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「好きなキャラクターの痛車を作りたいけど、著作権に侵害するのか」「SNSで見かけるアニメの痛車は、アニメの制作会社に許可を取っているのか」といった疑問を持つ方は多いのではないでしょうか。
基本的には、著作権者に無断で痛車を制作することは、著作権の侵害になります。
本記事では、痛車が著作権侵害になるケースとならないケースをそれぞれ紹介します。有名作品の許諾方法についても解説するので、痛車の制作を検討している方はぜひ参考にしてください。
漫画やアニメ、ゲームのキャラクターを使用した痛車を無断で制作する行為は、著作権法の第21条「複製権」の侵害にあたります。
痛車を制作する工程は、以下の3つに分けられます。
なかでも、ステッカーの作成が複製権の侵害にあたります。第三者の著作物を無断で複製することは許可されていないためです。
著作権の侵害は、権利者が告訴することで起訴される親告罪で、民事上の責任と刑事上の責任が発生します。それぞれの罰則は以下のとおりです。
民事上の罰則 | 刑事上の罰則 |
---|---|
・侵害行為の差止請求 | 10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金 |
著作権については、以下の記事でより詳しく解説しています。
参照: e-Gov法令検索「著作権法」
参照:経済産業省特許庁「著作権侵害への救済手続」
痛車が著作権侵害となる主なケースは、以下の3つです。
著作権者に無断で、キャラクターを使用した痛車を制作することは、著作権侵害にあたります。原則として、キャラクターのイラストには著作権が存在します。そのため、著作権者に無断でキャラクターを使用することは認められていません。
キャラクターのステッカーを貼って公道を走行することは、第三者の目に触れる行為です。私的利用の範囲を超えるため、キャラクターを使用する際には、著作権者の許諾が必要です。
しかし、街で見かける痛車のすべてが許諾を得ているわけではないでしょう。著作権者が黙認しているか、数が多すぎて取り締まりきれていないと考えられます。
著作権者に無断で、痛車のステッカー作成を業者に発注した場合も、同様に著作権の侵害と見なされます。
著作権の問題に業者は関与しておらず、利用者側の責任としている場合が多いです。
たとえば、痛車制作業者の「痛車ステッカー製作専門店」の公式サイトには、以下のように記載されています。
“画像の使用許可は全てお客様にご自身でご確認頂いております。”
引用:痛車ステッカー製作専門店「よくあるご質問」
業者に依頼する場合も、著作権者の許諾を得る必要があります。著作権者に許諾を取ったうえで、ステッカーの作成や自動車への施工を依頼しましょう。
著作権者によっては、痛車制作におけるキャラクターの使用を認めていても、営利目的での使用は禁止としている場合が多いです。
許諾を得ている場合を除き、第三者に販売し利益を得る目的で痛車を制作すると、著作権の侵害となります。
人気アニメ『けいおん!』の画像を無断で複製し、ステッカーとして販売して著作権法違反の疑いで逮捕されたケースもあります。キャラクターの使用が認められていても、非営利目的での使用を前提にしている場合が多いため、使用用途には注意しましょう。
参照:日本経済新聞「「けいおん!」画像を無断複製 「痛車」に貼り付け 著作権法違反容疑で3人逮捕」
痛車が著作権侵害にならないケースには、以下の6つが挙げられます。
以上のいずれかに該当する場合、著作権を侵害することなく痛車を制作できます。
制作会社や作者など、著作権者がガイドラインで明示的に使用許可を出している場合は、痛車制作にキャラクターを使用しても問題ありません。
たとえば以下のような規約、条件がガイドラインに記載されていないか確認してみてください。
もちろん作品によってガイドラインの内容は異なります。ガイドライン違反にならないように、しっかり目を通しておきましょう。
ガイドライン例:SAGA PLANETS OFFICIAL HOMEPAGE「サポート」
ガイドライン例:BanG Dream!(バンドリ!)公式サイト「「BanG Dream!(バンドリ!)」著作物利用に関するガイドライン」
作品によっては、ガイドラインを公開していない場合があります。その場合も、著作権者から直接許諾を得られれば、そのキャラクターを使用した痛車を制作可能です。
直接許諾を得る主な方法は、出版社への問い合わせや、作者のSNSアカウントでコンタクトを取ることです。連絡が取れない場合には、出版イベントやコミックマーケットのような即売会で直接交渉する選択肢もあります。
許諾を得る際には、使用する目的や使用範囲を必ず伝えましょう。トラブルを避けるために、キャラクターの使用に関して、書面で記録を残すことも大切です。
SNSやメールでやりとりした場合には、内容だけなく日付や時間がわかるようにスクリーンショットを残すといった方法をとりましょう。
著作権者や版元と契約し、イラストの使用許諾を受けている業者に依頼した場合、著作権の侵害にはなりません。
版元と契約している専門業者の場合は、イラストのデータ提供を受けていることも多いです。使用可能な素材があらかじめ用意されているのであれば、自ら素材を用意する必要もありません。
参照:カーラッピングなら のらいも工房「公式許諾」
著作権者から許諾を得られなくても、私的利用の範囲であれば、キャラクターを使用した痛車を制作しても著作権の侵害にはなりません。
著作権法第30条において、私的利用の範囲は以下のように記載されています。
“個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること”
引用: e-Gov法令検索「著作権法」
つまり自身や家族、ごく少数の友人などの限られた範囲で楽しむ場合、著作権侵害にあたる行為にはなりません。一方で、公道を走る場合やSNSを通じてインターネット上に公開する場合は、不特定多数の人の目に触れるため、許諾が必要になります。
自作もしくは制作を依頼したオリジナルキャラクターを使用すれば、著作権を気にする必要はありません。キャラクターを自作した場合、そのキャラクターの著作権は制作者が所有します。
ただし、それが明らかに既存のキャラクターを真似たものだと見なされる場合は、「二次創作」と呼ばれ、オリジナルの著作物と認められません。たとえ制作者が「オリジナルのキャラクター」と主張しても、客観的に類似性や依拠性があると判断されれば、著作権侵害に該当します。
自作は難しいものの著作権を気にせずに痛車を作りたいなら、オリジナルキャラクターの制作を依頼する方法もあります。
自動車に貼るステッカーを前提として制作を依頼すれば、著作権侵害になりません。原則、イラストを制作した人が著作権利者になりますが、著作権を譲渡する契約を結べばオリジナルキャラクターの著作権を所有できます。
著作権侵害にならない方法として、著作権フリーやロイヤリティフリーの素材を使用する選択肢もあります。
著作権フリーとは、著作権の保護対象外の状態を意味し、許諾不要で使用できる素材のことです。「パブリックドメイン」とも呼ばれます。
一方、ロイヤリティフリーとは著作権があるものの、利用規約の範囲内であれば使用できる状態を指します。商用利用はNG、公序良俗にそぐわないものはNGといった規約が設けられているケースが多いです。
パブリックドメインについては、以下の記事で詳しく解説しています。
痛車の著作権に関するよくある質問は、以下の2つです。
「ウマ娘」シリーズやブルーアーカイブ(通称「ブルアカ」)の痛車は、ガイドラインの内容を遵守していれば、著作権侵害にはあたりません。ガールズ&パンツァー(通称「ガルパン」)の場合は、許諾がないと著作権侵害になるため、直接許諾を取る必要があります。
公式サイトのガイドラインをもとに、各作品の痛車が著作権侵害になるかどうかを以下の表にまとめました。
作品・事務所名 | 痛車が著作権侵害になるか | ガイドライン |
---|---|---|
ウマ娘 プリティーダービー | 二次創作の場合、ガイドラインを遵守していれば問題ない | |
ブルーアーカイブ | 二次創作の場合、非営利目的かつガイドラインを遵守していれば問題ない | |
ガールズ&パンツァー | 無許諾であれば著作権侵害となる | https://girls-und-panzer.jp |
ラブライブ! | 無許諾であれば著作権侵害となる | |
ホロライブ | 二次創作の場合、ガイドラインを遵守していれば問題ない |
以上のとおり、制作会社によってガイドラインの内容は異なります。痛車を制作、依頼する前に、必ずガイドラインの内容を確認してください。
また上記以外に使用したいキャラクターがいる場合は、まず「〇〇(作品名) 著作権」などのキーワードで検索してみましょう。ガイドラインが確認できない場合、公式サイトやSNSの公式アカウントなどに問い合わせてください。
参照:ウマ娘 プリティーダービー 公式ポータルサイト「二次創作ガイドライン」
参照:ブルーアーカイブ -Blue Archive-公式サイト「二次創作・ゲーム実況配信及び動画投稿に関するガイドライン」
参照:ガールズ&パンツァー(GIRLS und PANZER)公式サイト「「ガールズ&パンツァー」公式からのお願い」
参照:ラブライブ!サンシャイン!! Official Web Site「NEWS」
参照:ホロライブプロダクション「二次創作ガイドライン」
アイドルや芸能人の写真を無断で使用した痛車を制作することも、著作権や肖像権の侵害にあたります。
写真を使用する際には、キャラクターの使用と同様、著作権や肖像権の有権者に許諾を取りましょう。許諾を得る際には、利用する写真や目的を伝えることが大切です。
芸能人の写真の使用に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。
基本的に、著作権者に許可を取っていないかぎり、キャラクターを使用した痛車を制作することは著作権侵害にあたります。
お気に入りのキャラクターの痛車を作る際には、制作会社のガイドラインにおいて許可されているかどうかを確認しましょう。ガイドラインが確認できない場合には、著作権者に直接許諾を得る必要があります。
痛車の専門業者に依頼した場合も、その会社が許諾を取ってくれるとは限らないため、注意してください。万が一の場合には自己責任となるため、痛車を制作する前にガイドラインの有無やガイドラインの内容をしっかり確認しましょう。
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