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「Stable Diffusionで生成した画像の著作権の扱いはどう考えればよい?」「Stable Diffusionで生成した画像は商用利用できるの?」
はじめてStable Diffusionを使う際、上記のような疑問を抱くこともあるでしょう。
Stable DiffusionはイギリスのStability AI社が提供する画像生成AIツールです。生成した画像には基本的に著作権がなく、誰でも自由に利用できます。しかし場合によっては著作権を侵害したり、商用利用不可だったりすることもあるので注意が必要です。
本記事では、Stable Diffusionを利用して生成した画像の著作権の扱いや、商用利用時の注意点を解説します。おすすめの商用利用可能なモデルも紹介しているため、ぜひ参考にしてください。
Stable Diffusionで生成した画像には著作権がないため、他人が許可なく利用しても、著作権侵害だと訴えることはできません。
Stability AIの公式サイトによると、収集されたコンテンツ(プロンプトや生成画像)の著作権ライセンスはStability AI(承継人、譲渡人も含む)に付与するものとされています。また利用者のコンテンツは、適用法で認められる範囲でStability AIが保有し、パブリックドメインとして公開されることも述べられています。
文化庁が公表した「AIと著作権」においても、基本的に簡単な指示を与えてAIが自動的に生成したものは、著作物に該当しないという見解です。
一方で、詳細は後述しますが、生成した画像に類似性や依拠性が認められる場合は著作権侵害を問われる可能性があるため注意が必要です。
参照:Stability AI「最先端の洗練された画像生成AI モデル群」
参照:Stability AI「Stability AI Discord Bot Terms of Service」
参照:文化庁「AIと著作権」56〜59ページ
著作権に含まれる権利の種類や、AIで作成したイラストが著作権侵害にならないかポイントを知りたい方は以下の記事も参考にしてください。
場合によっては、Stable Diffusionを用いて生成した画像が他者の著作権を侵害する可能性があります。著作権侵害にあたる条件は以下のとおりです。
両方を満たしている場合のみ著作権侵害になるので、画像を利用する際は当てはまっていないかチェックしましょう。
まずは、類似性(既存の他人の作品と同じ、もしくは似ていないかどうか)を確認しましょう。
類似性の有無はあくまで創作的な表現に限り、その本質的な特徴が共通しているかどうかが重要です。アイデアや誰でも知っている事実など、表現にあたらない部分や創作性のない表現が一致していても、類似性は認められません。
たとえばStable Diffusionを利用して「ミッキーマウス」を生成した場合、誰が見てもそうとわかる場合は類似性が認められます。しかし「歌って踊るネズミ」といったアイデアや、二足歩行をするネズミの表現だけでは類似性が認められるとは限りません。
参照:文化庁「AIと著作権」
ミッキーマウスの著作権について詳しく知りたい方は、以下のページも参考にしてください。
著作権侵害においては、依拠性(既存の他人の作品にもとづいて作成されているかどうか)も要件とされています。
ポイントになるのは、作品を制作してから発表する時点で、既存の作品・表現に触れていたかどうかです。偶然に一致しただけであり、独自創作の場合は依拠性がないと判断されます。
たとえば「電気を操るネズミ」をStable Diffusionで生成した画像が「ピカチュウ」に似ていた場合、類似性は認められます。しかし制作者が「ピカチュウ」を知らずに独自制作した経緯を合理的に説明できれば、依拠性は認められないでしょう。
参照:文化庁「AIと著作権」
基本的に、Stable Diffusionで生成された画像は商用利用しても問題ありません。
Stable Diffusionは、CreativeML Open RAIL Mという商用利用可能なライセンスです。Stable Diffusionの「LICENSE」欄には、「利用者が出力したものについていかなる権利も主張せず、自由に利用できる」と記されてます。
一方、ライセンスで定められた規定に違反してはいけないことも記されています。規定に違反する例は以下のとおりです。
商用利用する際は、人に危害を加えたり法律に反したりする使い方は避けましょう。
参照:GitHub「stable-diffusion/LICENSE」
参照:Hugging Face「Stable Diffusion 2.1 Demo」
Stable Diffusionで生成した画像が商用利用できないケースは以下の3つです。
それぞれのケースについて詳しく説明します。
商用利用不可のモデルで生成した場合、その画像も商標利用ができません。
ここでいう「モデル」とは、画像生成時に使用する、事前にAI学習が完了しているファイルのことです。それぞれ学習に用いるデータ(アニメタッチ、リアルタッチなど)が違うため、モデルを変えることで生成される画像のテイストが変わります。
Stable Diffusionを利用するユーザーはニーズに合わせてモデルを選択することで、効率的に画像を生成可能です。しかしなかには商用利用不可のモデルもあるため、のちほど説明する方法で確認してから利用しましょう。
img2imgで画像生成する場合、商用利用できない画像が生成される可能性があります。img2imgとは、参考画像を読み込ませてそこから画像を生成する方法です。
一般的にStable Diffsionで画像を生成する際は、テキストを入力して画像を生成するtxt2imgを使用します。しかし入力できるテキストの文字数に制限があるため、より細やかなニュアンスを伝えたいときはimg2imgが便利なのです。
ただし読み込む画像に著作権があると、生成画像は類似性・依拠性の両方が認められて著作権侵害となる可能性があります。
LoRAでモデルを学習させる場合、使用するモデルや画像によっては商用利用できない可能性があります。
LoRA(Low-Rank Adaptation)とは、既存のモデルに追加学習を行って、モデルの精度を高めることです。追加学習させることで、よりユーザーのニーズにマッチする画像が生成されやすくなります。
しかし商用利用不可のモデルを追加学習させた場合は、その後生成された画像も商用利用できません。またモデルが商用利用可能でも、著作権のある画像をLoRAで学習させると、依拠性が認められやすくなります。
Stable Diffutionで、モデルが商用利用可能かどうか確認する方法は次の2つです。
それぞれの具体的な手順について、以下にて説明します。
画像生成AIプラットフォームである「Civitai」は、各モデルのページでライセンスの細かな内容が確認できます。
Civitai上でモデルを選択すると、ページの右下に「Lisense」という箇所があり、その右側のアイコンをクリックすると詳細が表示されます(下図の右下赤枠部分)。
© Civitai 2024
引用:Civitai「Beautiful Realistic Asians」
記載されているライセンスの項目は以下のとおりです。
項目 | 内容 |
---|---|
Use the model without crediting the creator | モデルを使用する際に、クリエイターのクレジット表記が必要かどうか |
Sell images they generate | 生成画像は販売できるかどうか |
Run on services that generate images for money | 画像生成サービスに実装してお金をもらってよいかどうか |
Run on Civitai | Civitai上で実装してよいかどうか |
Share merges using this model | このモデルを使用したマージを共有してよいかどうか |
Sell this model or merges using this model | このモデルや、このモデルを使用したマージを販売してよいかどうか |
Have different permissions when sharing merges | マージを共有する際に異なる権限を与えてもよいかどうか |
上記の項目のうち、「Sell images they generate」が✓になっていれば商用利用が可能です。ただし、「Use the model without crediting the creator」が✕になっている場合は、使用時にクレジットを表記する必要があるので注意しましょう。
参照:Civitai「Models」
Civitaiと同じく、画像生成AIの実行環境である「Hugging Face」も、モデルのページからライセンスの概要を確認可能です。
Hugging Face上でモデルを選択すると、ページに「Lisense」という箇所があります(下図右上赤枠部分)。
© Hugging Face
引用:Hugging Face「CompVis/stable-diffusion-v1-4」
ここで「creativeml-openrail-m」になっていれば商用利用可能です。さらに「Read more」をクリックすることでライセンスの詳細を確認できるため、画像生成前に一度確認しておきましょう。
参照:Hugging Face「Models」
Stable Diffusionで商用利用可能なおすすめモデル10種をリアル系、アニメ系あわせて紹介します。
モデル名 | 系統 | 特徴 |
---|---|---|
リアル系 | 短いプロンプトでアジア系女性の画像が生成できる | |
リアル系 | 人種や衣装を指定して生成できる | |
リアル系 | 性別・背景・服装などを細かく指定したうえでアジア系の画像が生成できる | |
リアル系 | 細かく指定したうえでアジア系女性の画像を生成できる | |
リアル系 | アジア系とコーカソイドをミックスさせたような顔立ちの画像を生成できる | |
アニメ系 | SDXL 1.0 Baseからいくつかのアニメ系のモデルをマージさせた画像が生成できる | |
アニメ系 | 陰影のついたクオリティの高い画像が生成できる | |
アニメ系 | パステル調でファンタジックな画像が生成できる | |
アニメ系 | 細かい背景のセミリアルな画像が生成できる | |
アニメ系 | 水彩画のようなタッチの画像が生成できる |
それぞれの特徴を把握して、用途に合ったモデルを選択しましょう。
参照:Civitai「Models」
人気のモデルの中には、商用利用できないものもあるので注意しましょう。主なモデルは次の5つです。
モデル名 | 系統 | 特徴 |
---|---|---|
リアル系 | ライティングがきれいな画像を生成できる | |
リアル系 | アジア系の女性を中心に、実写とCGの間を取った非現実感のある画像を生成できる | |
セミリアル系 | アニメ系をミックスさせたセミリアルな画像を生成できる | |
セミリアル系 | ゲームキャラクターのようなリアルとアニメの中間のような画像が生成できる | |
アニメ系 | 多様なスタイルの画像を生成できる |
上記のモデル以外にも、はじめてのモデルを使用する際は商用利用可能かどうか必ず確認しましょう。
Stable Diffusionで生成した画像には著作権がありません。ただし生成した画像が既存の著作物との類似性、依拠性が認められると、著作権侵害と認定される可能性があります。
他者の著作権を侵害しないように、img2imgを行う際に著作物を読み込ませないなど注意して使用しましょう。
利用規約に違反しない限り、Stable Diffusionで生成した画像は商用利用が可能です。ただしモデルのライセンスなどによってはNGになるケースもあります。
本記事で紹介しているNGケースを確認し、安全にStable Diffusionを利用してください。
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