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マーケティング関連の仕事をするなかで、BtoCマーケティングという言葉は聞いたことがあるものの、詳しく知らない方もいるでしょう。
BtoCマーケティングとは、一般消費者を対象に商品やサービスを提供するマーケティング手法のことです。
本記事では、BtoCマーケティングの概要や手法について解説します。BtoCマーケティングを理解し、自社のマーケティングに役立てたいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
BtoC(Business to Consumer)マーケティングとは、企業が一般消費者を対象として商品・サービスを購入してもらうために実施するマーケティング手法のことです。
BtoCマーケティングの特徴として、ターゲットが個人の消費者であることや、タッチポイントが多様であることが挙げられます。
一般消費者は、合理性だけでなく気持ちに寄り添ってくれることを重要視する傾向にあります。ユーザーの悩みや疑問、興味・関心にアプローチできるコンテンツを発信することも大切です。
なお、マーケティング戦略についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
BtoCマーケティングとBtoBマーケティングは、ターゲットや実施方法が異なります。主な違いは、以下のとおりです。
項目 | BtoC | BtoB |
---|---|---|
ターゲット | 一般消費者 | 企業・組織 |
購買までの時間 | 短い | 長い |
価格帯 | 低額 | 高額 |
購入基準 | 感情・満足度・利便性 | スペック・価値提供・企業利益 |
意思決定 | 個人 | 複数人 |
チャネル | 広告・SNS・インフルエンサー | 広告・展示会・業界専門誌 |
BtoCマーケティングのターゲットは一般消費者のため、BtoBと比べて単価が低い傾向にあります。購入の意思決定は本人が行うケースが多く、感情に左右されやすいのが特徴です。
一方、BtoBマーケティングは企業がターゲットとなるため、購買の意思決定には複数人が関わり、検討から購買まで時間がかかります。企業の利益が優先されるため、スペック、サービス内容などを重視した合理的な決定がされやすい傾向があります。
BtoCマーケティングを行うメリットとして、以下の3つが挙げられます。
3つの観点から、メリットを詳しく解説します。
BtoCマーケティングのターゲットは幅広い消費者のため、市場規模が大きい傾向にあります。
ITコンサルティングを行う株式会社アイ・ティ・アールが発行する市場調査レポートによると、2027年度までにBtoC向け市場の伸びがBtoB市場を上回ると予測されています。
扱う商材によるものの、多くの消費者ニーズを満たすことにより、BtoC市場で大きな利益が見込めるでしょう。
参照:株式会社アイ・ティ・アール「ITR Market View:SFA/MA市場2024」
一般消費者がターゲットのため、感情や感性に訴えかけるようなマーケティングを行うことでタイムラグなく売上につなげやすいです。
気に入った商品やサービスはすぐ購入にいたる傾向が強く、顧客の購買スピードが速いため、最適なプロモーションをするとすぐ成果につながるでしょう。
消費者行動や心理をしっかり分析し、消費者に響くストーリーや体験を提供すればロイヤリティの向上も期待できます。
なお、マーケティングにおけるペルソナについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
BtoCマーケティングは、消費者の感情へアプローチする必要があるため、SNSを活用したSNSマーケティングと好相性です。
企業が相手になるBtoBよりも単価が低い傾向にあり、利益向上のためにはより多くの顧客を獲得することが必要となります。
たとえば、X・Instagramなどの企業アカウントを運用して企業やブランドのファンを作り、リピート購入してくれる顧客を増やすのも一つの手です。多数のタッチポイントを用意して露出を増やすことで、消費者がより商品を発見しやすくなります。
潜在層にもアピールできるように多くのSNSを活用し、商品を魅力的に訴求することが大切です。
BtoCマーケティングを行うデメリットとして、以下の3つが挙げられます。
3つのデメリットについて、詳しく解説します。
一般消費者を対象としているBtoCマーケティングは市場規模が大きい分、競争が激しいです。
たとえば、化粧品産業には多数のメーカーがあり、消費者はその中から自分に適した商品を選択する必要があります。自社の商品やサービスを選んでもらうために、競合他社との差別化を図るマーケティング施策が不可欠です。
BtoBと比べると、LTV(Life Time Value)が低いこともデメリットの一つといえます。
LTVとは、顧客生涯価値を意味する言葉です。ある顧客が自社商品、サービスの利用を開始してから終了するまでにもたらす価値を示す指標のことをいいます。BtoBよりもBtoCのほうがスイッチングコスト(乗り換えにかかる負担)が低く、なんらかの要因で簡単に離れてしまう場合もあります。
一度顧客を獲得できてもすぐ他社に乗り換えられてしまうと、安定した利益につながりません。新規からリピーター獲得、ロイヤルカスタマー育成まで、幅広くおさえることが重要といえるでしょう。
スペックの似た商材を比較したとき価格を判断基準とする消費者は多く、価格競争が激しくなりやすい傾向があります。価格によって他社に乗り換えられるケースも多く、重要な課題になる場合があるでしょう。
資金やリソースが限られた中小企業の場合、価格競争では大企業に勝てない可能性が高いでしょう。価格の安さだけにとらわれない、自社ブランドの魅力を理解したファンを増やすために、ブランディングを図ることが必要です。
なお、ブランディング戦略についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
BtoCマーケティングの主な手法は、以下の5つです。
5つの手法について、詳しく紹介します。
なお、マーケティングの手法についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
SNSマーケティングとは、SNSを活用して行うデジタルマーケティング手法のことです。Instagram・X・FacebookなどのSNSによって顧客とコミュニケーションを図り、自社商品の認知拡大やブランディング、ファン獲得などを目指します。
総務省の調査によると、スマートフォンの世帯の保有割合は9割を超えています。SNSは全体で8割以上、6〜12歳を除いて全年代で半数以上が利用している状況です。
つまりSNSは顕在層から潜在層、既存顧客まであらゆるターゲットにリーチでき、企業と顧客、双方がコミュニケーションを取れるのが強みといえます。また、ユーザーによるレビューやSNSへの投稿などのUGC(User Generated Contents)の拡散ができるのも利点です。
代表的な手法として、以下のものがあります。
手法 | 内容 |
---|---|
SNSアカウント運用 | 企業アカウントのSNSを開設し情報を発信 |
SNS広告 | SNSプラットフォームに広告を配信 |
SNSキャンペーン | SNSの拡散力を利用したキャンペーンを実施 |
ソーシャルリスニング | SNSで収集した情報を分析し、ビジネス戦略に反映 |
参照:総務省「令和5年通信利用動向調査の結果」
コンテンツマーケティングとは、企業がユーザーに対して価値のある情報を提供し、見込み顧客を育成して購入へつなげる手法のことです。
一般的には、ブログページやコラムページをメインとし、動画など複数コンテンツを活用します。コンテンツを提供するプラットフォームの種類は以下のとおりです。
これらを活用して顧客の購買検討プロセスの段階ごとに発信し、問い合わせや売上向上などにつなげます。
なお、マーケティングファネルについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
Web広告とは、インターネット上に配信する広告のことです。詳細なターゲティング機能によって、ユーザーにピンポイントで情報を届けられるのが特徴です。
テレビや新聞などオフラインの広告よりもコストが低く、予算に応じて配信方法を選べます。
クリック率やCV(コンバージョン)率を計測でき、効果測定が簡単にできるのもメリットです。主に以下のようなWeb広告があります。
種類 | 内容 |
---|---|
ディスプレイ広告 | Webサイトの配信枠にバナーなどを表示 |
リスティング広告 | 検索エンジンの検索結果画面に掲載 |
動画広告 | 広告動画を活用したWeb広告 |
潜在層にアピールできるディスプレイ広告は、認知拡大やブランディングなどに効果的です。ユーザーが興味のある分野の広告が表示されるリスティング広告は、顕在層にリーチできるため、クリック率の向上が見込めます。
なお、バナー広告についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
インフルエンサーマーケティングとは、特定分野に強い影響力を持つインフルエンサーを活用したマーケティングのことです。
ターゲット層に人気のYouTuberやTikTokerを起用して、ユーザー目線でアプローチできる点が強みといえます。インフルエンサーが抱える多くのフォロワーに向けて、自社商品やサービスをPRしてもらうことで、認知拡大やファン化につなげます。
通常は大手メディアへ広告を掲載するよりも、大幅なコストダウンを見込めるのもメリットです。
IPマーケティングは、タレントなどのIPを活用したマーケティング手法です。IPとは、Intellectual Propertyの略で、「知的財産」のことです。
広告指標の改善につなげやすいのが、IPマーケティングを活用するメリットです。有名IPを広告に起用することでユーザーの興味関心を引きやすくなります。
IPのファン層へもリーチできるため、効率的に認知獲得が狙えるでしょう。
IPマーケティングには、主に2つの種類があります。
種類 | 内容 |
---|---|
タレントIPの活用 | 芸能人やアスリートなどのタレントIPを活用する手法 |
キャラクターIPの活用 | ゲームやアニメ・漫画などのキャラクターのIPを活用する手法 |
従来IPを起用するには高額なコストがかかるため、これまで予算を抑えたい中小企業などは、IPマーケティングではなく、他のマーケティング手法を優先する傾向がありました。しかし現在はタレントサブスクなど、コストを抑えた起用の手法も増えています。
なお、IPマーケティング・タレントサブスク・芸能人のブランディングについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
BtoCマーケティングの成功事例を3つ紹介します。
株式会社クラシコムが運営する「北欧、暮らしの道具店」は、2007年にビンテージの北欧食器の専門ECサイトとして始まりました。
現在では、世界中のセレクトアイテムやオリジナルアイテムを取り扱っています。「自分の生き方を自分らしいと感じ、満足できること」=「フィットする暮らし」との考えのもと、独自の世界観を持つコンテンツを提供しています。
引用:株式会社クラシコムYouTubeチャンネル「北欧、暮らしの道具店」
Copyright 2024(C) Kurashicom. All Rights Reserved.
ECサイト内で商品を販売するだけでなく、Web記事やYouTubeチャンネルで配信する動画コンテンツの制作など、幅広く手がけているのも特徴です。YouTubeチャンネル登録者数は61万人以上(2024年11月時点)におよび、オリジナル短編ドラマは劇場映画にもなりました。
動画が注目を浴びることによってECサイトへの流入も増加し、話題性の高いコンテンツを立て続けに発信することに成功しています。
UNIQLOは、「LifeWear」をコンセプトに快適なカジュアルファッションを提供するブランドです。
引用:株式会社ユニクロ「ユニクロ公式オンラインストア」
Copyright © UNIQLO Co., Ltd. All rights reserved.
企画・計画・生産・物流・販売までの過程を一貫して行うビジネスモデルで、オリジナル商品を次々開発しています。2024年8月末時点で、国内・海外合わせて2,495店舗展開しています。
オープン当時から話題だったフリースの売上は、2000年には2,600万枚の販売を記録しました。従来のCMとは異なる独特の演出が消費者に強い印象を残し、広告クリエイティブの質が新ブランドの人気を後押しした事例といえるでしょう。
2003年に発売されたヒートテックは、発売から4年後には約2,000万枚を販売するメガヒット商品となりました。
季節ごとにヒートテックやエアリズムなどのコア商品を対象にキャンペーンを実施し、期間中はテレビやWebCMで広く告知しています。ユニクロアプリやEメール、SNSなどを通して「期間限定価格」で提供することをアピールし、顧客獲得につなげています。
参照:株式会社 ファーストリテイリング「グループ店舗一覧」
参照:株式会社ユニクロ「「ヒートテック」の舞台裏~「考える人」2009年冬号~」
参照:株式会社 ファーストリテイリング「ユニクロのビジネスモデル」
SUUMOは、株式会社リクルートが運営する不動産・住宅の総合サイトです。
オウンドメディア内には物件情報の他、マーケットトレンドや役立つ記事を掲載しており、スマートフォン・PCサイト・アプリを利用して物件探しができます。サイトの使いやすさや物件数の充実度などにおいて、2023年のオリコン顧客満足度ランキング・賃貸情報サイトで1位を獲得しました。
引用:株式会社リクルートYouTubeチャンネル「SUUMO/スーモ」
(C)Recruit.,Ltd.
SUUMOは、サイトからの問い合わせ増加を目的としたディスプレイ広告やリスティング広告など、積極的なオンラインマーケティングを実施しています。
コンバージョンを意識した動画広告も配信し、結婚や引っ越しなどでSUUMOのサービスに興味を持つ可能性が高い潜在層にアプローチしました。その結果、動画広告を見たユーザーの検索率や物件への問い合わせ率が大幅にアップしました。
参照: オリコン株式会社「オリコン顧客満足度ランキング 賃貸情報サイト」
参照:Think with Google「動画広告からコンバージョンへの影響を可視化ーSUUMO(スーモ)の物件問い合わせ率上昇から」
BtoCマーケティングは、企業が一般消費者に商品やサービスを購入してもらうためのマーケティング活動です。
企業を対象とするBtoBと比べて購買フローが短く、ターゲットの感情や感性に訴えかけるようなマーケティングが求められます。自社に合う施策を推進し、より多くの顧客を獲得することが必要です。
成功事例もふまえてBtoCマーケティングを理解し、売上アップに役立てましょう。
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