「イラストの著作権はどこまでセーフ?」「著作権を侵害せずにイラストを使用したい」とお考えではありませんか。
既存のイラストを使用する際には、著作権について把握し、著作権法や規約で定められた範囲を把握することが重要です。
この記事では、イラストに関わる著作権や侵害のリスク、著作権フリー・ロイヤリティフリーのイラストについて解説します。
イラストの著作権について把握し、著作権侵害をせず安全に使用しましょう。
イラストの著作権とは、他人に著作権者のイラストを無断で利用されない権利です。イラストを描いた人に自動的に発生します。
著作権とは、著作物を創作した者である「著作者」に与えられる、作品の利用に関する権利です。著作権で保護されたイラストを利用する場合、著作者の許可を取る必要があります。
著作権の主な目的は、著作者の権利を保護することや、イラストなどの著作物を公正に利用してもらい文化の発展に貢献することです。
著作者の許可なくイラストの転載や商用利用をすることはイラストの著作者の利益や創作意欲を侵害し、文化の発展を阻害する行為です。
なお、著作権についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
イラストの著作権を侵害しているかは、以下の要件で判断されます。
イラストの著作権侵害の要件として、著作物性があります。著作物性は、既存のイラストが「著作物」に該当するかどうかによって判断されます。
「著作物」に該当するには、以下の著作物の定義に当てはまることが必要です。
たとえば、自分の考えや気持ちを独自の表現で描いたイラストは、著作物にあてはまります。
ただし、既存のイラストを単に真似しただけで個性や創作性がない場合や、ありふれた表現の場合には著作物にはあたりません。著作物として認められているイラストを勝手に使用すると、著作権侵害に該当します。
参照: e-Gov法令検索「著作権法」
イラストの著作権侵害の要件に依拠性もあります。依拠性は、新規に作成したイラストが既存のイラストを参考に作成されたかによって判断されます。
たとえば、ドラえもんのイラストを参考に描いた場合、ドラえもんに依拠したイラストであるといえるでしょう。
ただし、既存のイラストを参考にせず、結果的にイラストが類似した場合は依拠性があるとはみなされません。
イラストの著作権侵害の要件として、類似性も挙げられます。類似性の判断基準は、既存のイラストと類似している、または同じ表現方法を用いているかどうかです。既存のイラストを参考にした場合も、類似していなければ著作権侵害にはあたりません。
類似している点があっても本質的な表現が類似しているか、本質的な部分以外が類似しているのかによって、著作権侵害に該当するかどうか左右します。
既存のイラストのオリジナルの表現や構図が類似した場合は、著作権侵害とみなされる可能性が高いです。ただし、ありふれた表現や周知の事実が類似しているだけだと著作権侵害とは認められません。
イラストの著作権侵害の要件には、既存のイラストを許諾を得ず、無断で利用していることも挙げられます。既存のイラストの利用には、著作権者の許諾が必要です。
著作権法第63条第2項では、著作権者から許諾を受けた場合、許諾された条件および利用方法の範囲内であれば著作権を侵害せずに利用可能であると定めています。
参照: e-Gov法令検索「著作権法」
著作権法第113条によると、著作者人格権・著作権を直接的に侵害していなくても、実質的に著作権者の経済的利益を侵害している場合は「みなし侵害」にあたります。
以下がみなし侵害に該当する行為です。
たとえば、海外で作成された海賊版を販売するために輸入すること、海賊版と知っていながら販売または販売目的でコピーし所持することが該当します。
既存のイラストを使用する際は、みなし侵害にも該当しないよう注意することが必要です。
参照:首相官邸ホームページ「著作権等の侵害行為及び「侵害とみなす行為」について」
イラストの著作権侵害をしたときのリスクは以下のとおりです。
イラストの著作権を侵害した場合、以下の刑事罰に問われる可能性があります。
処罰対象者 | 処罰内容 |
---|---|
著作権、出版権、著作隣接権の侵害者 (直接侵害) | 10年以下の懲役、または1,000万円以下の罰金またはその両方(著作権法第119条第1項) |
著作者人格権、実演家人格権の侵害者 (みなし侵害) | 5年以下の懲役、または500万円以下の罰金またはその両方(同法第119条第2項) |
企業等法人による侵害 | 3億円以下の罰金(同法第124条第1項2号) |
刑事罰に問われた場合、個人・企業にかかわらず大きなリスクを負うことになりかねません。
参照: e-Gov法令検索「著作権法」
イラストの著作権侵害をした場合のリスクとして、損害賠償責任が生じることも挙げられます。
損害額は著作権法第114条にて推定規定が設けられており、立証負担が緩和されています。具体的には、以下を推定することで賠償額の主張が可能です。
著作権の侵害行為により著作権者が大きな損害を被っている場合や、侵害者が高い利益を得ている場合、損害賠償額も高額になります。
参照:e-Gov法令検索「民法」
参照: e-Gov法令検索「著作権法」
著作権を侵害したことが公表されると、個人または企業の信頼性が大きく低下するリスクがあります。著作権者の権利や利益に対して不誠実である印象を与えるためです。
取引先から「著作権をきちんと守ってもらえるのだろうか」と不安に感じられると、今後の関係性にも悪影響を与えかねません。
さらに近年は、テレビなどのマスメディアだけではなく、SNSでも不祥事の情報が広まりやすくなっています。SNSで著作物を発信する個人も多いため、著作権侵害は消費者にとっても身近な問題です。
著作権を侵害した場合、SNS上で広く拡散されて信頼性の低下を招くおそれがあります。注目が集まって炎上に発展する可能性もあるでしょう。
信頼は一度損ねると回復が難しく、長期的な負債となりやすいため、著作権を侵害しないよう十分な注意が必要です。
著作権フリー・ロイヤリティフリーのイラストについて以下の流れで解説します。
著作権フリーとは、パブリックドメインとほぼ同義で、著作権が消滅もしくは放棄されたものを指します。著作権フリーの素材は基本的に著作権を気にせず利用可能です。
原則として、イラストを作成した著作者の死後70年が経過しているものは、著作権が消滅しているため、誰でも複製・転載などができます。また、著作権者が著作権の放棄を明言したイラストも、著作権フリーとして利用可能です。
ただし、著作者が著作権を放棄している場合も、著作者人格権は著作者に残ります。著作者の名誉や精神を侵す悪意のある改変などをすると、著作者人格権の侵害になるおそれがあるため注意しましょう。
なお、パブリックドメインについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
ロイヤリティフリーとは、特定の条件を満たせば利用できるものです。「フリー素材」といわれるイラストはロイヤリティフリーであることが多いです。
たとえば、ロイヤリティフリーの素材サイト「いらすとや」は、利用規約の範囲でイラストを自由に利用可能です。利用規約では、作品のイメージを損なう利用の禁止や、21点以上の掲載からは有償対応することなどが定められています。
ロイヤリティフリーの素材には無料で利用できるもの、対価を支払って利用できるものがあります。定額料金の場合、著作者または代理人に規約にしたがってライセンス料を支払うことで、使用料を都度支払うことなく素材を利用可能です。
また、ロイヤリティフリー素材は著作権フリーの素材と違い、著作権が放棄されていません。そのため、規約で許可されていない加工・改変は著作権侵害の対象です。利用規約を確認し、規約に従った利用をしましょう。
なお、他人の撮影した写真を使用する際の著作権についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
ロイヤリティフリーのイラストを使う際の著作権上の注意点は以下の3つです。
ロイヤリティフリーのイラストを使用する際、「著作権表示」する必要があるかどうか確認しましょう。
「著作権表示」とは、「©」「All Rights Reserved」のように、イラストが著作権法で守られている著作物だと表示することです。
無料でダウンロード可能なロイヤリティフリー素材も、「著作権表示」を必ず行うよう利用規約で定めている場合があります。表記が必要なことを知らずに使用した場合は、著作権侵害に該当します。
ロイヤリティフリーのイラストを使う際は、商用利用が可能かどうか利用規約の確認が必要です。無許可で商用利用をした場合、著作権侵害にあたります。商用利用の例は、商品パッケージやデザイン、会社のホームページへ利用する販促活動などです。
商用利用不可の表記がなくても「個人利用のみ」と記載されている場合は商用利用できません。商用利用が可能な場合も、商品化における利用は許可していないケースがあるため、よく確認することが大切です。
ロイヤリティフリーのイラストを加工または改変可能か調べることも大切です。原則として著作物の無許可の加工・改変は著作者人格権の侵害にあたります。
ただし、ロイヤリティフリーのイラストを提供しているサイトの利用規約で、加工・改変を認めている場合は可能です。利用規約を必ず確認し、許可された範囲内で加工・改変を行うようにしましょう。
なお、縦横比率の変更や色調の変更、切り抜きなども加工に含まれます。許可なく加工しないよう注意が必要です。
参照: e-Gov法令検索「著作権法」
イラストの著作権を侵害しない方法は以下の3つです。
著作者に利用許諾を得て、許諾された条件のうえでイラストを利用する場合は、著作権を侵害せず利用可能です。
著作権法は、著作権者が許可した場合、許諾した利用方法および条件の範囲内においては著作物を利用可能と定めています。許諾された条件の範囲や目的以外でイラストを利用した場合は、著作権侵害にあたるため注意が必要です。
既存のイラストは利用する目的、利用対価や期間などの条件を著作権者と定めて、利用許諾契約をしたうえで利用しましょう。
参照: e-Gov法令検索「著作権法」
著作者にイラストの著作権を譲渡してもらった場合は、著作権を侵害せずイラストを使用できます。
著作権は第三者に対して譲渡可能です。著作権の譲渡を受けた人が著作権者となり、著作物を利用できます。
ただし、同法第59条で著作者人格権は譲渡できない権利と定めているため、イラストの勝手な変更・改変はできません。イラストを自由に利用する場合は、「著作者人格権を行使しない」ことを契約の際に明記する必要があります。
参照: e-Gov法令検索「著作権法」
著作権法第32条によりルールに従い引用することで、著作権を侵害せずイラストを使用できます。
引用する場合は、下記のルールに従いましょう。
ただし、「転載禁止」などと定められているのに使用すると、著作権侵害になるため注意が必要です。
参照: e-Gov法令検索「著作権法」
なお、生成AIが作成したイラストにどのような著作権があるのか知りたい方は、こちらの記事もご確認ください。
イラストに関する著作権侵害の事例を2つ紹介します。
原告がブログに掲載した親子パンダのイラストを、商品パッケージに無断で複製し販売を行い著作権侵害となった事件です。
イラストを比較すると、大小2頭のパンダが互いの額を接して向き合う様子を描いたものであり、パンダの表情や姿勢、大きさの比などの構成が類似しています。
原告側のイラストは著作物性があり、本質的な特徴が同一で類似性があること、依拠して制作されたことから複製権、譲渡権を侵害する行為と認められました。
参照:裁判所 - Courts in Japan「平成31年 第27253号 著作権侵害差止等請求事件」
イラストがプリントされたTシャツと類似したデザインのTシャツを製造・販売したとして著作権侵害として裁判になった事例です。
双方のイラストはいずれも「水上に浮かんでいるビーチマットに寝そべる女性」を表現している点が類似しています。原告のイラストのデザインは著作物性があり、イラストが同じ印象を与えることから類似性が認められました。
著作権侵害が認められ、被告イラストをTシャツに印刷して販売することの差し止め、被告イラストおよび製品の画像データの廃棄を命じられています。
参照:裁判所 - Courts in Japan「令和5年 第10991号 損害賠償請求事件」
イラストを使用する際は著作権を侵害しないよう注意が必要です。著作権を侵害しない方法として以下が挙げられます。
また、イラストには著作権フリーやロイヤリティフリーのものもあります。ロイヤリティフリーの素材は提供しているサイトなどによって許諾範囲を定めているため、利用規約を事前に確認することが大切です。
既存のイラストを使用する際は、著作権侵害しないよう意識して慎重に行いましょう。
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