執行猶予5年、罰金100万円を言い渡しました。

参照:ITmedia NEWS「“ネタバレ”ありゲーム実況で広告収入男性に懲役2年、執行猶予5年、罰金100万円の判決

事例2:収益化の対象となっていないゲームタイトルを実況配信した

YouTuberの “Angry Joe” Vargas氏は、任天堂のゲーム『マリオパーティ10』のプレイ映像を無断で配信したことにより、アメリカ任天堂から著作権侵害の申し立てを受け、映像が削除されました

任天堂の『マリオパーティ10』のプレイ映像をYouTubeに無断で公開したことが、任天堂の著作権ガイドラインに違反していると判断され削除された可能性が高いです。

任天堂が公開しているガイドラインに掲載されている、クリエイタープログラム対象タイトルに『マリオパーティ10』は含まれていませんでした。

参照:Game*Spark「任天堂アメリカが海外YouTuberに「著作権侵害」申し立て―怒りを露わにした批判映像も

ゲーム実況の著作権を守り、ガイドラインに沿った配信をしよう!

本記事では、ゲーム実況の著作権の扱いについて解説しました。

ゲーム実況を行う際に著作権侵害となるケースは、主に以下の4つです。

  1. 許可なく商用利用する
  2. ネタバレや特定シーンを配信する
  3. 内容を改変したり、不適切な内容をふくむコンテンツを配信する
  4. 発売前のコンテンツを公開する

ゲーム実況は著作権侵害に該当しうる行為です。そのため多くのゲーム会社は条件付きで配信を許可するガイドラインを設けています。

ゲーム実況コンテンツでのプロモーションをするときには、著作権を守って各ゲーム会社のガイドラインに従うことが不可欠です

ゲーム会社の多くは公式サイトや配信サイトにガイドラインを掲載しています。公式サイトやSteamなどのソフト配信プラットフォームを利用し、定期的に最新の情報をチェックすることが重要です。

また、ゲームタイトルごとにガイドラインが設けられている場合もあります。ガイドラインを守ったうえで、著作権侵害を避けて安全かつ合法的にゲーム実況をしましょう。

なお、ゲームのIPについてはこちらの記事で詳しく解説しています。

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