IPにまつわる知識・ニュースを随時発信しています。
「ポケモンの海外人気の状況を知りたい」「ポケモンの海外人気の理由やとくに人気のキャラクターを知りたい」と考える方も多いのではないでしょうか。
ポケットモンスター(ポケモン)は海外人気の高いコンテンツですが、その秘訣には地域に合わせたローカライズ戦略が挙げられます。
本記事ではポケモンの海外人気の実情や人気のキャラクター、特徴的な取り組みを地域ごとに紹介します。人気の要因を把握して、自社の海外IPビジネスに活かしてください。
ポケモンは日本だけでなく、世界的に人気のある作品です。
TitleMax社が発表したIP収益TOP25ランキングによると、ミッキーマウスやスター・ウォーズなどを抑えて1位を獲得しています。同社の試算によると、ポケモンIPによる総収益は921億ドル(約14兆4億円:2024年11月14日時点のドル円レートで計算)です。
ポケモンの主力事業の実績をまとめると以下のとおりで、海外でも着実に拡大していることがうかがえます。
事業 | 実績 |
---|---|
ビデオゲーム | ・9言語に翻訳 |
カードゲーム | ・15言語に翻訳 |
テレビアニメ | ・192の国と地域で放送 |
株式会社ポケモンの24年2月期決算によると、売上高が27%、営業利益が33%増加しており、今後も人気の高まりが期待されています。
参照:TitleMax「The 25 Highest-Grossing Media Franchises of All Time」
参照:株式会社ポケモン「数字でみるポケモン」
参照:gamebiz「ポケモン、2024年2月期(第26期)決算は売上高27%増の2975億円、営業利益33%増の886億円と大幅増収増益」
ポケモンが海外でも人気になった理由として挙げられるのは、次の5つです。
以下にて、それぞれの理由を詳しく説明します。
ポケモンの海外人気の理由に、従来のRPGとは異なるゲーム形式が受け入れられたことが挙げられます。
ポケモンのゲームの基本形式は、モンスターを集めて育て、プレイヤー同士で戦うことです。
従来のRPGは戦闘のみであるものが多かったものの、収集要素が加わったことで戦闘を好まない層からも受け入れられました。ポケモンを育てる過程で愛着が沸き、冒険や戦闘シーンの楽しみもより深まります。
また、さまざまな技や特性のポケモンのパーティーを組んで戦わせるため、大人もハマる戦略的な面白さも魅力の一つです。
ゲームの売り上げを伸ばすために多角的なメディアミックスをしてきたことも、ポケモンの海外人気の要因です。
ポケモンのコンテンツは、ゲームソフト、カードゲーム、テレビアニメ、グッズ、映画など多岐に渡ります。メディアの展開によって裾野が広がり、ユーザーがコンテンツに触れる機会が増えることにつながりました。
地域に合わせた展開方法を取ったことも特徴です。たとえば、日本ではゲームをリリースしてから他メディアに展開していますが、海外では先に認知度を上げることを目的にアニメ放送からスタートし、世界観を広めたうえでゲームソフトを発売しました。
1999年に公開された映画『Pokémon: The First Movie』の興行収入は全米で8,000万ドル(104億円:1998年時点のドル円レートで計算)以上を売り上げ、人気を不動のものにしました。
参照:Box Office Mojo by IMDbPro「Pokémon: The First Movie - Mewtwo Strikes Back」
メディアミックスについて詳しく知りたい方は、以下のページも参考にしてください。
日本と同じものを提供するのではなく、地域に合わせてローカライズさせていることもポケモンの人気の理由です。
たとえば、多くのポケモンの名前は日本名をそのまま使うのではなく、その地域の言語を活かしてつけられています。
「ポケットモンスター 赤・緑」の御三家(最初に選べる3匹のポケモン)の英語名は次のとおりです。
日本語名 | 英語名 | 由来 |
---|---|---|
フシギダネ | Bulbasaur | bulb(球根)+saur(恐竜) |
ヒトカゲ | Charmander | charcoal(灰)+salamander(サラマンダー:サンショウウオ) |
ゼニガメ | Squirtle | squire(騎士の従者)+turtle(ウミガメ) |
上記のようにイメージを想起しやすい名前にすることで、どの地域の人も同じようにポケモンの世界を楽しめます。
参照:Pokemon「Bulbasaur」
参照:Pokemon「Charmander」
参照:Pokemon「Squirtle」
ポケモンは著名な海外セレブからも愛されており、それが人気につながっています。
たとえば、人気YouTuberのローガン・ポールは、100万ドルは下らないといわれる初版リザードンのカードをメイウェザーとのボクシングのエキシビションの際に首から下げて登場し、話題を呼びました。
日本のポケモンセンターやショップは、海外セレブにとって人気の観光スポットです。ケイティー・ペリーやジャスティン・ビーバー、エド・シーランなどが来日時にポケモンセンターを訪問しています。
多くの人の目にとまるセレブがポケモンを話題にすることで、知名度向上に大きく貢献しているといえるでしょう。
参照:HYPEBEAST「YouTuber ローガン・ポールがメイウェザー戦で推定1億円の『ポケモンカード』初期版リザードンを身に着けていたことが明らかに」
参照:ELLE「ジャスティン・ビーバーやケイティ・ペリーも大好き♡ 海外セレブが起こしたポケモントレンド7」
特徴的なスマホアプリのリリースも、ポケモンの知名度向上につながっています。家庭用ゲーム機の枠にとらわれず、幅広い国境・年齢層に受け入れられるきっかけになっているためです。
とくに「ポケモンGO」は2016年にリリースされると大ヒット。2023年2月時点で総ダウンロード数は10億、世界累計での収益は65億ドル(約1兆143億円:2024年11月14日時点のドル円レートで計算)を突破しています。
2023年7月にリリースされた「ポケモンスリープ」は、ダウンロード数が全世界で累計2,000万以上(2024年7月時点)、2024年6月までに5億回以上の睡眠計測が行われました。
ゲームに馴染みのない層にも受け入れられるアプリが、他のIPとの差別化につながっています。
参照:PRESIDENT Online「今でも「年1000億円級の売上」を稼いでいる…ポケモンGOがゲーム業界有数の大成功を収められた理由」
参照:SensorTower「ホウエン地方イベントで世界の収益ランキングを独占したPokémon GO、日本では55歳以上からの支持も10%に迫る」
参照:PRTIMES「【『Pokémon Sleep』配信1周年! 世界における5億回以上のプレイデータをもとに算出】最新の世界7カ国の平均睡眠時間ランキング! 世界の平均睡眠時間は7時間11分日本は6時間38分で最下位に」
世界8言語で実施された、人気投票「ポケモン・オブ・ザ・イヤー」の上位5つは以下のとおりです。
以下にてそれぞれのポケモンの魅力と人気の理由を解説します。
参照:インサイド「「ポケモン・オブ・ザ・イヤー」結果発表―栄光の1位はゲッコウガ!2位にルカリオ、3位はミミッキュがランクイン」
ポケモンの世界人気ランキング1位はゲッコウガです。「ポケットモンスター X・Y」にはじめて登場し、アニメでも活躍するしのびポケモンで、14万票と頭一つ抜ける圧倒的な人気でした。
忍者がモチーフのポケモンで英語名も「Grenninja」であり、日本らしさを感じられるポケモンとして人気が高いと考えられます。
別のゲーム「大乱闘スマッシュブラザーズ」シリーズに登場したり、旧作アニメの主人公サトシのパートナーとして活躍したりしていることも人気の理由です。
ポケモンの世界人気ランキングの2位はルカリオでした。「ポケットモンスター ダイヤモンド・パール」から登場したはどうポケモンで、映画でも活躍しました。
ゲームに実装される以前に映画『劇場版ポケットモンスター アドバンスジェネレーション ミュウと波導の勇者 ルカリオ』に登場しています。ミュウやラティアス・ラティオスなど伝説級ではないポケモンとしてはじめて主役に抜擢されました。
ゲーム「ポケットモンスター X・Y」でメガシンカをはじめて手に入れたポケモンであることも、人気の理由と考えられます。
ポケモンの世界人気ランキング3位はミミッキュです。「ポケットモンスター サン・ムーン」から登場したばけのかわポケモンで、ピカチュウに憧れて擬態する愛らしい見た目が人気を集めています。
ゴーストタイプのポケモンでもあり、本当の姿を見た人は命を落とすという設定に惹かれる人も多いとされています。
公式に「ミミッキュのうた」が作られたり、グッズを展開したりと、活躍の幅が広いことも特徴です。
ミミッキュにしかない特性「ばけのかわ」を持っており、対戦でも強力なパートナーとして多くのプレイヤーに起用されています。
ポケモンの世界人気ランキング4位にはリザードンがランクインしました。初代ゲームソフト「ポケットモンスター 赤・緑」から登場し、不動の人気を誇るかえんポケモンです。
初代御三家の最終進化形として馴染み深く、「ポケットモンスター 赤」のパッケージにも描かれています。
メガシンカが2種類、キョダイマックスもいち早く手に入れるなど、バトル面でも強力であることも人気の理由です。
ポケモンの世界人気ランキング5位はブラッキー。
「ポケットモンスター 金・銀」で初めて登場した、イーブイの進化系であるげっこうポケモンです。イーブイがなついた状態で夜にレベルアップするとブラッキーに進化します。
イーブイとその進化系は「ブイズ」とも呼ばれ人気が高く、ランキングではニンフィアが6位、イーブイが20位にランクインしました。
可愛らしい見た目も相まって、イーブイの進化系はまとめてグッズ化されることも多くみられます。
ポケモンの海外事業について、特徴的な取り組みが見られる地域は以下の3つです。
それぞれの地域における、特徴的な展開戦略を紹介します。
参照:株式会社ポケモン「海外事業」
アジア圏では、とくに人口の多いインド・中国での市場拡大を目指しています。
インドは14億人を超える市場であり、言語や宗教、商習慣が日本と大きく異なる点がポイントです。このためマーケティングチームを結成し、地元の強豪クリケットチームのパートナーになるなど、プロモーションを進めています。
中国では、人気のYouTube料理動画チャンネル「日食記」にポケモンがCG出演しました。
引用:株式会社ポケモン「海外事業」
©Pokémon. ©Nintendo/Creatures Inc./GAME FREAK inc.
地元の3DCG制作会社に映像作りに協力してもらい、累計再生回数84億回超え(2024年3月時点)の人気コンテンツになっています。
参照:株式会社ポケモン「海外事業」
アメリカでは、伝統的なイベントにポケモンが参加することで、コンテンツのイメージ向上につなげています。
「ポケモンGO」の収益が一番多い国はアメリカであり、とくにポケモン人気が高い地域です。
サンクスギビングデーには、ニューヨークの百貨店が開催するパレードに参加しています。
引用:株式会社ポケモン「海外事業」
©Pokémon. ©Nintendo/Creatures Inc./GAME FREAK inc.
巨大バルーンでパレードを盛り上げ、特別な日をポケモンファンが一緒に祝える機会になっています。
参照:株式会社ポケモン「海外事業」
参照:SensorTower「ホウエン地方イベントで世界の収益ランキングを独占したPokémon GO、日本では55歳以上からの支持も10%に迫る」
ヨーロッパでは、美術館とコラボレーションすることで子どもたちがアートへの関心を高めるきっかけ作りに貢献しています。
オランダのアムステルダムにあるゴッホ美術館では、2023年に開館50周年を記念した特別展「Pokémon at the Van Gogh Museum」が開催されました。
引用:株式会社ポケモン「海外事業」
©Pokémon. ©Nintendo/Creatures Inc./GAME FREAK inc.
ゴッホの自画像に似せたピカチュウの絵画や、代表作『ひまわり』の中にキマワリが描かれた絵画などが展示されました。
ピカチュウの描き方を学ぶワークショップなども開催し、子どもたちが美術館に来場するきっかけ作りになっています。
参照:株式会社ポケモン「海外事業」
TitleMax社のIP収益ランキングにおける、ポケモン以外の海外人気が高い日本発のキャラクターは以下のとおりです。
以下にて、それぞれのキャラクターの特徴や、海外展開戦略を紹介します。
参照:TitleMax「The 25 Highest-Grossing Media Franchises of All Time」
ポケモン以外に海外人気のある日本キャラクターとして、まずハローキティが挙げられます。日本のkawaii文化の象徴であり、総収益は800億ドル(約12兆5千億円:2024年11月14日時点のドル円レートで計算)を売り上げています。
ハローキティは衣類や玩具、日用品などグッズの種類が豊富で、他のキャラクターやブランドとのコラボにも積極的です。
海外展開の際にも、現地の部門や法人と協力してデザインを大きくローカライズさせることで広く受け入れられるようになりました。
サンリオのマーケティングについて知りたい方は、以下のページも参考にしてください。
参照:TitleMax「The 25 Highest-Grossing Media Franchises of All Time」
海外で人気のあるポケモン以外の日本キャラクターには、マリオも挙げられます。任天堂「スーパーマリオ」シリーズの主人公として人気があり、総収益は361億ドル(約5兆6千億円:2024年11月14日時点のドル円レートで計算)です。
マリオはゲーム以外にも、アニメや衣服、おもちゃなど幅広い商品が展開されています。
2023年に公開された『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』の世界興行収入は2023年11月時点で13億6,125万ドル(約2,125億円:2024年11月14日時点のドル円レートで計算)です。
なお「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」には、マリオが主役の「スーパー・ニンテンドー・ワールド」が作られました。
参照:TitleMax「The 25 Highest-Grossing Media Franchises of All Time」
参照:任天堂株式会社「2024年3月期 第2四半期 決算説明会 兼 経営方針説明会」
任天堂はポケモンと同じく、ゲーム以外にも幅広いIPビジネス戦略を展開しています。詳しく知りたい方は以下のページも参照してください。
ポケモン以外に海外人気のある日本キャラクターを語るなら、ドラゴンボールも欠かせません。世界的に人気の漫画・アニメのキャラクターで、総収益は240億ドル(約3兆7千億円:2024年11月14日時点のドル円レートで計算)です。
7つ集めると夢が叶えられる秘宝ドラゴンボールと、主人公の孫悟空をメインに描かれるストーリーが魅力とされています。
原作は1984年に鳥山明氏によって連載が始まった長編漫画。1986年からはテレビアニメが放送開始し、1996年までの11年間で、平均視聴率は20%以上を記録しました。
アニメは80以上の国と地域で放送され、漫画は全世界で2億6千万部以上(2020年9月時点)を発行しています。2022年に公開された映画『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』は全世界週末興行収入1位を獲得しました。
他にも人気のあるIPについて知りたい方は、以下のページも参照してください。
参照:TitleMax「The 25 Highest-Grossing Media Franchises of All Time」
参照:東映アニメーション「ドラゴンボールZ DVD 単巻初登場!!」
参照:バンダイナムコ「アニメ「ドラゴンボール」シリーズ、世界展開絶好「超」!DRAGON BALL SUPER EUROPE EVENT 欧州でファミリー層に向け展開」
参照:讀賣新聞オンライン「「鬼滅の刃」22巻で1億部突破…「ONE PIECE」「DRAGON BALL」に続き」
参照:東映アニメーション株式会社「決算説明資料」
ポケモンはIP収益ランキングトップであり、世界的な人気を誇るキャラクターです。
ポケモンの海外人気が高い理由はゲームの面白さだけでなく、地域の特色にあわせたローカライズも挙げられます。また、ポケモンGOなど特徴的なアプリによって知名度を拡大していることも要因の一つで、これからもますます認知度、人気ともに高まっていくでしょう。
IPにまつわる知識・ニュースを随時発信しています。