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『SPY×FAMILY』は海外でも人気なのか、どれくらいの人気なのか、またどの国で人気なのか気になる方も多いのではないしょうか。
『SPY×FAMILY』は架空の国を舞台に、個性豊かなキャラクターが繰り広げる家族の絆の物語です。独特のキャラクターやストーリー展開の魅力により、海外でも幅広い年齢・性別・国籍のファンを獲得しています。
本記事では『SPY×FAMILY』の海外人気の理由と人気を証明する事例、海外コラボレーション実績を紹介します。最後まで読むことで『SPY×FAMILY』の海外人気の理由がわかるでしょう。
『SPY×FAMILY』の海外人気について以下の観点から解説します。
『SPY×FAMILY』は日本と同様に海外でも高い人気を誇ります。コミック・アニメのデータベース「MyAnimeList」によると、2022年のテレビシリーズが10点中約8.5点の高評価を獲得するほど(2024年12月時点)です。
作品が配信開始された2022年には、アメリカの権威ある漫画賞「ハーヴェイ賞」「アイズナー賞」にノミネートされ、アメリカ国内で高い注目を集めました。
さらにシンガポールやインドネシア、ベトナムなどのアジア諸国でも、同時期のNetflixトップ10にランクインするほどの高い人気です。
参照:MyAnimeList.net「Spy x Family」
参照:REED EXHIBITION COMPANIES「Harvey Awards Unveil 2022 Nominees」
参照:Anime News Network「Junji Ito Wins Eisner Award for Lovesickness Manga」
参照:Yahoo!ニュース「世界中で注目される『スパイファミリー』に学ぶ、日本のアニメの世界への拡げ方(徳力基彦)」
『SPY×FAMILY』をはじめとする日本アニメ人気が上昇した背景には、ネット配信の普及があります。メディアの主戦場がテレビからネットへ移行したことにより、海外でも日本のアニメをほぼリアルタイムで閲覧できるようになりました。
くわえて新型コロナウイルスのパンデミックにより、自宅待機中に観られるエンターテインメント作品の需要が高まりました。ステイホーム期間にNetflix、Crunchyrollなどの大手ストリーミングサービスが視聴者のニーズを賄い、勢力を拡大したのです。
2022年4月には『SPY×FAMILY』の配信が日本とアメリカで同時に開始され、すぐに人気が急上昇しました。同時に集英社の海外向け配信サービス「MANGA Plus」でも、英語の他スペイン語、タイ語など7か国語で作品が配信され、多くの海外読者を獲得しています。
参照:津堅信之「日本のアニメの独自性と世界的評価」
参照:日本貿易振興機構(JETRO)「アニメ関連サービス・商品に関する米国市場レポート」
参照: Digital Shift Times「『SPY×FAMILY』が大ヒット。デジタル化への危機感から生まれた「少年ジャンプ+」が挑む海外展開」
人気が落ち着いたともいわれる『SPY×FAMILY』の海外人気は、今後も拡大する見込みです。
越境ECサービスを運営するBEENOS株式会社の海外利用者に対するアンケートでは、2023年の好きな日本アニメランキングで『SPY×FAMILY』が3位にランクインしています。
また2024年6月に『SPY×FAMILY Season3』テレビシリーズの制作決定が発表されると、SNSなどで大きな反響がありました。アニメ2期の最後に「SEE YOU NEXT×MISSION」というメッセージがあったことから、海外ファンの間でも続編への期待が高まっていたのです。
さらに『SPY×FAMILY』だけでなく日本アニメの世界市場全体が、今後も拡大すると考えられます。
Grand View Research社の調査によると、2030年の米国のアニメ市場規模は58億4,000万ドルに達する見込みです。また配信大手のCrunchyroll社が東南アジアへ注力する意向を示しており、日本アニメファンの多国籍化がますます進みそうです。
参照:PR TIMES「越境ECを利用する海外アニメファン807名に聞いた『日本のアニメ受容とグッズ購入』に関するアンケート調査」
参照:アニメ『SPY×FAMILY』「TVアニメ『SPY×FAMILY』Season 3 制作決定!」
参照:株式会社グローバルインフォメーション「米国のアニメ市場| 市場規模 シェア 動向分析 予測 2024~2030年まで」
なお、同じく集英社による人気の少年漫画、アニメ作品である『ワンピース』『ヒロアカ』『呪術廻戦』の海外人気については以下の記事で解説しています。
『SPY×FAMILY』が海外でも人気が高い理由は以下の5つです。
『SPY×FAMILY』が海外で人気の理由の一つは、数十年前のヨーロッパに似た架空の国が舞台であるため、欧米人がリアリティを感じやすいという点です。
物語の舞台である冷戦下の2つの国「オスタニア(東国)」と「ウェスタリス(西国)」は旧東西ドイツを連想させます。さらに作中には、ドイツを連想させる以下のような地名や名称が多数登場するのです。
原作者の遠藤達哉氏によれば、年代設定は1960〜70年代前後とのことで、史実に近い背景設定が欧米ファンの共感を呼んでいるようです。
参照: アニメフリークス「アニメ『スパイファミリー』の舞台を考察!年代や国、登場キャラのモデルは? | アニメニュース」
『SPY×FAMILY』は家族の絆という普遍的なテーマを扱っている点が、海外のファンに温かみと意外性を感じさせ、人気の要因となっています。
MyAnimeListにおいて同作品は「Action, Award Winning, Comedy(アクション・賞金獲得・コメディ)」に分類されていますが、テーマは「Childcare(育児)」です。
世界的に見て日本アニメは「バトル」「冒険もの」のイメージが強いなか、『SPY×FAMILY』はアクションとホームコメディが軽妙にミックスされているため、家族観がより前面に出ています。
主要キャラクターがミッションのために組んだ「偽装家族」が、いつしか本物の家族のように絆を深めていく展開は観る人の心を温かくします。コロナ禍で困憊する世界中の人々に癒しと慰め、勇気を与えてくれたことも『SPY×FAMILY』が海外で人気となった要因でしょう。
参照:MyAnimeList「Spy x Family」
仮の家族となった主要キャラクターの独特な背景と個性も同作品の人気が高いゆえんでしょう。
キャラクター名(仮の続柄) | 人気の理由と傾向 |
---|---|
アーニャ・フォージャー | ・人の心を読める超能力 |
ヨル・フォージャー | ・市役所の事務員と暗殺組織の腕利き殺し屋「いばら姫」という2つの顔 |
ロイド・フォージャー | ・「黄昏」というコードネームを持つ敏腕スパイ |
偽装家族として生活する3人それぞれが二面性を見せ、ストーリー展開を膨らませている点が同作品の魅力の一つです。
また日本以上に多様性への理解が高い海外のファンにとっては、個性的な3人の織り成す独特な「家族のかたち」にも共感を覚えるようです。
『SPY×FAMILY』には一部の日本アニメに見られるような過激な描写がないことも、海外で人気の理由です。
作中の格闘や戦闘のシーンにおいても、たとえば迫力のあるアクションシーンで人気を博している『進撃の巨人』や『鬼滅の刃』と比べるとマイルドな表現がなされています。また海外では許容されにくい性的な表現も同作品には見られません。
年代や性別を問わず受け入れられやすいため、家族で安心して鑑賞できると好意的に評価されるのです。
なお『進撃の巨人』の海外人気は、以下の記事で解説しています。
『SPY×FAMILY』は公式にファンアートを推奨している点も、他のアニメと異なります。
「ファンアート」とは、既存の作品をもとにした二次創作物のことです。日本では著作権侵害のグレーゾーンと認識されているものの、多くの作品が黙認されています。
一方『SPY×FAMILY』は、以下の方法で非商用のファンアート創作を後押ししてきました。
著作権侵害を排斥するより、ファンに適切にキャラクターを使用してもらうほうが作品にとってもプラスになる場合があります。実際に、ファンアートを通じて『SPY×FAMILY』を知った海外のファンも少なくないのではないでしょうか。
参照:ART street「第2回ジャンプ世界イラストコンテスト テーマ:SPY×FAMILY」
参照:SPY×FAMILY「SPECIAL|TVアニメ『SPY×FAMILY』」
参照:ジャンププラス「SPY×FAMILYチャリティ企画『SPY×FAMILY アーニャおともだちプロジェクト』」
参照:SPY×FAMILY「2022.08.24 アーニャの塗り絵プレゼント」
参照:PixivVision「アニメでも偽装家族が大活躍! SPY×FAMILYのファンアート特集」
なお、ファンアートの著作権については以下の記事で解説しています。
『SPY×FAMILY』が世界でどれだけ人気があるのか、海外での反応や実態を紹介します。
『SPY×FAMILY』は日本アニメの主要輸出国であるアメリカで、複数のアニメイベントやコンベンションに出展し話題を呼んでいます。
たとえばカリフォルニア州ロサンゼルスで開催される、北米最大級のアニメイベント「Anime Expo」では『SPY×FAMILY』の監督や声優を交え、パネルディスカッションやサイン会が行われています。
また2022年8月、カリフォルニア州サンノゼ市で開催された「Crunchyroll Expo」にも『SPY×FAMILY』がブースを出展しています。同イベントは事前に売り出されたチケットが開幕前に完売となり、当日入場できないほどの盛況ぶりでした。
参照:Anime Expo「TOHO animation returns to Anime Expo!」
参照:アニメーション・ビジネスージャーナル「米国クランチロールEXPO開幕、「チェンソーマン」や「モブサイコ」など日本ゲストも」
フランスでもアニメイベントにおける『SPY×FAMILY』の人気は高く、映画『SPY×FAMILYコード:ホワイト』への強い関心も見られます。
パリで開催された「Japan Expo」では、声優を交えたパネルディスカッションや映画上映会が実施され、盛況を博しました。
2024年4月には、パリのタウン情報サイト「Sortir de Paris」で『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』の公開が報じられました。記事中において原作コミックについて「世界中の読者の心を捉え、フランスでもっとも売れている漫画の一つ」と評されており、パリでの同作品への注目度の高さをうかがわせています。
参照:Japan Expo Paris「SPY x FAMILY event」
参照:Sortir de Paris「« Code SPY×FAMILY : Blanc » : En avril 2024, une aventure inédite débutera au cinéma.」
『SPY×FAMILY』はアジア諸国でも人気が高く、フィリピンで描かれたアーニャの路上アートがX(旧Twitter)上で世界中に拡散されています。
多くのリアクションが見られたのは、その作品のクオリティの高さゆえではありますが、複数の言語でリプライが見られたのは、同作品が多くの国で支持されているからだといえるでしょう。
『SPY×FAMILY』は海外の企業やプロジェクトとたびたびコラボレーションしていることも話題を呼んでいます。
ハリウッド映画『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』と『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』のコラボ映像とビジュアルも話題となりました。
引用:SPY×FAMILY「SPECIAL 『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』特別コラボ映像&コラボビジュアル解禁!」
© 2023「劇場版 SPY×FAMILY」製作委員会 © 遠藤達哉/集英社
また『SPY×FAMILY』は、バトルロイヤルゲームの「PUBG MOBILE」とのコラボレーションも実現しています。2024年4月12日~5月13日には、ゲーム内の専用「クレート」を引くことで獲得できるコラボ限定スキン(アイテム)が9種類用意されました。
さらに同キャンペーンによる「ロイドとヨルにエールを送ろう!」の結果をXでシェアすると、Amazonギフトカードや『SPY×FAMILY』グッズが当たる特典も実施されました。
参照:SPY×FAMILY「SPECIAL 『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』特別コラボ映像&コラボビジュアル解禁!」
参照:PR TIMES「『PUBG MOBILE』とTVアニメ『SPY×FAMILY』コラボがスタート!コラボ限定スキンを手に入れて『PUBG MOBILE』をプレイしよう!特設サイトも公開中! | KRAFTON JAPAN株式会社のプレスリリース」
『SPY×FAMILY』は日本国内にとどまらず海外人気も高いです。NetflixやCrunchyrollといった配信サービスの普及を通じて、人気を獲得してきました。
配信が開始されると同時に、アメリカやヨーロッパ、アジア諸国でもたちまち注目を集めてきたのです。海外人気の要因には、普遍的な家族の絆を描いたストーリー、キャラクターの個性、ファンアートの人気などが考えられます。
『SPY×FAMILY』は今後も年齢や性別、国籍を問わず、幅広いファンを魅了しつづけるでしょう。
IPにまつわる知識・ニュースを随時発信しています。