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「いらすとやの素材は著作権フリー?」「いらすとやの著作権を侵害しない範囲はどこまで?」といった疑問をお持ちではありませんか。
結論からいうと、いらすとやの素材には著作権があります。著作権を侵害しないためにも、使用する際は利用規約に記載された許諾範囲を守ることが大切です。
本記事では、いらすとやの著作権の許諾範囲や著作権を侵害したときのリスクなどについて解説します。いらすとやの著作権を侵害しないためにも、ぜひ参考にしてください。
いらすとやの素材には著作権があります。素材を制作した、みふねたかし氏が著作権を保有しており、権利を放棄していないためです。
著作権があるにもかかわらず、いらすとやの素材が多く利用されているのは、みふねたかし氏が条件つきで利用を許諾しているのが理由です。
みふねたかし氏はいらすとやの素材について、公式サイトの利用規約で許諾範囲を明記しています。著作権者の許諾を得ていれば、条件の範囲内での利用は著作権の侵害にあたりません。
そのため、いらすとやの利用規約に従っていれば、著作権を侵害せずに素材が利用できます。
許諾の範囲内であれば、無償で自由に編集や加工が可能です。色やサイズの変更なども可能なので、使い勝手がよく多くのサイトや制作物に利用されているのでしょう。
ただし編集や加工をした場合も、著作権が利用者に譲渡されるわけではありません。
参照:いらすとや公式「ご利用について」
なお、著作権についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
いらすとやの著作権を侵害しない範囲に関して、規約をもとに以下5つの観点で解説します。
参照:いらすとや公式「ご利用について」
20点以内、なおかつイラスト自体をコンテンツとせず、デザインの一部として利用するのであれば、SNSやホームページ、パンフレットなどの媒体を問わず、商用利用であっても、著作権の侵害にはあたりません。
21点以上の素材を利用する場合は有償対応となるため、いらすとやの公式サイトから問い合わせてください。この際、21点目以降の素材だけでなく、使用しているすべての素材が有償になる点を押さえておきましょう。
同じ素材を複数使う場合は1点としてカウントされます。ただし同じキャラクターでも、表情など細かい部分が違っていれば別素材として数える必要があるので、注意してください。
また、提供されているものよりも高解像度の素材の用意を希望する場合も有償対応となります。
参照:いらすとや公式「ご利用について」
Canva内でいらすとやの素材を編集して作成したデザインは、商用目的でも点数制限なく素材を利用できます。いらすとやがCanvaと提携を結んでいるためです。
Canvaとは、オンラインで使える無料のグラフィックデザインツールです。ポスターやプレゼンテーション、バナー、動画など、用途に合ったデザインテンプレートが豊富に用意されており、本格的なデザインが簡単に作成できます。
Canva内に使用できる素材画像が複数登録されており、いらすとやの画像もその内の1つです。クリエイターページを使えば、いらすとやの素材を簡単に検索できます。
Canva上で素材のサイズや色、透明度なども簡単に変更できるので、いらすとやの素材を加工・編集しやすいです。
参照:いらすとや公式「ご利用について」
参照:Canva「Canvaいらすとや」
学校やその他教育機関での授業においては、素材の点数制限を気にせず利用できます。著作権法35条により、教育機関では著作物の無許諾・無償の利用が認められているためです。
たとえば、授業で使用するプリントやプレゼンテーション用のスライドをわかりやすいものにするために、いらすとやの素材を使う際は、何点使用しても著作権侵害にあたりません。
著作権法で無許諾・無償の利用が認められている場合は、利用規約にかかわらず、著作権侵害にあたらないことを知っておくとよいでしょう。
ただし利用にあたっては、著作権者の利益を不当に害することがないように注意する必要があります。
なお民間企業での授業や研修は商用利用扱いとなるため、無償の範囲は20点の利用までです。
参照:いらすとや公式「よくある質問」
参照: e-Gov法令検索「著作権法」
いらすとやのイメージダウンにつながる利用は著作権侵害にあたります。利用規約では、以下のようなケースが紹介されています。
“
公序良俗に反する目的での利用
素材のイメージを損なってしまう攻撃的・差別的・性的および過激な利用
反社会的勢力および違法行為に関わる利用
”
引用:いらすとや公式「ご利用について」
たとえば特定の人物の誹謗中傷などを伴う主張にいらすとやの素材を使うことは、イメージダウンにつながる利用にあたると考えられます。SNS上などで愚痴や他者を批判する目的などでの使用は避けましょう。
また、選挙運動など政治活動への利用やアダルトサイトへの掲載についてもNGとされています。
いらすとやの素材を、そのまま二次配布・販売することは著作権侵害にあたります。利用規約において二次配布が認められていないためです。
具体例として、以下のような場合は販売ができません。
たとえばかるたやトランプ、コレクション用ステッカーのような、イラストがデザインのメインとなる商品の販売はNGです。
参照:いらすとや公式「ご利用について」
いらすとやの著作権を侵害した場合のリスクは以下の3点です。
それぞれのリスクについて、詳しく見ていきましょう。
いらすとやの著作権を侵害すると、自身の社会的信用を損ねるリスクがあります。
著作権の侵害は、著作権法で規定された違法行為にあたります。コンプライアンス遵守が強く求められる現代において、違法行為を犯せば信用低下は避けられません。
とくに、いらすとやの素材はインターネット上で広く利用されており、一般の消費者からの認知度も高いといえます。そのため、いらすとやの著作権を侵害すれば世間の注目を集め、SNSなどで拡散される危険性が高いです。
ネットでひとたび炎上すれば、その履歴を払拭するのは難しいといえます。自身や自社の信用を損ねかねないので、規約の範囲内で正しく利用しましょう。
いらすとやの著作権を侵害すると、著作権者から民事上の請求を受けるリスクがあります。具体的には、以下の4点の請求が挙げられます。
請求内容 | 概要 |
---|---|
差止請求 | 権利を侵害されるおそれがある場合に、その行為を止めるように求めること |
損害賠償請求 | 契約違反や不法行為により生じた損害の補填を求めること |
不当利得返還請求 | 法律上の正当な理由がないにもかかわらず、利益を得て他人に損失をおよぼした人に対し、不正に取得した利益を返還するよう求めること |
名誉回復措置請求 | 著作権者の著作権が侵害された場合、侵害した者に対し名誉・声望を回復するための措置を求めること |
差止請求を受ければ、いらすとやを利用したデザインが使用できなくなります。利用頻度の多い制作物だった場合には、大きな痛手を被ることになるでしょう。名誉回復措置請求を受ければ、謝罪広告の掲載などの対応が必要です。
また悪質であれば、利益の返還や損害賠償も求められる場合があります。著作権侵害による損害額は、著作権法第114条にて推定規定が設けられているため参考にしてください。
本来であれば得られた著作権者の利益、著作権を侵害した者がその行為で得た利益などにもとづいて、損害賠償額の主張が決まります。
参照:e-Gov法令検索「著作権法」
参照:e-Gov法令検索「民法」
いらすとやの著作権を侵害してしまった場合、以下の刑事罰を受けるリスクがあります。
著作権侵害は親告罪のため、著作権者側からの告訴があれば刑事罰を受けることになります。
また著作者であるみふねたかし氏の名誉を傷つけるような利用をすれば、著作者人格権も侵害しかねません。著作者人格権の侵害が認められた場合は、5年以下の懲役または500万円以下の罰金が科されます。
参照: e-Gov 法令検索「著作権法」
参照:公益社団法人著作権情報センター「著作物を無断で使うと?」
いらすとやの素材を引用する際、著作権表記は不要です。そのため、リンクやクレジットを表記せずに利用しても問題ありません。
他の素材サイトのイラストを用いる際はクレジットの記載が必須な場合もあるため、デザインに制約が出てしまうこともあります。クレジット記載せずに利用できるのは、いらすとやの大きな特長といえるでしょう。
なおいらすとやは、クレジットに「いらすとや」と表示することを推奨しています。
参照:いらすとや公式「よくあるご質問」
いらすとやの素材はYouTubeでも他の媒体と同様に利用できます。
商用利用も可能ですが、他媒体と同様に21点以上の素材を利用したときには有償となります。くわえて、もちろんイラストそのものをコンテンツとして使用するのは認められていません。動画本編だけでなく、サムネイルに利用した素材もカウントされるため、注意しましょう。
公共機関やNPO団体運営の場合や個人で収益化しない場合は、商用利用にならないため、21点以上利用しても問題はありません。
またVTuberとしての利用など、チャンネルの主要キャラクターの立ち位置での利用も禁止されています。(nizima LIVEでサンプルモデルとして提供されるモデルのみ、そうとは限りません)
なおCanva上で制作した動画であれば、いらすとやの素材を21点以上掲載していても、YouTubeへのアップロードが可能です。先述のとおり、Canvaといらすとやが提携しているためです。
参照:いらすとや公式「よくあるご質問」
AIいらすとやを利用して他者の著作権を侵害する画像が生成された場合、その画像の利用は避ける必要があります。
「AIいらすとや」とは、いらすとや風のイラストをAIで自動生成するサービスです。AI素材サイト「AI素材.com」を運営しているAI Picasso株式会社といらすとやが提携してリリースされました。そのため、いらすとやの著作権を侵害する心配はありませんが、他者の著作物に似たイラストが生成される可能性はあります。
他者の著作権を侵害しないためには、参考画像を使って生成する際にプロンプトストレングスを高く設定しましょう。プロンプトストレングスとは、どれだけプロンプトに従って画像を生成するかという度合いのことで、低ければそれだけ参考画像に似やすくなります。
また、プロンプトに著作物に関連する指示を入れなければ、著作権侵害リスクを抑えやすいです。
参照:AIいらすとや「よくあるご質問」
なお、AIイラストの著作権についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
いらすとやの素材は自由に利用できるイメージがあるかもしれませんが、著作権で保護されています。著作権を侵害しないためにも、素材を利用する際には利用規約を守ることが大切です。
利用規約のポイントには、以下の5点があります。
なかでも素材利用点数の制限は、誤って超えてしまいやすいルールです。21点以上使用して商用利用すると、利用規約に違反してしまいます。
民事・刑事での責任問題となるだけでなく、炎上騒動に発展する可能性もあるため、著作権を侵害しないように注意しながら利用してください。
IPにまつわる知識・ニュースを随時発信しています。