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「メディアミックスの成功例が知りたい」「メディアミックスを成功させるにはどうすればよいのかわからない」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
メディアミックスとは、複数のメディアを複合的に活用して行うマーケティング施策、あるいは漫画やゲーム、小説などを原作としてさまざまなメディアに展開し、売上拡大を目指す手法を指します。複数のメディアを用いることでコンテンツごとの特性を活かし、相乗効果を生んだ作品には、共通するポイントがあります。
本記事では、アニメやゲームにおけるメディアミックスの成功例と失敗例をご紹介します。あわせて実例から見る成功のコツや注意したいポイントも解説しますので、自社コンテンツを展開する際に参考にしてみてください。
まずはアニメ・ゲームでメディアミックスに成功した事例として、以下の6つをご紹介します。
6つの成功例を見ていきましょう。
引用:任天堂「アニメ『ポケットモンスター』」
©2024 Pokémon. ©1995-2024 Nintendo/Creatures Inc. /GAME FREAK inc.
作品名 | ポケットモンスター |
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企業名 | 株式会社ポケモン |
メディアミックス戦略 | ゲーム・漫画・テレビアニメ・映画・カードゲーム・関連商品など |
『ポケットモンスター』は、国内のコンテンツの中でも群を抜いてメディアミックスに成功しているといえるのではないでしょうか。
1996年に発売されたゲームからはじまり、カードゲームの発売やテレビアニメの放送など次々に多角的なコンテンツを展開しています。メディアミックス総収益は2019年時点で921億ドル(当時のレートで約10.1兆円)を記録し、世界ランキング1位を獲得しました。
ゲームのおもしろさに加えて、さまざまなメディアを使ったアプローチが功を奏し、世界市場で大きなヒットにつながった成功例です。
参照:TITLEMAX「The 25 Highest-Grossing Media Franchises of All Time」
参照:文部科学省「メディア・ミックスの推進」
引用:株式会社Cygames「ウマ娘 プリティダービー」
© Cygames, Inc.
作品名 | ウマ娘 プリティダービー |
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企業名 | 株式会社Cygames |
メディアミックス戦略 | ゲーム・テレビアニメ・漫画・関連商品など |
『ウマ娘 プリティダービー』は、スマホゲームからアニメ化した成功事例といえます。2021年2月下旬にゲームアプリをリリースし、同年3月1日から8日連続でゲームアプリ売り上げランキング首位を獲得し、初月で約130億円の売り上げを達成しました。
本作品が成功した背景には、メディアミックスのメインとなるゲーム開発の遅れが大きく関係しています。当初の予定では、アニメの放送と同時期にアプリも配信予定だったものの間に合わず、約2年リリースが延期されました。
その間に、2シーズンに渡るテレビアニメの放映開始などメディアミックスが先行したことで、ゲームアプリ配信までにぶ厚いファン層が形成されたのです。ゲームの完成度も高く、相乗効果で人気がはね上がった結果、大成功をおさめました。
参照:日本経済新聞「スマホゲーム、新興勢が台頭「ウマ娘」メディアミックス先行」
参照:東洋経済ONLINE「「ウマ娘」超絶ヒットが作り出す意外に大きな潮流」
引用:株式会社 スクウェア・エニックス「鋼の錬金術師」20周年特設サイト【ハガレン20周年】」
© Hiromu Arakawa/SQUARE ENIX
© 2021 荒川弘/SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
© 荒川弘/鋼の錬金術師製作委員会
作品名 | 鋼の錬金術師 |
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企業名 | 株式会社 スクウェア・エニックス |
メディアミックス戦略 | 原作漫画・アニメ・映画・舞台・ゲーム・YouTube・原画展など |
『鋼の錬金術師』は、原作漫画からアニメやゲーム、原画展などさまざまなコンテンツ展開で成功した事例です。
アニメ化・実写映画化を経て、日本だけにとどまらず世界中にファンが広がり、シリーズ累計部数8,000万部を越える大ヒット作品となりました。
アニメ化にあたって多額の支出が必要となったものの、相乗効果により原作漫画の売り上げが大幅にアップしたのは大きなポイントです。
アニメ化の際に漫画では描かれなかったストーリーを丁寧に入れ込んだことも、人気を得た要因の一つといえます。原作と異なる部分も世界観を損なうことはなく、原作ファンに加えて新規ファンも獲得することになりました。
参照:ITmedia ビジネスオンライン「『咲-Saki-』『鋼の錬金術師』の田口浩司プロデューサーが語る、儲かるアニメの作り方」
引用:株式会社アニプレックス「TVアニメ るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-」
©和月伸宏/集英社・「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-」製作委員会
作品名 | るろうに剣心 |
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企業名 | 集英社 |
メディアミックス戦略 | 原作漫画からアニメ・実写映画・ミュージカル |
『るろうに剣心』は、原作漫画からアニメ・実写映画・ミュージカルなどに展開され、メディアミックスに成功しています。
なかでも、原作の最後まで実写化した映画は全5作が製作され、累計興行収入125億円の人気シリーズへと成長しました。数々の漫画作品が実写化され、酷評を受けることも少なくないなか、実写化の成功例として取り上げられることも多い作品です。
実写化における難しさの一つとして、原作ファンをいかに惹きつけられるかが大きな課題となります。そんななか、原作ファンに寄り添いながら映画化した大友監督について、原作者の和月伸宏は以下のように絶賛しています。
"大友監督は映画を撮るという職人的な意識と同時に、エンターテインメントな部分を意識されている。そこは本当にすごいですね。"
引用:シネマトゥデイ「和月伸宏が語る映画『るろ剣』の成功理由」
引用:講談社「TVアニメ『東京リベンジャーズ』公式サイト」
Ⓒ和久井健・講談社/アニメ「東京リベンジャーズ」製作委員会
作品名 | 東京卍リベンジャーズ |
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企業名 | 講談社 |
メディアミックス戦略 | 漫画・アニメ・実写映画・舞台 |
漫画が原作の『東京卍リベンジャーズ』は、アニメ・実写映画化などで大ヒットした、メディアミックスの成功例といえる作品です。
原作漫画の累計部数は2020年9月には500万部でしたが、その後のテレビアニメ化・実写映画化によって売り上げが加速しています。2021年には4,000万部、2023年には7,000万部を突破しました。
参照:ORICON NEWS「『東京卍リベンジャーズ』累計4000万部突破 1年で8倍、半年で4倍…アニメ&映画効果で売れ行き加速」
連載完結後も人気は続き、さまざまなプロモーションに起用されています。たとえば、内閣府のタイアップや日本赤十字社「めぐる献血プロジェクト」とのコラボなどが挙げられます。多数のメディアに取り上げられ、既存はもちろん新規ユーザーにも幅広くリーチできました。
参照:講談社「プロモーションを熱くさせる圧倒的な作品力『東京卍リベンジャーズ』が人々を惹きつけるワケとは」
引用:KADOKAWA「アニメ『わたしの幸せな結婚』公式サイト」
©2023 顎木あくみ・月岡月穂/KADOKAWA/「わたしの幸せな結婚」製作委員会
作品名 | わたしの幸せな結婚 |
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企業名 | KADOKAWA |
メディアミックス戦略 | 小説・アニメ |
投稿サイトから生まれた小説が原作である『わたしの幸せな結婚』は、アニメ化、実写映画化により成功した作品です。日本でテレビアニメとして放送された後、それがNetflixを通じて世界各国で大ヒットを記録しました(英題『My Happy Marriage』)。
海外でヒットした背景には、Netflixとの綿密なやりとりがありました。海外での市場拡大のために、注目が集まるNetflixの第1話配信スケジュールに合わせて、字幕だけでなく吹き替えも同時に実現させたのです。配信前にはアメリカで上映会を実施するなど、海外宣伝も広く行いました。
このようにスムーズな対応ができたのは、KADOKAWAが海外向けに取り組んできた「グローバル・メディアミックス」によるものです。漫画や小説、アニメなどのメディアミックス展開をさらに強化した、今後の世界戦略も見逃せません。
参照:日経クロストレンド「アニメ『わたしの幸せな結婚』世界で大ヒットの裏にある綿密な連携」
メディアミックスの失敗例といわれている作品には、以下の4つが挙げられます。
上記4つが失敗例といわれている理由をくわしくチェックしてみましょう。
引用:SQUARE ENIX「ファイナルファンタジーポータルサイト」
© SQUARE ENIX
LOGO&IMAGE ILLUSTRATION:© YOSHITAKA AMANO
『FINAL FANTASY』は、シリーズ15作品も続いている大人気RPGです。しかし2001年にアメリカと日本で製作されたSF映画『ファイナルファンタジー』は、興行収入の面においてはメディアミックスの失敗例といわれています。
本作品は、当時としては珍しい3DCGに挑戦した映画でした。そのためリアルなフルCGの制作経験が豊富な人材を確保するのが難しく、映画製作に遅れが生じました。さらに、当初の予算を大幅に超えてしまったことが失敗の要因です。
結果として興行目標を達成できず、関連作品の打ち切りまで導いてしまったといわれています。
引用:講談社「TVアニメ『UQ HOLDER!〜魔法先生ネギま!2~』公式サイト」
©赤松健 講談社/UQナンバーズ
『魔法先生ネギま!』は、週刊少年マガジンで連載された、2022年2月時点でシリーズ累計2,600万部を突破している人気漫画です。しかしメディアミックスの際に、最終的に原作ファンの心をつかめず失敗したといわれることもあります。
メディアミックス戦略としては、テレビアニメ・パチンコ・CDなどを展開しています。とくにアニメ化前から販売していたCDは、声優やキャラクターの人気によりヒットしました。
一方で、アニメ・映画化では原作どおりの展開ではない点を気にするファンが多く、高評価にはつながらなかったともいわれています。
参照:ORICON NEWS「『ネギま!』の続編『UQ HOLDER!』完結、連載8年半に幕 参院選出馬の赤松健氏『新しい冒険に行ってきます』」
引用:株式会社カプコン「『モンスターハンターワイルズ』公式サイト」
©CAPCOM
『モンスターハンター』は、世界的に人気のあるゲームです。知名度が高く、実写映画化された際には大きな話題を呼んだものの、ゲームの世界観とはやや異なる作品となり失敗したといわれています。
要因として、本作品の醍醐味である狩猟・装備強化・狩猟のループを楽しみにしていたゲームファンを魅了するには至らなかったことが考えられます。さらに、映画の登場人物のセリフが人種差別的だと物議を醸し、中国で2日目にして公開中止となった影響も大きいでしょう。
参照:映画.com「『モンスターハンター』人種差別的表現で中国での上映が中止に 製作会社が謝罪」
結果として、製作費約6,000万ドル(当時のレートで約63億円)を回収できなかったといわれています。
参照:シネマトゥデイ「ハリウッド版『モンスターハンター』アメリカでも苦戦」
引用:車田プロダクション「聖闘士星矢公式 | 聖闘士星矢の公式Webサイト」
© 2017 KURUMADA PRODUCTION. All Rights Reserved.
『聖闘士星矢』は、1985年から連載された日本の有名な漫画です。世界的な人気を誇る作品ですが、2023年の実写化映画では一部の厳しいコメントがSNSで拡散され、観客動員に苦戦しました。
原作と異なる展開に違和感を覚えるファンが多くいた点に加え、さまざまな話題作と公開時期が重なったこともヒットに至らなかった理由でしょう。さらに他のメディア展開も活発に行っていなかったこともあり、上映回数も減少しました。
メディアミックスで成功するコツは、主に以下の2つです。
ここからは、メディアミックスの成功例・失敗例をふまえた成功のコツについて解説します。
小説・漫画・ゲームをアニメ化や実写化する際は、ファンが離れるのを避けるために原作に大きな変更を加えないことが重要です。
先に挙げた失敗例からも読み取れるように、他のメディアへ展開する際に原作とかけ離れた設定にすると、失敗するリスクが高まります。とくに主人公の設定変更は支持されにくいため、留意しておきましょう。
原作と異なる設定を取り入れる場合も、原作の世界観や原作ファンが大切にしている部分については、他メディアへ展開する際にも活かすことが必要です。
たとえば、これまでさまざまなメディアミックスが展開されてきた『るろうに剣心』は、原作の世界観を損なわず、高い評価を受けました。原作ファンに配慮したメディアミックスこそが、より効果に期待できるといえます。
メディアミックスを成功させるためには、充分な予算を確保しておくことも重要です。当然ながら、単一媒体で展開するのと比べて、メディアミックスを実施するには大きな予算が必要です。
また、過去の成功を受けて、多くの作品でメディアミックスが実施されるようになってきています。そのため、少しの展開では話題にあがりづらいでしょう。
一定以上の収益性が見込める人気作品でないと、メディアミックスの展開は難しくなってきているといえます。
メディアミックスとは何かやメディアミックスの注意点などは、以下の記事でより詳しく解説しています。
複数のメディアを使って宣伝するメディアミックスは、訴求目的に合うメディアを組み合わせることで、幅広いターゲット層へのアプローチも可能です。成功すれば、新たなファンを獲得することもできます。
今回メディアミックスの成功例としてご紹介した作品から成功のコツを学び、プロモーション企画に活用してみてください。
IPにまつわる知識・ニュースを随時発信しています。