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「著作権フリーで使えるキャラクターを知りたい」「著作権フリーのキャラクターはどこまで自由に使える?」
自社商品・サービスのプロモーションにアニメなどのキャラクターを使用したいと考え、自由に使えるキャラクターを探している方もいるのではないでしょうか。
実は著作権フリーといわれるキャラクターも、無制限に利用できるとは限りません。なかには著作権者の許諾が必要なケースもあり、使用方法を誤ると著作権を侵害してしまうリスクもあるため注意が必要です。
本記事では著作権フリーでキャラクターを使う具体的な方法と注意点、キャラクターを安全に使用するポイントを解説します。
著作権フリーのキャラクターの適切な使い方を理解し、著作権を侵害せず安全に活用しましょう。
著作権フリーのキャラクターとは、著作権のないキャラクターのことです。
著作権フリーとは「著作権から自由である、著作権に拘束されない」を意味する言葉で、「パブリックドメイン」となった著作物とほぼ同義です。
具体的には以下の著作物を指します。
実際には「無料もしくは無制限に使用できる」ものや「規定の範囲内で使用できるもの」というニュアンスで使用されているケースも多いです。
また、キャラクターは外見や性格などの抽象的な概念であり、特定の人物の姿形を表した絵やイラストなどを指すものではありません。
概念であるキャラクターは著作権の対象にならず、以下の具体的なかたちで表現したときに「創作物」となり著作権が発生します。
創作物になった「キャラクター」を著作権者に無断で使用すると、著作権侵害となるので注意が必要です。
参照:JEPA|日本電子出版協会「パブリックドメイン」
「パブリックドメイン」の詳細は以下の記事で解説しています。
また、キャラクターの使用が著作権侵害となるケースについては、以下で詳しく解説しているので参考にしてください。
著作権フリーのキャラクターを使用する方法の一つに、「パブリックドメイン」になったキャラクターを使用することが挙げられます。
パブリックドメインとは著作権が消失した作品や、著作権が放棄された作品のことです。パブリックドメインとして使える有名なキャラクターには、以下があります。
いずれも著作権者の死後、保護期間が終了したことによりパブリックドメインとなったものです。
ただしパブリックドメインになったミッキーマウスは『蒸気船ウィリー』のオリジナルデザインのみであり、他のデザインについては著作権が残っています。
くまのプーさんについても、日本では原作小説1作目と2作目の文章のみがパブリックドメイン(アメリカでは挿絵まで)です。広く知られるディズニー作品の『くまのプーさん』については、2024年時点で著作権保護期間が終了していません。
歴史のある著名なキャラクターを使用する場合は、作品ごとにパブリックドメインになっているかどうかの確認が必要です。
くまのプーさんやミッキーマウスの著作権の詳細は以下の記事で解説しています。
著作権フリーのキャラクターを使うもう一つの方法は「パブリックアート」です。ここではパブリックアートの定義と使い方を以下の流れで解説します。
屋外の公共的な空間に常時設置されている芸術・文化作品をパブリックアートと呼びます。
パブリックアートであれば、原則として著作権フリーで使用が可能です。たとえば、商用利用目的などではないなら、写真をSNSに投稿したりブログにアップしたりしても問題ありません。
日本中に原作者と街のコラボレーションにより漫画やアニメのキャラクターのパブリックアートが実現した例もいくつかあります。以下はその一部です。
展示場所 | 原作者 | 作品・キャラクター名 |
---|---|---|
東京都 東京臨海高速鉄道「りんかい線 国際展示場駅」 | 手塚治虫 | 『ジャングル大帝』レオ、パンジャ 『鉄腕アトム』鉄腕アトム 『ブラックジャック』ブラックジャック、ピノコ 『ブッダ』ブッダ 他 |
熊本県 熊本市 他 | 尾田栄一郎 | 『ワンピース』ルフィ、サンジ、チョッパー、ブルック 他 |
宮城県 石巻市「いしのまきマンガロード」 | 石ノ森章太郎 | 『仮面ライダー』仮面ライダー 『サイボーグ009』サイボーグ009、フランソワーズ・アルヌール 『秘密戦隊ゴレンジャー』アカレンジャー 『がんばれ!ロボコン』ロボコン 『人造人間キカイダー』 他 |
参照:e-Gov法令検索「著作権法」
参照:公益財団法人 日本交通文化協会「手塚治虫氏の原画をもとに陶板レリーフ設置決定」
参照:ONE PIECE(ワンピース)「熊本復興プロジェクト!〜麦わらの一味、ヒノ国復興編〜」
参照:石巻マンガロード「『石巻マンガロード』とは?」
パブリックアートは基本的に自由な利用が可能ですが、例外として以下の行為が著作権法第46条で定められています。
また、著作権フリーで利用できる作品は常設されているものに限られ、催事などの一時的な展示は含まれない点にも注意が必要です。
参照:e-Gov法令検索「著作権法」
パブリックアートを複製し販売することは原則禁じられています。
たとえば、販売する目的でパブリックアートの写真を撮る行為や、写真を載せたカレンダーやポストカードを販売する行為などが挙げられます。
それでも商品にキャラクターを使うなど商用利用したい場合は、著作権者の許諾を得ることが必要です。交渉の結果、双方がライセンス料やその他の条件に合意できれば利用できます。
参照:e-Gov法令検索「著作権法」
パブリックアートの二次創作には許諾が必要です。一般に二次創作自体が法律上グレーであり、本来は著作権者の許諾のない二次創作は著作権侵害にあたるためです。
パブリックアートを利用して二次創作(二次的著作物の制作)をする場合は、作品に原作の「出所」を明示する必要があります。
トラブルなくパブリックアートを商用利用したい場合は、原作の著作者とライセンス契約を締結し、原作者名の記名・表示の仕方を決めておくことが大切です。
著作権フリーではないものの、許諾の範囲内であれば商用利用できるキャラクターは以下のとおりです。
引用:電書バト「ブラックジャックによろしく フリーダウンロードページ」
© 2010-2020 佐藤漫画製作所
『ブラックジャックによろしく』は、作者自身の意思により二次利用が無償化されている作品です。
同作品の版権をもつ「佐藤漫画製作所」はマンガデータを公開し、以下の規約を守れば商用利用をはじめ公衆送信や翻案、二次利用も可能としています。
なお規約に沿った利用であれば、事後報告によって二次利用を断られることはありません。
ただし無償で利用できるのは上記作品のみで、『新ブラックジャックによろしく』などその他の作品は対象外なので注意しましょう。
参照:電書バト「ブラックジャックによろしく フリーダウンロードページ」
引用:アンノウンX運営事務局「東方Project 25周年記念サイト」
©上海アリス幻樂団 ©アンノウンX
「東方Project」はキャラクターの二次創作を許容しています。
東方Projectとは、ZUN氏が運営する「上海アリス幻樂団」制作によるゲーム、書籍、楽曲などの一連の作品群のことです。2002年にサークルがリニューアルされ、現在は世界中にコミュニティを有するほどの人気プロジェクトに成長しています。
都度確認も必要なく二次創作を認めていることが特徴で、ゲームから音楽、書籍、YouTube動画、グッズにいたるまで多様な二次創作物が登場しています。「ゆっくりしていってね」というフレーズがおなじみの「ゆっくり実況」といったYouTube上のコンテンツも東方Projectのファンにより生み出されました。
ガイドラインによると、以下の行為は禁止されています。
公式サイト上には「個人でのファン活動としての二次創作は、常識の範囲内で基本的に自由」と明記されているため、法人による二次創作などについては別途、著作権者に確認をとったほうがよいでしょう。
なお「上海アリス幻樂団」と「東方プロジェクト」の商標はZUN氏が所有しています。
参照:アンノウンX運営事務局「東方Project 25周年記念サイト|ヒストリー」
参照:アンノウンX運営事務局「東方Project 25周年記念サイト」
参照:東方Projectよもやまニュース「東方Projectの二次創作ガイドライン」
引用:SSS合同会社「東北ずん子・ずんだもんPJ 公式サイト」
©sss
「東北ずん子・ずんだもんプロジェクト」では、地域限定でキャラクターの無償利用を認めています。
東北の活性化が目的の同プロジェクトでは、東北6県など指定された地域の法人・個人であれば、申請しなくてもキャラクターの利用が可能です。商用利用もパッケージに「自社名・住所」を記載することで認められ、さらに自社創作であれば2次創作の利用も可能です。
エリア外の企業の商用利用については、ライセンス契約(小口の場合はライセンスシール)によりグッズの販売が認められます。
またオリジナルキャラクターがわかる範囲で、素材の改変を認めている点も同プロジェクトの特徴です。
参照:SSS合同会社「東北ずん子・ずんだもんPJ 公式サイト」
著作権フリーのキャラクターでも制限なく自由に使用できるとは限りません。使用時は以下の点に注意しましょう。
キャラクターが著作権フリーであっても「商標登録」されている場合は、キャラクターに商標権があるため利用が制限されます。
商標登録とは、その企業(個人)の商品もしくはサービスであることを示すロゴや標識を登録し、権利化することです。
たとえばミッキーマウス(オリジナル版)の場合、著作権が切れていても商標権はあります。もし自社のブランドマークにミッキーマウスを使用するなど、公式と誤認されるような使い方をすると商標権侵害となるので注意が必要です。
商標権については以下の記事で詳しく解説しています。
二次的著作物においては、原作者だけでなく二次創作を行った著作者にも著作権が発生しています。
二次的著作物とは、既存の著作物を利用して新たに作られた作品のことです。二次的著作物の著作権保護期間は、二次的著作者の死後70年までとなるため、原作者の著作権保護期間を経過してもパブリックドメインにはなりません。
原作の保護期間終了後に二次的著作物を無断で使用すると、著作権侵害になる場合があるため注意が必要です。
参照:e-Gov法令検索「著作権法」
キャラクターがパブリックドメインとなっても、著作者人格権を侵害することは許されていません。
著作者人格権とは、著作者の人格における利益を保護する権利のことです。著作者の人格侵害や意に反する表現、加工・改変は著作者人格権で禁止されています。
また著作者の死後70年を経過した作品であっても、以下のような方法で著作物を使用した場合は、著作者人格権の侵害で遺族から訴訟を起こされる可能性があります。
著作権の保護期間を過ぎたとしても、著作権者の人格的利益に対する配慮は必要です。
参照:e-Gov法令検索「著作権法」
著作権が消滅して時間が経過していないパブリックドメインは、誰かが著作権を相続している可能性があります。
著作物の掲載元に著作権が消滅しているのか、本当にパブリックドメインになっているのかを問い合わせてからキャラクターを使用することが大切です。
後のトラブルを避けるために、もし著作権が消滅したかどうか不明の場合は、キャラクターを使用しない選択も視野に入れましょう。
海外著作物は日本と保護期間が異なる場合があるため、使用前に確認が必要です。
たとえばメキシコの著作権保護期間は著者の死後100年です。日本で利用する場合は日本の保護期間(70年)に従えばよいとされていますが、国によって扱いが異なるため確認が必要です。
また国によっては保護期間の他に特例が設けられている場合もあります。たとえば著作権者がアメリカ人の場合、「戦時加算」3,794日(死後70年と約10年5ヶ月)が加算された期間が経過するまで著作権フリーとはなりません。
海外の著作物を使用する際は、著作権保護期間の違いや特例を見過ごさないよう注意しましょう。
参照:公益社団法人日本写真家協会「Q:著作権の保護期間が著作者の死後70年以上の国は何処ですか?」
参照:文部科学省「文化審議会 著作権分科会 過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会(第7回)議事録・配付資料 [資料8]」
著作権を侵害せずにキャラクターを使用するポイントは以下の2つです。
素材サイトを利用する際は、事前に利用規約を確認し遵守することが大切です。
素材を利用できる範囲はサイトごとに異なります。利用時に利用規約で以下のポイントをチェックしましょう。
「商用利用不可」ではなく「個人利用のみ」と記載されている素材サイトの場合は「商用利用不可」と判断できます。
また画像ごとに規約が定められているサイトもあるので、見落とさないよう注意が必要です。
キャラクターの著作権者に使用許可を得ることで、著作権を侵害せずにキャラクターの使用が可能です。
著作権法においては、著作権者が許諾した利用方法と条件の範囲において著作物を利用可能と定められています。
使用者が著作権者に使用許可を得る際は、著作権者に対して以下を詳細に記載した提案書を提示するとスムーズです。
商用利用の際は著作権者との合意が不可欠で、使用者は著作権者が指定する条件や手続きに従うのが基本です。使用料などを明確に定め、契約に従って適切にキャラクターを使用しましょう。
参照:e-Gov法令検索「著作権法」
著作権フリーのキャラクターであっても利用時に従うべきルールがあり、確認を怠ると著作権を侵害するおそれがあります。
著作権フリーのキャラクターには「パブリックドメイン」「パブリックアート」の2つがあります。ただしいずれも無制限に利用できるわけではなく、商用利用や二次創作の際は著作権者や関連する権利者の許諾が必要です。
また海外のキャラクターを利用する場合は、国ごとの保護期間の違いや商標権などにも注意しなければなりません。
著作権上の作品利用ルールを知り、著作権フリーのキャラクターを適切に活用しましょう。
IPにまつわる知識・ニュースを随時発信しています。