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「猫ミームの著作権の扱いは?」「猫ミームが著作権侵害にあたるケースは?著作権侵害にあたらないケースもある?」「猫ミームを利用するリスクを知りたい」
流行時に猫ミームを使っていたものの、こういった疑問をもつ人もいるでしょう。
猫ミームを無断利用する場合、著作権侵害になります。猫ミームの元ネタとなる動画や画像には著作権があるためです。
本記事では、猫ミームが著作権侵害にあたる理由や無断利用した際のリスクを解説します。著作権侵害にあたるケースとあたらないケースについても触れているので、これから猫ミームを利用する際も参考にしてください。
猫ミーム素材の無断使用が著作権侵害にあたることについて、以下の観点から解説します。
それぞれ解説していきましょう。
猫の写真素材や背景画像、音楽など、猫ミームの元ネタには著作権があります。動画や写真は撮影者、楽曲は作詞者・作曲者に著作権が発生するためです。
また楽曲は、歌手やレコード会社などに著作隣接権が発生します。著作隣接権とは、著作者でないものの、著作物を伝達する役割を担う者に認められる権利です。
たとえば、猫ミームの一つとして人気の“Happy Cat”においては、以下の素材に対して著作権が発生します。
猫の写真素材や背景画像は、撮影者の意図する構図で作られているケースが多いです。撮影者の創作性が存在すると解釈され、著作権で保護される著作物と考えられます。
『My Happy Song』は作詞者・作曲者に著作権が発生するため、無断利用は著作権侵害にあたります。
参照:e-Gov法令検索「著作権法」
参照:弁護士ドットコム「大人気の「猫ミーム」動画、米津玄師さんやグッズまで登場…元ネタの著作権侵害にはあたらないの?」
なお、著作権についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
インターネット上に存在する猫の写真素材・背景画像・音楽などを無断利用することは、著作権侵害にあたります。著作権は他人に著作物を無断で利用されないために保護する権利であり、無断利用は権利を侵害する行為と見なされるためです。
なお、二次利用した第三者が猫ミームの利用を許可していても、原著作者が許可していなければ著作権侵害になります。二次的著作物の著作権は原著作者にもあるためです。
参照:e-Gov法令検索「著作権法」
さまざまな猫ミームがインターネット上に公開されましたが、2024年11月時点では日本で裁判に発展した事例はないようです。著作権侵害は親告罪であり、被害者側が告訴しない限り検察等が起訴できないためです。
猫ミームを投稿する人があまりにも多く、一人ひとりを訴えることが難しいとも考えられます。
参照:弁護士ドットコムニュース「大人気の「猫ミーム」動画、米津玄師さんやグッズまで登場…元ネタの著作権侵害にはあたらないの?」
猫ミームを利用して著作権侵害に該当するケースは以下のとおりです。
それぞれのケースについて解説します。
猫の素材を無断利用した動画をインターネット上に投稿すると、著作権侵害に該当する可能性が高いです。猫の写真・動画素材には著作権があるためです。
猫ミームによく使用されている猫の素材は利用許諾の有無が明確でないものも多く、著作権侵害のリスクが高いといえます。インターネット上に投稿されている猫の動画を自身の動画に無断使用することは避けましょう。
参照:e-Gov法令検索「著作権法」
CD音源や公式に提供されている音源を無断利用すると著作権侵害に該当します。CD音源や公式に提供されている音源には、著作権や著作隣接権があるためです。
著作権は、歌詞や曲を作った作詞家や作曲家が持っています。著作隣接権は、著作物を伝達した人に発生する権利で、歌手・演奏家やレコード会社などが持っています。
CD音源や公式に提供されている音源を、著作権・著作隣接権を持つ人や団体に許諾を得ず利用した場合、権利侵害にあたるため注意しましょう。
参照:e-Gov法令検索「著作権法」
他人が作成した猫の素材・猫ミームを再配布すると、著作権の侵害に該当します。著作物の譲渡や再配布は著作権者が持つ権利であり、第三者が再配布することは権利侵害にあたるためです。
たとえば、インターネット上に掲載された元素材を端末に保存して、別のプラットフォームにアップロードすることが挙げられます。
自分が作成した素材として猫ミームのように表示することも、著作権侵害にあたるので注意が必要です。
参照:e-Gov法令検索「著作権法」
猫ミームを無断利用したグッズを販売することで、著作権の侵害に該当します。元の画像や動画の翻案権侵害にあたるためです。
著作権法27条によると、著作者は著作物を翻案する権利を専有します。著作物の翻案は、以下のような行動が挙げられます。
著作者の許可なく、元動画や元画像をもとにグッズを製造する行為は翻案行為と見なされ、翻案権侵害にあたるのです。
そのため、猫ミームを無断でグッズ化した場合、以下の行為が著作権侵害にあたると考えられます。
著作権者に無断で猫ミームをもとにキーホルダーやTシャツなどのグッズを作って販売するのは避けましょう。
参照:e-Gov法令検索「著作権法」
参照:公益社団法人著作権情報センター「著作者にはどんな権利がある? | 著作権って何? | 著作権Q&A |」
猫ミームを利用しても著作権侵害に該当しないケースは以下のとおりです。
それぞれのケースについて解説します。
私的利用の範囲で楽しむ場合は、著作権侵害に該当しません。著作権法第30条において、私的使用のための複製は著作権侵害とならないと定められているためです。
以下のような場合は私的利用と考えられます。
私的利用の範囲は「個人的または家庭内など、限られた範囲内で使用を目的とすること」と定められています。ただしSNSのアイコンに設定したり、SNSに投稿したりすることは、私的利用の範囲を超えるため注意しましょう。
参照:e-Gov法令検索「著作権法」
インターネット上から素材を集めるのではなく、自分自身で素材を用意すれば著作権侵害に該当しません。自分で作成した著作物は、自分が著作権を持つためです。
以下のような方法が挙げられます。
自分で音源を作成することが難しい場合は、音楽制作を作曲家に依頼して有償で作成してもらう方法もあります。
ただし有償で作成を依頼した場合、音源の著作権は作曲者に帰属することに注意が必要です。契約書に著作権を依頼者に譲渡することを盛り込むようにしましょう。
利用許諾がある猫の素材や音楽を使用することで著作権の侵害を避けられます。
考えられるケースは以下の3つです。
著作権管理団体と包括契約している組織が提供する音楽を利用する場合、主な著作権管理団体を知っておくことが大切です。具体的には以下が挙げられます。
直接許可取りをする際にどうしても著作権者の所在がわからない場合は、文化庁長官の裁定を受けて利用できるケースもあります。
参照:JASRAC「音楽の著作権とは」
参照:NexTone「faq」
参照:映像コンテンツ権利処理機構「事業内容」
参照:文化庁「著作権者不明等の場合の裁定制度」
猫ミームの著作権を侵害して訴訟された場合のリスクは以下のとおりです。
猫ミームの著作権を侵害して訴訟された場合、民事上のリスクを負います。具体的には以下の請求を受けるおそれがあるので注意が必要です。
公開を差し止めされるだけではなく、多額の損害賠償請求を求められたり、謝罪広告の掲載を求められたりするケースがあります。
請求内容 | 概要 |
---|---|
差止請求 | 著作権を侵害された場合や侵害されるおそれがある場合、侵害者に行為の停止・予防を請求できる |
損害賠償請求 | 著作権を侵害されて損害を受けた場合、侵害者に損害賠償を請求できる |
不当利得返還請求 | 著作権を侵害して侵害者が利益を得た場合、侵害者に利益を返還するよう請求できる |
名誉回復措置請求 | 著作権を侵害された場合、侵害者に名誉や声望を回復する措置を請求できる |
参照: e-Gov 法令検索「著作権法」
参照:e-Gov 法令検索「民法」
猫ミームの著作権を侵害して訴訟された場合、刑事上のリスクを負うこともあります。具体的には以下の刑事罰を受けるおそれがあるので注意しましょう。
著作権法第124条によると、法人の場合、著作権侵害を行った行為者だけではなく法人にも罰金刑が科されます。
参照: e-Gov 法令検索「著作権法」
参照:東京スタートアップ法律事務所「著作権の侵害をした場合、された場合の対処」
参照:経済産業省 特許庁「著作権侵害への救済手続」
猫ミームの著作権についてよくある質問は以下のとおりです。
それぞれの回答とあわせて紹介します。
猫ミームは著作権者の利用許諾を得ていれば、著作権を侵害せずにYouTubeで利用できます。ただし許諾を得ていない場合は、著作権侵害の申し立てを受けるおそれがあるので避けましょう。
著作権侵害と見なされた場合、以下のリスクがあります。
自身が素材から作成したオリジナルの猫ミームであれば問題ありません。
参照:YouTube「著作権およびフェアユースに関するポリシー」
なお、YouTubeにおける音楽・BGMの著作権についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
猫の写真・動画などの素材には著作権があり、著作権フリーではありません。著作権が消滅または放棄されていない限り、原則として著作物には著作権があります。
ただし、作成者本人が利用許諾をしているものは利用可能です。
参照:e-Gov法令検索「著作権法」
なお、Web上の写真の著作権についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
Happy Catの猫ミームは主に以下の3つの要素にそれぞれ著作権者が存在しています。
要素 | 著作権者 |
---|---|
猫の素材 | 動画を撮影した方が所有している |
音楽 | 『My Happy Song』を提供しているSuper Simpleが問い合わせ先となる |
背景画像 | 背景のサンプルを作成した個人または法人が所有している |
著作権者の許可なく、素材を勝手に使用したり加工したりすると、著作権を侵害することになるため注意しましょう。
参照:Super Simle「スーパーシンプル」
猫ミームの動画を結婚式で流すと、著作権侵害になる可能性があります。猫の素材・背景・楽曲にはそれぞれ著作権が存在するためです。
私的利用は著作権法上認められていますが、著作権法30条の1において他人に公開することは私的利用の例外とされています。結婚式は不特定多数の参加者に向けて公開するため、私的利用の範囲を超えるといえるでしょう。
猫ミームのBGM音源がJASRACなどの著作権管理団体で管理されている楽曲である場合、管理団体に許可を得る必要があります。
参照:e-Gov法令検索「著作権法」
参照:JASRAC「ブライダルシーンでの音楽利用」
なお、結婚式における著作権についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
猫ミームをSNS上に投稿すると著作権を侵害する可能性が高いため、公開する際は慎重に判断しなければいけません。構成する猫の素材・背景画像・音楽にそれぞれ著作権があるためです。
著作権侵害で訴訟された場合、民事請求や刑事罰を受けるおそれがあります。利用したい場合は、著作者の利用許諾の有無やリスクを十分に確認するようにしましょう。
自分で素材を用意するなら著作権侵害のおそれはないため、安心して猫ミームを楽しめます。
IPにまつわる知識・ニュースを随時発信しています。