IPにまつわる知識・ニュースを随時発信しています。
IP(知的財産)を活用したビジネス事例も増え、IPという単語を聞く回数も増加しています。しかし、そもそもIPとは何か、どのように自社のビジネスに役立つのかがイメージできない方もいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、IPとは何か、ビジネスに活用するとどのようなメリットを得られるのかについて解説します。IPを活用した事業の成功事例も紹介するので、マーケティングや自社商品・サービスのPRなどに参考にしてみてください。
IPとはIntellectual Propertyの略で、知的財産のことを意味します。知的財産とは、デザインや映像、楽曲など、個人や企業が自らの力で新しく作り出したもののことです。
知的財産はクリエイティブな活動の結果生まれる「情報」で、消費されて無くなることはありません。
IPは知的財産基本法の知的財産権により保護されており、他人によって創造されたIPを無断で使用することは違法です。他人のIPを使用したい場合は、通常ライセンス料を支払う必要があります。
知的財産権があることにより、IPが許可なくコピーされた場合は、差し止めや損害賠償の請求が可能です。
また、知的財産権は、無体財産権や知的所有権と呼ばれることもあります。
参照:e-GOV「知的財産基本法」
知的所有権については、こちらのページで説明しているので、ぜひお読みください。
IPビジネスとは、ライセンス契約を結び、知的財産のライセンス料によって収益を得るビジネスのことです。
IPの保有者をライセンサー、IP使用権を付与されたメーカーや小売業者などをライセンシーと呼びます。ライセンサーは、IPのライセンス料を受け取る代わりに、ライセンシーに対してグッズ化やコラボなどのIPの利用を許可します。
このようにIPの使用許可に関する契約を結ぶことが、ライセンシング、あるいはライセンス契約です。
IPビジネスについては、以下の記事で詳細に解説しています。
近年、インターネットやSNSの普及により、ゲームやエンタメ業界を中心にIPビジネスが注目を浴びています。その背景として、海外を含む新しいファン層へのアプローチや、ユーザーとクリエイターの交流が容易になったことが挙げられます。
また、動画配信サービスの普及により、世界中にコンテンツを展開できるようになり、クリエイターの作品を露出できる機会も増えました。小さなアニメ会社が制作した作品も、動画配信サービスにより国内のみならず海外にもアピールできます。
さらに、ファンがSNSなどで要望を発信することで、ファンが求めているものの把握がしやすくなりました。したがって、フィギュアの販売やゲーム化など、二次利用や三次利用を展開して収益を得るためのアイディアも得やすくなっています。
アニメ・ゲームなどのエンタメ業界におけるIPが気になる方は、こちらの記事を読んでみてください。
また、IPごとの売上ランキングはこちらの記事で解説しています。TOP25内に日本産のIPであるポケモンやハローキティなど、10作品・キャラクターが入っているなど、IP活用は大きく盛り上がりを見せています。
IPには、おもに以下の8種類があります。
著作権とは、文学や音楽などの思想や感情を創作的に表現した著作物を保護する権利です。
著作者が著作物を生み出した瞬間から発生する権利で、登録申請をしなくても権利が保護されます。
著作権の保護期間は原則著作者の死後70年ですが、無名・変名や団体名義、映画の著作権は公表後70年です。
参照:公益社団法人著作権情報センター「著作権は永遠に保護されるの?」
参照:文化庁「著作者の権利の発生及び保護期間について」
特許権とは、物や方法、物の生産方法の発明など、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度なものを保護する権利です。これまでの技術では簡単に思いつかないような、新しい発明に対して付与されます。
たとえば、インクが消えるボールペンの「フリクションボール」は特許を取得しています。フリクションボールには熱で色が変化する「メタモインキ」が使用されています。メタモインキは、ボールペンのインクを何度でも消せる画期的な技術です。
特許権の保護期間は、出願から20年です。ただし、医薬品や農薬などでは最長25年まで延長できます。
参照:特許庁「1章 期間補償のための特許権の存続期間の延長」
実用新案権とは、発明ほど高度ではない「考案(小発明)」を保護する権利です。物の形状や構造の考案などが該当します。保護対象は物であり、方法は含まれません。
花王「クイックルワイパー」の付け根の構造や、王子ティッシュ(現ネピア)の簡単に折りたためるティッシュ箱などが実用新案権を取得しています。
実用新案権の保護期間は出願から10年です。
参照:特許庁「改正実用新案制度の概要」
意匠権とは、物の形状や色彩など、デザインを保護する権利です。
物品の一部のデザインを保護する「部分意匠」と、全体のデザインを保護する「全体意匠」があります。
また、ほうきとちり取りが一体型になっている商品のように、複数の物品で1つのデザインを形成している場合は「組物の意匠」に該当します。
意匠権の保護期間は出願から25年です。
参照:特許庁「意匠制度の概要」
商標権とは、商品やサービスの名称やマークなど、自社と他社の商品を消費者に識別してもらうために重要な営業標識を保護する権利です。
CMで使用される効果音や特定の色など、ある企業と関係のある物なら幅広く保護の対象となります。
商標権の保護期間は登録から10年で、10年おきに更新が可能です。
参照:特許庁「商標制度の概要」
育成者権とは、植物の新品種を保護する権利であり、種苗法で定められています。
育成者権の保護期間は登録から25年で、樹木の場合は30年です。
参照:農林水産省「育成者権」
回路配置利用権とは、半導体集積回路の回路配置を保護する権利です。
回路配置利用権の保護期間は登録から10年です。
参照:e-GOV「半導体集積回路の回路配置に関する法律」
ここでは、IPをビジネスに活用するメリットを以下の4つ紹介します。
IPを自社のビジネスにどのように活用できるかの参考にしてみてください。
IPを利用すると、自社の商品・サービスの独自性を高められ、類似商品・サービスとの差別化ができます。
競合の多い業界で新商品をアピールするのは困難です。とくに、すでに消費者に広く認知されている他社のブランドがある場合は、自社の新ブランドは認知してもらえにくいでしょう。
他社との差別化をはかるには、人気のある芸能人やキャラクターの利用が効果的です。印象に残るCMの作成や店頭での宣伝ができるため、ライバルが多い中でも消費者の印象に残りやすくなります。
また、飽和している市場で売上に悩んでいる既存商品も、IPとかけ合わせることで差別化ができ、売上の向上が期待できます。
人気アニメのキャラクターやアイドルなどを起用した場合は、そのファンによる商品・サービスの購入が期待できます。
たとえば、オレンジジュースを販売する場合に、子どもに人気のキャラクターをパッケージに起用したとします。すると、そのキャラクターが好きな子どもやその親からの購入が期待できます。普段は他社のジュースが好きな子どもでも、あえて自社のジュースを選ぶようになるかもしれません。
ファン層が多く、商品・サービスのターゲット層にも合うIPを選べば、売上が大きく伸びる可能性があります。
IPを活用したコラボについては、こちらのページで詳細に解説しています。
IPを活用すれば、自社の商品・サービスをまだ知らない潜在顧客へも容易にアプローチできます。
普段は何も意識せずに見ているCMも、人気の芸能人やキャラクターが出ていれば最後まで意識して見る消費者が増えるでしょう。その結果、これまで商品・サービスの詳細をまったく知らなかった層にもアピールが可能です。
すでに認知度の高いIPであるほど、潜在顧客に対する効果も期待できるでしょう。
IPを活用すれば、ファンから注目され、商品・サービスや自社の認知度の向上につながります。
すでに認知度のあるキャラクターを広告に使えば、それだけでも大きな宣伝が可能です。また、キャラクターの起用によって、商品・サービスや自社に対するイメージアップにもつなげられます。
IPコンテンツの活用例は、以下の記事でご紹介しています。
ここからは、IPをビジネスに活用する際の注意点を以下の3つ紹介します。
IPのライセンス契約を結ぶ際は、IPの利用条件をよく確認しましょう。契約書で合意した範囲外の利用は契約違反となり、IPを利用できなくなったり、違約金を請求されたりする恐れがあります。
双方の認識にすれ違いがないよう、契約を結ぶ前にIPの利用期間や目的を明確にライセンサーに伝えておくとよいでしょう。
IPを利用する際は、ファンのイメージを尊重することが大切です。
IPによっては、すでにファンによる一定のイメージが形成されており、IPの活用方法が限られることがあります。ファンのイメージを壊してしまうと、ライセンサーとライセンシー両方の好感度が下がる可能性があるでしょう。
その結果、商品・サービスの宣伝も失敗する可能性があります。
ファンが求めているイメージに沿って企画を進められるよう、利用するIPはファン層もよく調べておきましょう。
IPをビジネスに活用する際は、企画から実用・販売を開始できるまでに時間がかかることを認識しておきましょう。
IPを活用する際はライセンサーに細かく方針を確認する必要があり、打ち合わせも多いため、IPを使わない場合に比べて時間がかかります。
企画の時点で余裕のあるスケジュールを設定し、焦らずに制作できるようにしましょう。ライセンサーの意向に背いたものを制作すると、契約がキャンセルされてしまうリスクがあります。
ライセンサーとの会議は省かず、綿密な打ち合わせを重視しましょう。
以下では、IPを活用した事業の成功事例を3選紹介します。それぞれの事例を参考に、自社の場合はどのようにIPを活用すればよいか検討してみてください。
株式会社ディー・エヌ・エーは、スマートフォン用ゲームの開発や販売、SNSの運営などを行っている会社です。
株式会社ディー・エヌ・エーは、任天堂など大手ゲーム会社とIPのライセンス契約を結んでいます。ファイナルファンタジーやポケモン、ONE PIECEなどのゲームを開発しており、「ポケモンマスターズ EX」は8言語で配信中です。
また、マンガアプリや小説共有サイトを使って自社のIPの創出にも力をいれており、ライセンサーとライセンシーの両方でIPビジネスを拡大中です。
東宝株式会社は、映画の製作配給を中心に行っている会社です。
東宝株式会社は、アメリカのアニメーション制作会社Frederator Networksから著作権の一部を取得しています。これにより、「ビーとパピーキャット」や「ブレイベスト・ウォリアーズ」など、海外で人気のアニメを日本で展開できるようになりました。
新作映像の共同製作や商品化のライセンス取得も視野に入れており、IPによりビジネスの方向性を広げようとしています。
株式会社 Pocket RDは、アバタープラットフォーム「AVATARIUM」の技術を活用し、タレントをアバター化しました。アバター化することで、吉本興業株式会社のお笑い芸人がメタバース上でのイベント開催や出演できるようにしています。
芸能人を広告に起用したい場合、タレントサブスクでもお笑い芸人やアイドルなど幅広いジャンルの有名人を起用できます。タレントサブスクの中から、自社商品・サービスのイメージに合った芸能人が見つかるはずです。IPを使ったマーケティングについては以下の記事でもご紹介しています。
マーケティングにIPの活用を検討しているなら、ゲームやアニメのキャラクターだけでなく、芸能人やタレントのIPを活用する手もあります。タレントサブスクを利用すれば、通常よりも費用を抑えて芸能人のIP活用が可能です。
タレントサブスクとは、定額料金を払うことでタレントの写真などの素材が使い放題になるサービスです。登録済みの素材や条件をベースにIP活用をするため、他の方法よりもスピーディーにIPを利用できます。
なるべく安く、早くIPを活用したい場合は、タレントサブスクを検討してみましょう。
なお、タレントサブスクとは何かやおすすめのタレントサブスクについては、以下の記事で詳しく解説しています。
IPとはIntellectual Propertyの略で、知的財産のことです。漫画やアニメのキャラクターのIP活用事例が増えており、IPをビジネスに活用することへの注目が集まっています。
IPを活用すると、競合との差別化や潜在顧客へのアプローチ、商品や自社の認知度向上が可能です。IPの利用条件の厳守やファンのイメージの尊重など注意点もあるので、IPの起用は慎重に進めましょう。
IPの活用はキャラクターが主ですが、芸能人を活用するという手もあります。芸能人のIPを自社のビジネスに活用したい場合は、タレントサブスクが便利です。
サービスにもよりますが、通常の芸能人起用よりも安価に芸能人のIPを利用できます。芸能人を広告やパッケージに利用したい場合は、タレントサブスクを検討してみてください。
IPにまつわる知識・ニュースを随時発信しています。