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「Web上の写真にも著作権はある?」「インターネットの写真はどこまで使用できる?」「フリー画像なら無断で自由に使ってもよい?」と写真選びに迷う方は多いでしょう。
結論からいうと、Web上の写真にも著作権はあります。適切な使用法を守らなければ著作権の侵害となり、トラブルや企業の信用失墜にもつながりかねません。
本記事ではWeb上の写真の利用について、著作権侵害になるケースとリスク、肖像権との違い、著作権を侵害せず写真を利用するポイントを解説します。
Web上にはSNSやフリー画像サイトなどに多彩な写真がありますが、著作権を侵害せず使用できる方法はケースバイケースで異なります。本記事で写真の適切な利用法を理解し、安全に活用しましょう。
写真も絵画などと同様に著作物として扱われるため、著作権があります。
著作権とは、思想や感情を創作的に表現した作者に与えられる排他的権利で、知的所有権の一部です。写真の場合は基本的には撮影者が著作者・著作権者となり、個人がスマートフォンで撮影した写真なども著作権の対象に含まれます。
著作権は登録によらず、表現作品の作成時点で制作者に自動的に付与され、日本での保護期限は原則著作者の死後70年後です。
著作権のある写真にもかかわらず、著作権者の許諾を得ず、または許諾の範囲を超えて利用した場合は基本的に著作権侵害になります。私的利用や教育以外の目的で写真を無断で利用・転載すると、複製権や公衆送信権の侵害になるため注意しましょう。
参照:e-Gov法令検索「著作権法」
参照:公益社団法人 日本写真家協会「写真著作権と肖像権」
著作権について知りたい方は以下の記事で詳しく解説しているので、チェックしてください。
著作権者の承諾を得ずに写真を無断で利用または、自分が作った著作物だと偽って利用した場合、著作権侵害として民事上の請求や刑事上の罰則の対象となります。著作権侵害は犯罪であり、被害者は権利者として侵害者の告訴が可能です。
著作権を侵害した者には「10年以下の懲役または1000万円以下の罰金」が科されます。企業などの法人が著作権を侵害した場合は「3億円以下の罰金」となり、科料が重くなるため注意が必要です。
参照:公益社団法人著作権情報センター「著作権Q&A」
著作権を侵害せずに写真を利用する方法は以下の4つです。
一つずつ見ていきましょう。
自身が撮影した写真など、自身や自社に著作権がある写真を使えば、著作権侵害を避けられます。著作権者は自身の著作物を自由に利用できるためです。
たとえば「撮影が得意な他部署の同僚に撮影してもらい、広報に活用する」場合も著作権侵害にあたりません。
自社従業員が勤務中に撮影した写真の著作権は会社にあります。撮影が勤務外の時間であっても、撮影者に承諾を得て使用するのであれば、著作権上問題はありません。
著作権者から許諾を得た写真を使えば、著作権の侵害になりません。著作権者は他人に著作物の利用許諾を与えることができるためです。
たとえば「特定の芸能人が所属する芸能事務所から使用許可を得て、自社商品を手にしたその人の写真をホームページに掲載する」といった場合です。
上記のケースにおいては著作権者は芸能事務所であり、著作権者の許可を得ているので著作権上は問題ありません。ただし人物の写真を使う場合は後述する肖像権にも配慮が必要です。
芸能人の写真の著作権・肖像権について詳しく知りたい方は、以下の記事で解説しているのでチェックしてください。
ロイヤリティフリーの素材の写真を使えば、著作権侵害になりません。
ロイヤリティフリーとは、利用規約の範囲内で断りなく使用できるコンテンツのことです。いわゆるフリー素材の多くは、ロイヤリティフリーであることが多いです。
たとえば「プレスリリース用の画像を、利用規約上『商用利用可能』の素材提供サイトからダウンロードし使用する」といったケースは著作権侵害にあたりません。
ただし素材サイトの中には商用利用が禁止されているサイトもあるため、利用規約を確認する必要があります。
また、もし素材サイトから著作権を侵害している写真をダウンロードした場合、サイト運営者ではなく使用者が損害賠償を請求されるため注意が必要です。
パブリックドメインの写真を利用すれば、著作権の侵害になりません。
パブリックドメインとは、知的創作物に著作権や知的財産権がない状態のことで、誰でも利用が可能な素材のことです。具体的には以下の状態を指します。
ただし著作権者が著作権を主張していなくても、権利放棄を明言していなければパブリックドメインにならないため注意しましょう。また著作権が放棄されていても、著作者の名誉を傷つける方法での利用は禁止されています。
参照:e-Gov法令検索「著作権法(第113条11項)」
決められた引用ルールの範囲内で写真を利用すれば、著作権侵害になりません。著作権侵害にならない引用のルールは、以下です。
なお「引用」と明記すれば無制限に利用できるわけではなく、上記のルールから外れていたら著作権侵害とみなされるため注意が必要です。
参照:e-Gov法令検索「著作権法(第32条1項)」
参照:文化庁「13 著作者の権利の制限(許諾を得ずに利用できる場合)」
写真利用が著作権侵害にあたるケースの具体例は以下です。
1は著作権者であるカメラマンの許諾のない目的外転用にあたり、1と4は著作権者に無断で写真を加工している点も著作権侵害です。2~4は著作権者の利用許諾がなければ侵害にあたります。
3は元の投稿を引用し「リポスト」するなら問題ありませんが、そうではなく自身の投稿としてその画像をXやほかのSNS、自社サイトで使う場合は著作権者の許可が必要です。
人物の写真を利用する際には、著作権の他に肖像権にも注意しなければいけません。肖像権とは、肖像(人の姿かたちおよびその画像、氏名など)を無断で利用されないための権利です。
肖像権侵害にあたる例は以下のとおり。
肖像権の保護期間は明文化されておらず、本人の死亡までとされるのが一般的です。ただし死後の肖像利用においても遺族のクレームにつながらないよう留意しましょう。
参照:一般社団法人 日本音楽事業者協会「プライバシーの権利、肖像権パブリシティ権とは」
なお肖像権については以下の記事で詳しく解説しています。
著作権を侵害せず、安全に写真を利用するポイントは以下の3つです。
それぞれ確認しましょう。
写真を利用する際には著作権者に利用可能範囲を確認すると安心です。
原則Web上のどのような画像や写真にも著作権があり、無断での使用はトラブルのもとです。写真・画像に記載されたクレジットから著作権者を把握し、利用可能範囲の設定を確認しましょう。
クレジットが記載されていない場合は、サイトの運営者に利用可能範囲を問い合わせると確実です。
素材サイトの写真を利用する際には、事前に利用規約などから目的どおりの使用が可能かどうかを確認しましょう。
近年は無料や月額会費制で、都度許可を取らなくても写真をダウンロードできるサイトが多くなりました。しかし画像素材サイトによって著作権の扱いが異なるため、確認が必要です。
素材サイトの多くは、利用規約に定められた範囲内で自由な利用を許可していますが、画像の著作権が放棄されているとは限りません。
「著作者の氏名を明記」「商用利用は不可」など、サイトや素材によりルールや利用範囲が異なるため、利用規約に沿って正しく写真を利用しましょう。
人物が写った写真を利用する場合は肖像権に配慮し、被写体の利用許諾があるかどうかを確認しましょう。
被写体の承諾が取れている写真素材を選んで使えば、肖像権の侵害にはなりません。料金がかかりますが、著作権者の承諾を得た利用権(ライセンス)を購入するサイトを利用する方法もあります。
ライセンス型の素材サイトについても、利用規約を確認のうえ使用しましょう。
写真の著作権に関するよくある質問の例は、以下のとおりです。
海外にも著作権を保護するルールがあるため、海外の写真だからといって自由に使用できるわけではありません。海外で著作権に関連するのは以下の条約です。
条約名 | 概要 |
---|---|
ベルヌ条約 (万国著作権保護同盟条約) | 著作権に関わる国際的ルールを定めた条約で、著作権における国際的保護の基本 |
万国著作権条約 | 国内法の関係でベルヌ条約を批准できなかった国に対し、ベルヌ条約を補完する目的で、国際連合教育科学文化機関(UNESCO)の提唱により定められた条約 |
「ベルヌ条約」の原則に従い、著作権は国際的に保護されていると押さえておきましょう。
参照:公益社団法人 日本写真家協会「写真著作権と肖像権」
フォトコンテストの応募作品は原則として、撮影者が著作権者となります。
主催者が賞金や賞品を出したとしても、著作権が主催者側に移るわけではありません。ただし応募要項に「著作権は主催者に帰属する」と記載している場合は、著作権は主催者側に移りえますが、著作者人格権は撮影者のままです。この場合、主催者は無断で作者名変更や作品改変はできません。
参照:公益社団法人 日本写真家協会「写真著作権と肖像権」
商用利用可能と明記されているのであれば、画像サイトの写真をそのまま素材として商用利用する分には問題ありません。
ただし「商用利用可能」は「そのまま商品化可能」ではなく、あくまでも「素材としての使用は可能であること」を指しています。
素材をほぼそのまま販売する行為は、クレジット表記があったとしても公開差し止めや賠償請求の対象となるため注意しましょう。たとえば、写真を以下のように商品化するのは認められません。
参照:ぱくたそ「利用規約について」
参照:写真AC「利用規約」
「著作権フリー」と「ロイヤリティフリー」の意味は以下のとおりです。
定義 | 利用上の注意 | |
---|---|---|
著作権フリー | 著作者が著作権を放棄したか保護期間が終了している素材 | 著作物や著作者の名誉を傷つけなければ原則無制限に利用可能 |
ロイヤリティフリー | 利用規約の範囲であれば、都度手続きせず利用できる素材 | ・使用許可の範囲がある(無制限ではない) ・有料のケースもある |
著作権フリーはパブリックドメインと同義で、著作権が放棄されているため、著作権者の名誉を傷つけない限りは商用利用含めて利用できます。
ロイヤリティフリーは規約の範囲に限り利用できる写真で、いわゆるフリー素材の多くが該当します。
Web上の写真にも著作権はあり、利用するためには原則著作者の許諾が必要です。
著作権には期限がありますが、著作権のある写真には利用できる範囲が決められています。無断または利用範囲外での使用は著作権侵害となり、民事・刑事の罰則対象となります。著作権侵害は企業の社会的信頼失墜にもつながるため、写真の安易な無断使用は禁物です。
著作権侵害を防ぐうえで、著作権の所在をクレジットや直接の問い合わせで確認し、フリー画像サイト使用時には利用規約の確認が大切です。
Web上の写真すべてに著作権があるという前提のもと、適切な使用方法を選択しましょう。
IPにまつわる知識・ニュースを随時発信しています。