『Sky 星を紡ぐ子どもたち』争いのないゲームが累計2億6,000万DLされる時代
#インタビュー
2024.08.01

『Sky 星を紡ぐ子どもたち』争いのないゲームが累計2億6,000万DLされる時代

2024年7月13日(土)・14日(日)の2日間にわたって、5周年を記念して行われた「SkyFest 2024」の記憶も新しい人気ゲーム『Sky 星を紡ぐ子どもたち』(以下Sky)。

運営しているのは、これまで『flOw』、『Flowery』、『風ノ旅ビト』とヒット作を生み出してきたthatgamecompany(TGC)という、アメリカのカリフォルニアに本社を構える企業です。

Skyの最大の特徴にして魅力はやはり、争いのない平和な世界観、そしてまるで絵画のようなアートデザイン。

リリースから4年(2023年5月)というスピードで累計2億6千万ものダウンロード数を突破し、これまで「ゲーム」というものに触れてこなかったユーザーも増やしていることから、その言葉に新たなイメージを与えつつあるのを感じます。

今回のインタビューのお相手は、そんなTGCにてビジュアル・デベロップメント・リードを務める田邊裕一朗氏、リード・オーディオ・デザイナーとジャパン・ブランド・リードを兼任する水谷立氏。

Sky開発の背景や裏話、ファン、プレイヤーへの思い、そしてオンラインゲームの未来についてたくさん語っていただきました!

INDEX
  1. キャラクターデザインは「かっこよくなくていい」
  2. “無関係”な人のいないゲーム
  3. コロナ禍のムードにフィットして累計2億6,000万DL突破
  4. 日本語の表現にこだわって夜中まで作業
  5. 「Sky 星を紡ぐ子どもたち」はプレイヤーと一緒に作って育てている
  6. オンラインゲームは新たなコミュニケーションの選択肢
  7. 上書きするのではなくオプションで増えていく世界観
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田邊裕一朗

2012年にTGCに入社して以来、本社にて『Sky 星を紡ぐ子どもたち』のキャラクターやアイテム、そして空間をデザインしつづけており、ビジュアル・デベロップメント・リードとして活躍中。その創造性は強く支持されており、ファンの間では「ユイ」の名でも知られている。

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水谷立

2016年にTGCに入社し、リード・オーディオ・デザイナーとして『Sky 星を紡ぐ子どもたち』の印象的なサウンドデザインを手がける一方で、日本市場に向けたプロモーションを行うジャパン・ブランド・リードも兼任。ファンの間では「リツ」の名でも知られている。

キャラクターデザインは「かっこよくなくていい」

(左からthatgamecompanyの田邊裕一朗さんと水谷立さん。後ろのホワイトボードには、実は直前にthatgamecompanyの設立者であるジェノヴァ・チェンさんが描いたイラストが!)

『Sky 星を紡ぐ子どもたち』の構想のきっかけについてお伺いできますか?

田邊裕一朗さん(以下、田邊):TGCでは『Sky』のリリース前に『flOw』、『Flowery』、『風ノ旅ビト』というゲームをリリースしているんですが、いずれも一貫した会社の理念、「こういうゲームを作りたい」という思いをもとに開発してきました。

それは「世界中の人々をつないで、ポジティブな感情の体験をもたらし、そして古びることのない世代を超えたエンターテインメントを作りあげる」というもの。

前作『風ノ旅ビト』をプレイした方から「この体験が素晴らしかったから、自分の大切な人に共有したい」というフィードバックをたくさんいただき、もっと多くの方々にそう思っていただける体験をしていただきたいというのが開発のきっかけのひとつになりました。

絵画のように美しい世界観やキャラクターデザインも多くのファンを惹きつけつづける部分だと思いますが、とくにこだわった点を教えていただけますか?

田邊:キャラクターデザインでとくにこだわったところは、やはり会社のミッションでもある「世界中の人々が遊べるものを作る」「世代を超えたエンターテインメントを作る」というところです。

それをふまえ、Skyはだれが遊んでも童心に返ることができるように、人種や性別を問わずに自分を投影できるキャラクターにすることにこだわりました。

あとデザインをしていくうえで「かっこよくなくてもいいんだな」ということに気づきましたね。

『風ノ旅ビト』で喜んでいただけたような体験をもっと多くの方に伝えたいという思いから、このゲームはたくさんの方が同時に遊べるようにしているんです。

なので、ひとりだけが目立ってしまうようなデザインではなく、むしろたくさんの方と一緒にいるときのほうが映えるように意識しました。

できるだけシンプルに、あとはプレイ中は背中がよく見えるので、ケープの色が綺麗に見えるように、さらに人数が集まったときは花びらのようにひらひら舞うのが楽しめるように。

そのうえでほかの部分はそれぞれカスタマイズできるようにしました。自分を表現するということも、もちろん大事なので。

「かっこよくなくてもいい」という言葉、とても現代的な考え方だなと思いました。昨今「ルッキズム」が問題視されるようになりましたが、そのあたりも意識されたのでしょうか?

水谷立さん(以下、水谷):そうですね、キャラクターのカスタマイズ要素によって自己や内面を表現できるように多様性を意識した一方で、その表現の仕方によって他人から評価されることはないように、というのはすごく意識して気をつけたところですね。

“無関係”な人のいないゲーム

Skyといえばバトルシーンがないというのも大きな特徴だと思いますが、それもやはり「だれもが楽しめるものを作る」という理念に基づいた決断だったのでしょうか?

水谷:そうですね。もちろんバトル、競争といったものが楽しい要素だというのはわかっていますし、僕自身そういったゲームも好きで遊びます。ほかにもそういったゲームをプレイしているスタッフも多くいます。

ただ、どんな人にも触れてほしい、遊んでほしいって考えたときに、たとえば子どもがゲームをプレイしているのを見て「こういうゲームで遊ばないでほしい」って親に思われてしまう可能性のあるゲームは僕たちTGCの作りたいものではないんです。

逆に「なんかおもしろそうなものをやっているな」「一緒に遊びたいな」と思ってもらえて、そこから親子で一緒に遊ぶ機会が広がっていくようなものこそ目指しているところだと考えています。

また「世代も性別も関係なく楽しめるゲーム」を作っていると先ほど申しましたが、戦う要素のあるゲームは現状男性によく好まれる傾向があるので、もしかしたら女性に「暴力的」「乱暴」「荒々しい」と感じられて手に取っていただく機会を失うかもしれません。

だれかにとっては大きなアピールポイントになっても、ほかの人にとって「自分とは関係ない」「自分のために作られたゲームではない」と思われてしまうのは一番怖いといいますか、手に取る以前に興味を持ってもらえないようなアプローチはしたくないと考えています。

最初にターゲットを明確に絞るのがマーケティングの基本だと思っていましたが、御社の場合は絞らないことで多くの方に支持されることに成功しているんですね。

水谷:あとはやはり「古びることがない」「タイムレス」というのも大きなキーワードにしています。Skyは運営型のサービスとして体験を提供しているので、遊んでいただける方がいるかぎりは続けていきたいんですよね。まぁ10年後、100年後にこのゲームがあるかどうか僕たちにもわからないですけども(笑)。

もしこのゲームで遊べない時代になってしまったときにも、「こういうゲームがあったな」と思い出してもらえるような、ずっと心に残る作品を作りたいと考えているんです。

時代に合わせて「今はこういったものが流行っているから」と、そのとき人気のジャンルの作品を制作してしまうと、トレンドが移り変わったときに、どうしても古く見えてしまう、時代遅れに見えてしまうというのも危惧しています。

なので普遍的な、人間性みたいなところをテーマに選択することが多いのかなと思いますね。

なるほど、だからSkyの世界観やキャラクターデザインは、新しいのにどこか懐かしい印象を抱くんですね。

田邊:ありがとうございます。そう言っていただけるとうれしいです。なにかをデザインするときに、それに「普遍的価値があるかどうか」はかなり重要視しているポイントですね。

トレンドに左右されずに、でも「今みんなが必要としているものはなんだろう?」と探りつづけていきたいと思っています。

コロナ禍のムードにフィットして累計2億6,000万DL突破

2023年5月、リリースからわずか4年でダウンロード数は2億6,000万を超えましたが、集客面で工夫したことなどはありますか?

水谷:リリースからすぐに爆発的にプレイヤーが増えていったというわけではないんですよ。本当に少しずつ、最初に体験した方、手に取ってくださった方からクチコミで評判を伝えていただいて広がっていったのかなと思っています。

結果的にこんなにもたくさんの方々にプレイしていただけるゲームになった要因は、大きく分類するとふたつあるかなと考えています。

まず、先ほども申しましたようにバトルや競争の要素があるゲームや人に自慢をしたり、人の評価を得たりするようなゲームはたくさんあると思うんです。

ゲームだけではないですよね。SNSなどオンラインのコミュニケーションはいい側面ももちろんありますが、使う人によっては悪い影響を及ぼす面もよく問題視されているところだと思います。

人々をつなげたり、楽しくさせたり、わくわくさせたりするプラスの感情をもたらすと同時に、妬ましい、うらやましい、ずるいといったネガティブな感情も時に招いてしまう、与えてしまいますよね。

それによって近年ではオンラインゲームやオンラインコミュニケーションに疲れてしまう人が増えてきているのではないかなと思っていたんです。

そこで、そういったものから距離を置きたい、違うものを体験したいと感じている人たちに、思いやりや人とのあたたかいつながり、人間のポジティブな感情体験をテーマにしたSkyをタイムリーに届けることができたので、受け入れてもらえたのかなというのがひとつ。

もうひとつはコロナ禍ですね。当時の大変な社会状況のなかで、Skyという存在が多くのプレイヤーの方々に知っていただけることになりました。

物理的に距離が生じてしまい、仲のいい人、家族にさえも会えなくなってしまった経験をした方もいたと思いますが、それまで以上にだれかとのつながりを強く求めたり、その大切さに気づいたときにSkyのゲーム性がフィットしたんじゃないかと思います。

人々が思い合ってつながっていく感情体験の共有、そして癒しといったものを少なからずこのゲームを通じて提供することができたのではないかと考えていますね。

コロナ禍は大きく人々の生活様式を変えましたもんね。しかもまさしく「SNS疲れ」という言葉をよく聞くようになったのも同じころだったかと思うので、Skyの世界観がとくに発揮されるタイミングとなったんですね。

日本語の表現にこだわって夜中まで作業

「日本ゲーム大賞2022」の優秀賞に選ばれたり、「マンタスーツ」というアイテムがX上で日本のトレンドワードになったり、日本でも人気です。日本は「ゲーム大国」といわれることもあり、さまざまなゲームコンテンツに慣れ親しんでいるユーザーが多いと思いますが、その市場で支持されるようになったのはなぜでしょうか?

田邊:日本人のつながり方とSky上のユーザー同士のつながり方がマッチしていたのかなと感じます。たとえば初めて会う人のところにすぐ駆け寄って積極的に友だちになろうとするというよりも、なんとなくすれちがって、なんとなくコミュニケーションが始まって、なんとなくつながっていくところ。

Skyのコミュニケーションはそういったものが多いんですが、それが日本人の国民性に合っていたのかな、だからいい評価をいただけたのかなと思います。僕自身も日本人でまさしくそういうタイプですし(笑)。

水谷:初期の段階でプレイしていただいた方の中に、すごく高い熱意をもってほかの方に勧めてくださる方がいらっしゃったんですが、特に日本人が多かったんですよね。

周りの友だちや知り合い、オンライン上のフレンドにクチコミで勧めたり、「まだやっている人は少ないかもしれないけど、すごくいいゲームだから試してみて」と熱心にレビューを書いてくださったり、そういうふうに声を出して広めてくださる方が日本人にとても多かったんです。

あともうひとつ特徴的だったのが、そうやって広めてくれる日本人プレイヤーの多くが、すごく巧みなイラストや文章、音楽、いろんな創作を通じて自分がSkyから受けた影響やインスピレーションを広げてくださったこと。

Skyは物語やキャラクター、世界観のすべてに想像力をはたらかせて、いろんなイメージをする余白のあるゲームだとは思っているんですが、ご自身のクリエイティブを発揮される方が多いというのは日本のコミュニティの大きな特徴だと思います。

たしかに日本にいてSNS上でSkyについて検索すると、ファンアートを発信されている方がすごく多いなと感じますね。

水谷:あとは手前味噌みたいな話になってしまうんですが、田邊はビジュアル・デベロップメント・リードとしてコンセプトアートの統括をしていて、僕はリード・オーディオ・デザイナーとしてサウンドデザインをしています。

そのうえで、実は日本でリリースする前にゲーム内のすべてのテキストを日本語にローカライズするという作業をこのふたりで行っていたんです。

ほかの仕事もあったので一晩中、あるいは夜中まで作業して、ちょっとしたニュアンスや言葉遣いの細かいところを何パターンも作っては比較して、どういったかたちが一番自然な表現になるかを考えつづけました。

英語を日本語に置き換えるのではなくて、一から日本語で自分たちがゲームを通じて伝えたいことを表現するということを行ってきた結果、今でこそSkyはTGCというアメリカの会社が開発したものだと知っている方も増えてきたと思いますが、当初は日本のゲームだと思って遊ばれた方もたくさんいらっしゃったんです。

「外国のゲームだから難しそう」「とっつきにくそう」と思われることなく、すんなりゲームの世界観に没入していただけるように気をつけていたので、それが実際に叶ったところもあるのかなと思っています。

私も最初日本のゲームだと思っていました(笑)。AIも日本語を覚えるのが一番苦労するというのを聞いたことがありますが、そのくらい日本語って細かい表現が多くて難しいですもんね。

水谷:そう言っていただけるとふたりで夜中まで作業していたのが報われます(笑)。

Skyの場合は、プレイして感動してくれた方がTGCのスタッフに応募して、今度は内側からコンテンツを作ったりプロモーションしたり、作品を支えてくれているケースも多いので、それもいい循環だなと思っています。

輪がどんどん広がっていくの素敵です。それってやっぱり支持されるコンテンツじゃないと成り立たないと思うので、みなさんが思いをこめてこだわって作った世界観があってこそですね。

「Sky 星を紡ぐ子どもたち」はプレイヤーと一緒に作って育てている

先日Skyの公式アートブック『The Art of Sky』を発売されたと思いますが、その制作背景についてもお伺いできますか?それこそファンアートも収録されているんですよね?

田邊:『The Art of Sky』は変わったプロジェクトなんですよね。従来の「アートブック」のイメージとは違うかもしれないんですが、「Skyというゲームはこうして生まれたんだよ」という経過を記録したものなんです。

Skyについては、企画から開発、リリースまで本当にいろんなことがありました。というのも、最初から「こういうゲームを作ろう」という明確なプランがあったわけではないんです。

漠然としたイメージから今のあのかたちになるまで、紆余曲折あって完成したので、その経過こそがおもしろいんじゃないかなというのがきっかけでアートブック制作が決まりました。なので、どういった着想からどういうふうに変化していったのかというプロセスをドキュメントしたんです。

そのうえで、先ほどのお話に戻るんですが、やはりSkyはリリース後コミュニティが生まれて、みなさんが遊んでくれて、はじめて今のかたちになったと実感しているので、プレイヤー、コミュニティなしに語れないということで、ファンアートは絶対に入れようという話になりました。

アートブック発売のときのライブ配信を拝見したんですが、そのなかでも「ファンの方々と一緒に構築していった」とおっしゃっていたので、本当に受け手の方々のことを大事に考えながら制作されているゲームなんだなと思いました。

水谷:一緒に作っているという感覚は強いですね。こちらが作ったものを遊んでもらっているというのではなく、一緒に育てているという感じです。

それがファンの方々にも伝わっているんだろうなと感じられるあたたかい配信でした。ちなみにゲームと紙媒体だと表現方法が変わると思うんですが、難しさはありましたか?

田邊:開発風景をお伝えするにあたって、ゲーム画面をそのままプリントしてもおもしろくないので、どういうふうに見せるかはやっぱり考えましたね。

ゲーム開発は、コンセプトを絵に描いてチームと共有して、それをもとにコミュニケーションをとって最終的にゲームの中に落とし込むという作業なので、紙で見せるにあたってそのコンセプト部分を中心に掲載することにしました。

本当は開発途中の画面とかもっと見せたいものもあったんですけど、やっぱり開発初期のゲーム画像は動いていない静止画になると、もうなにがなんだかわからないので、コンセプトを見せるというところに絞ったという感じですね。

水谷:TGCのゲームは全部そうなんですが、Skyはとくに手触り感というか、この世界に触れているような感覚、世界の中に自分自身がいるような感覚を実現させたいという思いが強くあって、アートにもサウンドにも尋常ではないこだわりを持っています。

なのでアートブックに関しても、たとえば紙の手触り、表紙のちょっとした装飾に触れる感覚というところにこだわって、制作チームはたくさんの試行錯誤を繰り返してそのクオリティを高めていっていました。……というのを僕は横で見ていました(笑)。

Skyには圧倒的な世界観があるので、もちろん視覚や聴覚でも楽しめますが、やっぱり自分で動いたりアクションを起こしたり、「体験する」ものであると思うので、そのあたりを紙媒体に落とし込んだときに手触り、質感で表現しているのがSkyチームならではの再現力だと感じます。

田邊:ありがとうございます。僕たちが作っているものはやっぱりインタラクティブメディアなので、アートブックを買っていただいた方にゲームの中で特別な体験が楽しめるという仕組みも作りました。両方を楽しんでいただけるとうれしいです。

オンラインゲームは新たなコミュニケーションの選択肢

eスポーツ市場が拡大しつづける現代において、Skyのような戦いのないゲームが人気を得たというのは、ゲームの多様性が広がるひとつの分岐点を示しているような気がします。おふたりは今後ゲーム業界はどのように変革していくと思われますか?

水谷:難しいですね……。ここで僕の考えを述べて、3年後くらいに「この人の言っていること全然当たっていないね」となっちゃうのは怖いなという気がするので、田邊さんどうですか(笑)?

田邊:そうですね……(笑)。でも僕たちTGCがひとつの目標、夢として掲げているのは「ゲームをする」という体験が、もっとみなさんの生活の中に浸透していってほしいということなんですね。

たとえば「映画を見る」という行為は結構生活に溶け込んでいて「昨日こんな映画見たよ」「好きな映画はなに?」と、わりと人を選ばずに会話ができるじゃないですか。

でもゲームってまだニッチな部分があって、「昨日こんなゲームをしたよ」って話せる相手はまだ限定的だと思うんです。これをもっとだれとでも気軽に話せるものに広げていきたいなと。

僕自身はゲームも映画と同じように、もしかしたら映画よりも幅広い感情体験をさせてくれるものだと思っているので、たとえば僕もうちの母とゲームの話をもっと気軽にできるようにしたいなって思っています。

なので予測ではなく希望なんですが、今リリースされているだけでもすでに多様なゲームが存在しているので、これからさらにもっといろんな作品が増えていって、何年後かわからないですけど、身近になる日がくるんじゃないかと思います。

素人目線ですが、オンラインゲームがひとつの起点となって、すでに身近になってきているのを感じます。2年くらい前に東京ゲームショウに出展された方に取材させていただいたときに「今の若者のあいだでは、家に帰ったらとりあえずオンラインゲームをつないで友だちと話すのが普通だよ」とおっしゃっていて、ゲームの役割が増えているのを実感しました。

水谷:コミュニケーションツールというとSNSやメッセージアプリをイメージされる方も多いと思うんですけど、オンラインゲームだと体験までもリアルタイムで共有できますよね。

物理的には何時間もかけないと会いに行けないような人と一瞬でつながることができて、インタラクティブメディアとして、一緒にドキドキしたりわくわくしたり、いろんな感情を共有することができるので、オンラインゲームというメディアの可能性は、これからさらにどんどん大きくなっていくと思います。

今はまだ、オンラインゲームを通じて離れた人同士、あるいは会ったことがない人同士つながって交流することを、普段の生活とは別にあると感じる人もいると思いますが、それ自体が生活の一部になっていくんじゃないかな。

もしかしたらゲームという媒体ですらなくなっているかもしれないし、生活のいたるところで、だれかとつながって、感情体験を共有するっていうのがもっと浸透していけばおもしろいなと思います。

たしかに、たとえば足が不自由な方や声を出せない方が、普段は遠くへ出かけることができなかったり、手話のわからない方とコミュニケーションをとるのが難しかったりするなか、ゲームの中ではだれもがみんな同じ条件下で楽しく交流できるという側面もありますし、個人的にはゲームが未来を明るくしてくれると期待しています。

水谷:そうですね、Skyもだれもが安全に気兼ねなく自分自身を表現できる場になっていけたらいいなと思います。

田邊:コミュニケーションのかたちって人それぞれたくさんあると思うので、今までのそれが置き換わるのではなく選択肢が増えるというイメージですよね。

人と人との新しいつながり方が増えて、コミュニケーションの手段も増えて、でももちろん今までの方法も楽しめるのでオプションが増えるという感覚というか、これからさらに増えていくことで本当に未来に希望が持てると思います。

上書きするのではなくオプションで増えていく世界観

今さらですが、Sky5周年イベント「SkyFest 2024」おつかれさまでした!2日間異なるプログラムで準備から大変だったと思います。

(イベントレポートはこちら

水谷:1日目と2日目でまったく違うことをするっていうのはだいぶ無茶な計画だったんですけど(笑)、やっぱりなかなか現実世界でファンの方々と交流できる機会はないのでチャレンジしました。

そもそもプログラム内容をすべてはまだ発表していないという段階で、すでに2日間とも来たいっておっしゃる方々がたくさんいらっしゃって、せっかく来ていただいて同じことをするのも申し訳ないという気持ちもありましたし。

そのうえで来られない方にも楽しんでいただけるよう、ゲーム内でも同時にイベントを開催しました。

実際の東京の会場とリアルタイムに連動してシンクロするようにして、世界中のプレイヤーと来場者が体験を共有し合える場を新しい技術を用いて実現できたんです。

本当に名前のとおり「お祭り」という感じですね。私自身はSky初心者なんですが、会場にはビギナーも古参ファンの方もみんなで一緒に楽しめる工夫が随所にあって、まさにSkyのコンセプトが再現された世界観だなと思いました。

(取材という名目で「SkyFest 2024」を満喫する筆者と編集部員)

改めて最後に、ファンの方々に一言メッセージをいただけますか?

田邊:繰り返しになってしまいますが、本当にSkyというのはプレイヤーのみなさんなしには語れないものなので、いつもありがとうございますというのをまずお伝えしたいですね。

おかげさまでSkyの世界はどんどん広がっていって、できることや遊び方もどんどん増えていっています。先ほどのお話と似ていますが、Skyについても今までの遊び方を上書きするのではなく、どんどんオプションが増えていると思っています。

大勢でわいわい楽しく遊んでもいいし、以前バーチャルコンサートを行った際に1万人を超えるプレイヤーの方々が集まってギネス世界記録に認定されたんですが、そういう刺激的な体験だけでなく、たとえばすれ違う人に軽くほほえみかけられてちょっとうれしかったというようなささやかなつながりも楽しめます。

それぞれ好みが違っていても、それぞれの遊び方で同じ世界を共有できるって、そんな夢みたいな場所をこれからもみなさんと一緒に作っていきたいと思っているので、応援してくださるとうれしいです。

水谷:今回のイベントでも発表させていただいたんですが、プレイヤーのみなさまのQOLを高めていくために、日々Skyの世界で過ごすなかで、より快適に、便利にゲームを楽しんでいただけるような機能拡張もまもなくリリースします。

そのほかにもどんどんプレイ環境を改善していきたいと思っているんですが、そのうえでプレイヤーのみなさんからのフィードバック、ご意見はすごく大切です。

私たち自身が「こうすると便利だろう」と考えても、やっぱり開発する立場で見方の偏りや気づきにくくなっている部分は正直あるので、これからもみなさんと一緒にこのSkyの世界を育てていきたいと思っています。

田邊も言っていましたが、もっともっとどんなプレイスタイルも受け入れられるゲームにしていきたいですね。

(ジェノヴァ・チェンさんの描いたイラストを見ながら仲良くお話しされている姿が印象的だったので、最後にオフショットをちらり。手にしているのはインタビュー後に書いていただいたかわいいサインです)
写真:LUCAS EIZO

この記事を書いたライター

浦田みなみ
浦田みなみIP mag編集長

東京生まれ、渋谷ラバー。2011年小説『空のつくりかた』刊行。その後アパレル企業のコピーライティングをしたり、webメディアを立ち上げたり。最近の悩みは、趣味が多すぎてなにも極められないこと。でもそんな自分が好きです。

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