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「Canvaで作成したデザインを商用利用したいけど、著作権を侵害するのか」「Canvaで、どのような行為が著作権侵害にあたるのか」
Canvaを利用するにあたって、このように著作権に関する疑問を持つ方も多いでしょう。
基本的に、Canvaで作成したデザインの商用利用は可能です。ただし素材やデザインの著作権は第三者が所有するため、使用方法によっては著作権の侵害にあたります。
本記事では、Canvaの素材の著作権や商用利用について解説します。著作権侵害になるケースやならないケースを紹介するので、Canvaを活用する前にぜひ参考にしてください。
Canvaの利用に関する著作権について、以下のように規定されています。
基本的に、デザインの作成者が著作権を所有します。
Canva内の素材を使用せず、自分ですべてオリジナルのデザインを作成した場合、作成者である自分が著作権の所有者となります。
第三者が作成したCanva内にある素材やデザインを使用した場合は、その第三者が著作権を所有します。Canvaのテンプレートを活用した場合も同様に、テンプレートを作成した第三者が著作権者です。
Canvaを使えば、第三者が提供する素材やデザインを使用できますが、デザインの所有権が移るわけではありません。あくまでライセンスを持っているだけで、著作権は作成者に帰属します。
参照:Canvaヘルプセンター「Canvaで作成したデザインの著作権の帰属」
参照:Canva「知的財産ポリシー」
著作権について、以下の記事で詳しく解説しています。
Canvaは、オリジナルデザインを作成した場合に限り、商用利用を認めています。
商用利用可能な例は、以下のとおりです。
Canva内にあるデザインを商用利用する際、クレジットの表記は不要です。著作権者に許諾を取る必要もありません。
参照:Canvaヘルプセンター「Canvaを使って販売用のデジタルおよび物理的な製品をデザインする」
Canvaを利用して著作権侵害となる事例は以下の4つです。
Canva内にある素材を無加工で販売したり、再配布することは著作権を侵害する行為です。素材やテンプレートの著作権は、作成した第三者が所有しているためです。
複数の素材を組み合わせたり、文字や色を活用し、オリジナルのデザインを作成すれば問題ありません。ただし以下に該当する場合、オリジナルの著作物と認められない可能性が高いため、注意が必要です。
参照:Canvaヘルプセンター「Canvaを使って販売用のデジタルおよび物理的な製品をデザインする」
Canvaの素材を使用したデザインやロゴを商標登録することも、著作権侵害となる行為です。Canvaにある素材は、第三者の著作物であり、著作権で保護されているためです。
商標登録をした場合、著作権侵害のみならず商標権侵害にもあたり、民事上の請求や刑事上の罰則を受ける可能性があります。
商標法第29条においても、商標登録出願日より前に生じた他人の著作権と抵触する場合は、登録商標を使用できないとされています。一般的に商標は他社と区別する目的で使用されるため、独自性が求められます。
Canvaで第三者が作成した素材やテンプレートを無加工で使用し、デザインやロゴとして商標登録することは許可されていません。Canva内の素材は、登録ユーザーであれば誰もが使用可能で、ロゴを作成してもデザインが類似しやすいためです。
Canvaでロゴを作成する際は、以下に該当する場合であれば、商標登録が認められるでしょう。
参照:Canva「Canvaで作成したロゴの商標登録」
参照:e-Gov 法令検索「商標法」
なお、商標登録についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
Canvaに限らず、既存の著作物のデザインを盗用した場合は、著作権侵害となるおそれがあります。
文化庁によると、著作権侵害の要件は以下のとおりです。
“①「後発の作品が既存の著作物と同一、又は類似していること」(類似性)
②「既存の著作物に依拠して複製等がされたこと」(依拠性)
の両方を満たすことが必要とされています。”
引用:文化庁「AIと著作権」
つまり、既存の著作物を参考にデザインを作成し、明らかに類似していると判断された場合は、著作権を侵害する行為と見なされるでしょう。
一方で、既存のデザインと類似したものが偶然できたと証明できれば、著作権侵害にはあたらないです。
Canvaにある素材のうち、「Editorial Use Only」と表記のある素材を商用利用した場合、著作権の侵害になります。
エディトリアル素材とは、写っている人物や商品などの同意を得られず、商用利用が認められていない素材のことです。
エディトリアル限定の素材の使用用途は、ニュースや報道、ドキュメンタリーなどへの使用に限定されます。
参照:Canva「Canva's Content License Agreement」
Canvaを使って著作権侵害にあたらない行為は、以下の3つです。
Canva内で、独自に加工や編集したデザインを商用利用した場合、著作権の侵害になりません。オリジナルのデザインを作成した場合、自分が著作権を所有するため、自由に使用できます。
第三者の著作物を組み込んだデザインの場合、著作権は第三者が所有します。しかし、Canva内で商用利用のライセンスが適用されるため、著作権の侵害行為とはなりません。
有料素材の場合、ライセンス取得のために料金の支払いが必要ですが、無料素材の場合はそのまま使用可能です。
注意が必要なのは、無料素材に以下が含まれる場合です。
トレード・ドレスとは、商品のパッケージやデザイン、商品全体のイメージを指す言葉です。
上記は独自に使用許可が必要になるケースが存在するため、無料素材を商用利用する際にはよく確認しておきましょう。
テンプレートを自作して個人で販売することは、Canva上で認められているため著作権侵害になりません。
以下のいずれかの要件を満たしていれば、オリジナルテンプレートと見なされ、販売を許可されます。
一方で素材を加工していない場合や、変更箇所が文字や色のみの場合は、オリジナルの著作物と見なされず販売できません。
私的利用の範囲であれば、Canvaのデザインを使用しても著作権の侵害にあたりません。著作権法で、私的利用の範囲の使用が認められているためです。
著作権法第三十条によると、私的利用の範囲は、以下のように記載されています。
“個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること”
引用: e-Gov法令検索「著作権法」
第三者に販売、配布する意思はなく、個人利用の場合に限り、素材を無加工の状態で使用しても問題ありません。
たとえばCanva内にある素材を無加工の状態で印刷し、スマホケースやTシャツを作成した場合も、自分や家族のみが使用する目的であれば問題ありません。
誰もが閲覧可能なSNS上で公開したり、他人に販売や配布する行為は著作権侵害にあたります。
参照: e-Gov法令検索「著作権法」
Canvaを使うことで著作権を侵害するリスクとして、以下が挙げられます。
Canva上で著作権を侵害するリスクの一つが、Canvaのペナルティを受けることです。Canva上におけるペナルティとは、コンテンツやデザインの削除、最悪の場合はアカウントを停止されることです。
Canvaは、第三者の知的財産権やプライバシーの権利などを侵害しないことを前提に、サービスの利用を認めています。
利用規約に違反した場合、以下のような措置を受ける可能性があります。
参照:Canva「利用規約」
著作権の侵害となった場合、民事上の請求を受けたり、刑事上の罰則を与えられる可能性があります。
著作権の侵害は、著作権者の告訴によって起訴される親告罪です。民事上の請求と刑事上の罰則は、以下にまとめています。
民事上の請求 | 刑事上の罰則 |
---|---|
・侵害行為の差止請求 ・名誉回復等の措置請求 | 10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金 |
参照: e-Gov法令検索「著作権法」
参照:特許庁「著作権侵害への救済手続」
Canvaの著作権や商用利用に関するよくある質問は、以下の2つです。
Canva内にある音楽素材や動画素材の商用利用は可能です。
Canvaを使って作成した動画を、YouTubeやSNSで公開することも許可されています。ただしSNSで動画を公開する際に、ライセンス検証が必要になります。
ライセンス検証をしていない場合、公開したメディアにライセンス所有者と認識されず、著作権の申し立てを受ける可能性があります。
Canva内の音楽、動画素材を活用してYouTubeやFacebook、Instagramに投稿する際は注意が必要です。
また、Canva内のオーディオ音源は、無料素材と有料のPro素材に分かれており、有料の音楽素材を使用する際には、ライセンスを購入しなければいけません。もしくは、Canva Proへのアップグレードが必要になります。
参照:Canva「【Canva動画編集者必見】 YouTubeでコンテンツIDの申し立てを回避する方法とは?Canva Proオーディオ素材をYouTube動画に使うときの注意点について」
YouTubeにおける音楽の著作権については、以下の記事で詳しく解説しています。
2025年1月時点で、CanvaはText to Image(画像生成AI)で作成された画像の著作権を主張しておらず、Canvaのコンテンツ使用許諾契約の対象外としています。
Canva公式サイトによると、AI製品規約に従う限りは、作成した画像の使用を認めています。
とはいえ、そのユーザーが画像の著作権者となるわけではありません。AI生成画像は、基本的に著作権が発生しないと考えられています。
令和5年6月に文化庁が発表した資料によると、AI生成物の著作権については以下のように規定されています。
“AI生成物に、既存の著作物との「類似性」又は「依拠性」が認められない場合、既存の著作物の著作権侵害とはならず、著作権法上は著作権者の許諾なく利用することが可能です。”
引用:文化庁「AIと著作権」
生成AIの性質上、著作権の有無については明確にできず、著作権が発生するケースもあります。
参照:Canvaヘルプセンター「Canvaを使って販売用のデジタルおよび物理的な製品をデザインする」
参照:文化庁「AIと著作権」
生成AIイラストの著作権について、以下の記事で詳しく解説しています。
Canva内にある素材やテンプレートには著作権があるため、自分のデザインに活用する際に著作権を侵害しないよう注意が必要です。
素材やテンプレートを無加工の状態で販売、配布する行為や、既存の著作物を真似してデザインを作成する行為は著作権侵害にあたります。オリジナルでないデザインやロゴの商標登録も認められていません。
Canvaの利用によって著作権を侵害した場合、コンテンツやデザインの削除はもちろん、アカウントの永久停止につながるおそれがあるでしょう。またCanva上のペナルティだけでなく、民事上の請求や刑事上の罰則を受けるリスクがあります。
利用規約や著作権のルールをよく確認したうえで、Canvaを利用してください。
IPにまつわる知識・ニュースを随時発信しています。