結婚式の音楽が著作権で訴えられた?安全なBGMの使い方や注意点を解説
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2024.10.24

結婚式の音楽が著作権で訴えられた?安全なBGMの使い方や注意点を解説

「結婚式で使うBGMの著作権について知りたい」「結婚式のBGMの使用方法が知りたい」

結婚式でのBGM使用について、こういった疑問はないでしょうか。過去に結婚式で著作権を侵害して訴えられたケースもあり、取り扱いに注意が必要です。

本記事では、結婚式でのBGMにおける著作権について、要点を詳しく解説しています。訴えられる可能性のあるケースや、安全な使用方法も紹介しています。

ご覧になることでBGMの安全な使用方法がわかるため、ぜひ参考にしてください。

INDEX
  1. 結婚式のBGMが著作権侵害で訴えられた事例
  2. 結婚式のBGMが著作権侵害で訴えられた?知っておきたい要点
  3. 結婚式の音楽において注意する著作権は上演権・演奏権と複製権
  4. 結婚式の音楽が著作権で訴えられる可能性があるケース
  5. 結婚式で必要な音楽の著作権の申請方法
  6. 結婚式のBGMが著作権で訴えられないための方法
  7. 結婚式で使用する音楽の著作権に関する注意点
  8. 結婚式では著作権で訴えられないよう慎重に!

結婚式のBGMが著作権侵害で訴えられた事例

結婚式において無断でBGMを使用したとして、映像制作会社がJASRAC(日本音楽著作権協会)に訴訟された事例があります。

訴訟されたのは、さいたま市の映像制作会社、株式会社ビデオソニックで、年間9,000件を超える映像を制作していた会社です。同社は、結婚披露宴や二次会で使用される演出映像に、市販の音楽を無許可で使用していました。

結婚式に利用する映像は商用利用にあたり、著作権料の支払い義務があります。しかし、株式会社ビデオソニックは、それを知っていながら請求に応じませんでした。

そのため、JASRACは、該当する音楽使用の禁止と損害賠償を求め提訴しました。訴訟は、株式会社ビデオソニックが、JASRACに一定の金銭を支払い和解しています。

参照:産経新聞『JASRAC、結婚式向け映像制作会社を初提訴 ビデオ楽曲に「著作権料の支払い義務」
参照:ブライダル産業新聞「JASRACと映像事業者の訴訟7月10日に和解成立

結婚式のBGMが著作権侵害で訴えられた?知っておきたい要点

結婚式のBGM使用においては、著作権と著作隣接権を侵害しないよう注意が必要です。

結婚式のBGMに深く関わりのある権利は以下のとおりです。

権利

権利者

管理

著作権

作者

JASRAC(日本音楽著作権協会)

著作隣接権

演奏者・レコード会社

・レコード会社
・音楽出版社
・日本レコード協会

著作権は、楽曲や歌詞の作者がもつ権利であり、JASRAC(日本音楽著作権協会)が管理しています。

著作隣接権は、著作物を伝える演奏者やレコード製作者がもつ権利です。著作隣接権は、レコード会社・音楽出版社や日本レコード協会が管理しています。

日本レコード協会は、国内のレコード会社が構成するレコードの著作権を管理する一般社団法人です。

著作権を侵害すると、以下の刑事罰や損害賠償請求を受ける可能性があります。

  • 10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金、もしくはその両方
  • 法人による著作権侵害は、3億円以下の罰金

著作物を個人的に楽しむことは、著作権の侵害にはなりません。しかし、結婚式での使用においては著作物が不特定多数に向けて使用されるため、商用利用扱いとなり、権利者の承諾が必要です。

参照:一般社団法人音楽特定利用促進機構「著作権と著作隣接権
参照:JASRAC「JASRACのしごと

著作権についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

結婚式の音楽において注意する著作権は上演権・演奏権と複製権

結婚式において注意が必要な著作権は、上演権・演奏権と複製権です。以下のとおり解説します。

  • 上演権・演奏権は著作者がもつ著作権
  • 複製権はレコード会社がもつ著作権

上演権・演奏権は著作権、複製権は著作隣接権にあたります。

上演権・演奏権は著作者がもつ著作権

上演権・演奏権は、許可なく公に上演・演奏することを禁止できる、著作者がもつ権利です。公とは、不特定多数の人前のことであり、結婚式は公に該当します。

上演とは、演劇や落語など、著作物を演ずることです。演奏とは、歌唱や楽器演奏のことで、たとえばカラオケや生バンド演奏などを指します。録音されたCDなどの音源を場内で再生することも演奏になるため、使用においては注意が必要です。

参照:文化庁「著作権解説集

複製権はレコード会社がもつ著作権

複製権はレコード会社や実演家、放送事業者などがもつ権利であり、著作隣接権の一つです。著作物を収録したレコードや映像にも著作権があり、それらを複製することは複製権の侵害となります。

式場内を撮影した際に流れていたBGMが入り込むなど、思わぬところで複製権を侵害してしまう場合があるため要注意です。

上演・演奏とは違い、楽曲を複製して使用する場合には、著作者とレコード会社それぞれの承諾が必要です。

複製権侵害の例については後述します。

参照:公益社団法人日本複製権センター「複製権とは
参照:一般社団法人日本レコード協会「結婚披露宴等での音源使用について

結婚式の音楽が著作権で訴えられる可能性があるケース

結婚式で使用した音楽が著作権で訴えられる可能性があるケースは、以下のとおりです。

  • 無許可のBGMを場内に流す
  • 複数の音楽を一つにまとめてBGMに使用する
  • 無許可のBGMが入ったムービーを使用する
  • 無許可のBGMが流れている式場内を撮影する

思わぬところで著作権侵害となるケースもあるため、十分な注意が必要です。

無許可のBGMを場内に流す

無許可で著作権のあるBGMを式場で流した場合、上演権・演奏権の侵害になります。不特定多数が参加する結婚式での利用は、商用利用にあたるためです。

結婚式では、新郎新婦の入退場やケーキ入刀、テーブルラウンドなどBGMを使用するシーンはいくつもあります。生バンドによる演奏や、カラオケを歌うなどの場面もあるでしょう。

そのため、使用するBGMについては、事前にブライダル事業者に確認し、必要に応じて使用許可を得ておく必要があります。

複数の音楽を一つにまとめてBGMに使用する

複数の音楽を、一つにまとめてBGMに使用すると複製権の侵害となります。まとめる際にダビングした音楽は複製と見なされるためです。

たとえばCDに収録されている音楽を、BGM用としてCD-RやUSBメモリなどに集め、許可なく式場で流すケースです。

ダビングしてまとめた音楽を個人で楽しむ分には著作権侵害にはなりません。しかし、式場内で流した場合、複製品を商用利用することになり、複製権の侵害となります。

使用する曲順にまとめておけば便利ですが、それを許可なく使用すると著作権侵害となるため注意が必要です。

無許可のBGMが入ったムービーを使用する

無許可のBGMが入ったムービーを使用した場合、複製権の侵害となります。結婚式では、以下のようにムービーを使用する場面がいくつかあります。

  • プロフィールムービー
  • オープニング・エンドロールムービー
  • 余興映像

上記のムービーに、著作権のある音楽が無許可で収録されている場合は、複製権の侵害となります。

対策として考えられるのは、無音で作成したムービーの上映に合わせてCDなどを流す方法です。この方法であれば、映像自体は無音であるため、複製権侵害にはなりません。

ただし、著作者から許可を得ている、あるいは自作曲であるなど著作権侵害にならない音楽を流す場合に限ります。また、複数楽曲をまとめてBGMにしないよう注意が必要です。

BGMが流れている式場内を無許可で撮影する

BGMが流れている式場内を無許可で撮影する場合には注意が必要です。ブライダル事業者がJASRACと契約している場合は、BGMを流すことは著作権侵害になりません。

しかし、式場内を撮影した映像にBGMが収録された場合、その映像は複製権の侵害の対象となりえます。

とくに、個人的に楽しむ目的以外で使用する場合には注意が必要です。たとえば撮影した映像を、SNSや動画投稿サイトに投稿すると著作権侵害となりえます。

撮影業者に式場内の撮影を依頼する際は、事前に当日流すBGMの使用について確認しておくことが重要です。

結婚式で必要な音楽の著作権の申請方法

結婚式で必要な音楽の著作権の申請方法は以下のとおりです。

  • 事前にブライダル事業者に申請する
  • 使用したい曲が未登録の場合はリクエストする

申請には時間がかかる場合もあるため、早めにブライダル事業者に確認しておきましょう。

事前にブライダル事業者に申請する

音楽使用の申請は、基本的にはブライダル事業者へ依頼すれば問題ありません。ブライダル事業者の多くは、JASRACやISUM(アイサム)と契約しているためです。

ISUMとは、ブライダルシーンでの著作権管理および権利料支払いの管理を代行する機構です。ブライダル事業者がISUMと契約していれば、ブライダル事業者に相談することで、ISUMに申請してもらえます。

ISUMは、著作権と著作隣接権の手続きを代行しているため、複製に関する手続きも任せられます

ただしJASRACやISUMと契約していない会場では、JASRACやレコード会社等に個人で直接申請しなければなりません。個人で直接申請する場合、使用料が高額になるおそれがあり、手間や期間もかかる可能性があります。

そのため、ブライダル事業者がJASRACやISUMと契約していることを、事前に確認しておくことが重要です。

使用したい曲が未登録の場合はリクエストする

使用したい音楽がISUMに未登録の場合はリクエスト可能です。

ただし、使用可能になるまで最短1ヶ月は必要であるうえ、必ずしも承認されるとは限りません。また、個人でJASRACやレコード会社・日本レコード協会に申請することは、かえって時間がかかるおそれがあります。

時間に余裕がなく、使用したい音楽の登録がなかった場合は、使用する音楽の再検討も必要です。

ISUMに登録されている音楽は音源ごとに管理されているため、特定の音源の複製はできない場合があります。たとえば、同じ音楽であってもCDによっては使用できないケースがあるのです。

そのため、複製して使用したい場合には、使いたい音源が使用可能かどうか、個別に確認したほうがよいでしょう。

結婚式のBGMが著作権で訴えられないための方法

JASRACやISUMに登録されている音楽を申請して使用する以外に、結婚式のBGMが著作権で訴えられないための方法は以下のとおりです。

  • ロイヤリティフリー音源をBGMに使用する
  • 著作権が切れている音楽をBGMに使用する
  • ブライダル事業者が制作したBGMを使用する

それぞれ解説します。

ロイヤリティフリー音源をBGMに使用する

ロイヤリティフリー音源をBGMに使用することは、著作権侵害にならない一つの方法です。

ロイヤリティフリー音源とは、著作権はあるものの、規定の範囲内で使用できる音源のことです。規約によっては、著作者の承諾なしに使用できる場合もあります。

ただし、使用の報告が必要な場合があるほか、商用利用は禁止されているなど使用条件はさまざまです。また、無料で使用できる音源もありますが、有料の場合もあります。

そのため、ロイヤリティフリーの音源を使用する場合においても、必ず事前に利用規約を確認し、必要な手続きをとることが重要です。

著作権が切れている音楽をBGMに使用する

著作権が切れている音楽を使用する方法もあります。著作権には保護期間があり、保護期間が切れた著作物をパブリックドメインと呼びます。

パブリックドメインは、社会全体の共有物となるため、使用しても著作権侵害にはなりません。クラシック音楽など古くからある音楽がパブリックドメインになっています。

著作権の保護期間は以下のとおりです。

権利の種類

保護期間

実名著作者の著作権

著作者の死後から70年

無名・団体名義・映画の著作権

公表後70年

実演・レコードの著作隣接権

実演・レコードの発行から70年

著作権と著作隣接権は、権利の発生時期が異なる場合があるため注意が必要です。たとえばカバーアルバムなど、ある音楽が発表された数十年後にその音楽を収録したCDが発売される場合があります。

この場合、楽曲の著作権は切れても、当該CD音源の著作権は切れていない場合があり、無断使用は著作権侵害となります。

参照:公益社団法人著作権情報センター「著作権は永久に保護されるの?
参照:公益社団法人著作権情報センター「著作隣接権とは?

パブリックドメインについてはこちらの記事で詳しく解説しています。

ブライダル事業者が制作したBGMを使用する

ブライダル事業者が制作したBGMを使う方法もあります。自社で作詞・作曲をして著作権をもつオリジナル音源を用意している場合があるのです。

ブライダル事業者が用意したオリジナル音源を使用すれば著作権侵害とならないため、事業者に確認してみることも一つの方法です。

結婚式で使用する音楽の著作権に関する注意点

結婚式で使用する音楽の著作権に関する注意点は、BGMには原盤のCDを使用することです。

CD-RやUSBメモリーなどにダビングされた音源を使用すると、複製権の侵害になります。また、ダウンロード購入した配信音楽の使用を拒否するブライダル事業者も多いです。

ISUMでは、ダウンロード音源も登録されており、本来は正規にダウンロード購入した音楽であれば、申請することで使用できます。しかし、用意されたBGMが適法にダウンロードされたものなのかどうかを、事業者が判断しにくい側面があるでしょう。

適法にダウンロードされた音楽であっても、私的利用以外の使用を規約で禁止している配信会社があるため、事業者は判断しにくいのです。

そのため、正規の原盤CDを用意したほうがスムーズでしょう。正規のCDであれば、中古品でも問題ありません。

結婚式では著作権で訴えられないよう慎重に!

結婚式のBGMは、著作権侵害とならないよう慎重に取り扱いましょう。式場内でのBGM使用は、商用使用となるためです。

式場内でBGMを流す場合やカラオケ、バンド演奏する場合とムービーを作成して上映する場合では、関わる権利がそれぞれ異なります。また、当日撮影したムービーにBGMが収録されてしまうなど、思いがけず著作権侵害となるおそれもあるため、注意が必要です。

使用許可が必要な場合はブライダル事業者へ事前に申請しておくことで、多くは使用できるでしょう。あるいはロイヤリティフリー音源の使用やパブリックドメインとなった楽曲を演奏に使う方法もあります。

BGMに使用する音楽や用途をブライダル事業者に事前に確認することで、トラブルを防げるでしょう。

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