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「バンダイナムコが発表したIPメタバースの具体的な内容が知りたい」「自社のIP戦略に悩みがあり、IPメタバースを参考にしたい」
このようにお考えの方は多いのではないでしょうか。
IPメタバースとは、IP(キャラクターなどの知的財産権)ごとに、メタバース(仮想空間)を展開するというバンダイナムコのプロジェクトです。IPメタバースが開発されることでエンターテインメントの幅が広がり、ファン同士でつながったりコンテンツを楽しんでもらったりといった狙いがあります。
バンダイナムコは、中期計画のなかで、IPの価値をさらに強化していく方針を発表しました。とくに、IPごとにメタバースを構築する「IP×Fan」が注目を集めています。
そこで今回の記事では「IP軸戦略」や「IPメタバース」の概要を幅広く解説します。バンダイナムコの発表した中期計画について理解を深め、自社のIP戦略に活かしたいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
IPメタバースとは、メタバースをIP事業ごとに形成し、新しい価値を創出するバンダイナムコの取り組みです。
IPとは、知的活動から生まれた財産的な価値のあるものを指します。バンダイナムコが所有しているIPとしては、以下のキャラクターなどが有名です。
メタバースとは、インターネット上に構築された「仮想空間」を指します。IPメタバースでは、それぞれのIPごとに仮想空間を構築し、新しいコミュニティの場として楽しめるようにするとしています。
具体的には、デジタル空間でキャラクターや世界観を楽しんだり、ファン同士が交流できるようにしたりする計画です。中期計画のIP軸戦略の一つ「IP×Fan」の一環で実施されます。
2022年4月から3年間で予定されているバンダイナムコの中期計画では「Connect with Fans」を中期ビジョンに据えています。既存のファンとは深く、新しいファンとは広く、そしてファン同士の集団が複雑につながることを目指しています。
中期計画の重点戦略として、バンダイナムコは以下の3つを打ち出しました。
人々のつながり方の質を向上させることを目指しており、さまざまな戦略を発表しています。このうちのIP軸戦略について詳しくご説明します。
参照:バンダイナムコ「中期計画」
中期計画の核である「IP軸戦略」とは、バンダイナムコが所有するIPの特性や世界観を活かし、エンターテインメントの拡大をはかる戦略です。
IP軸戦略は、以下の3要素で構成されています。
最適なタイミングで効果的な商品・サービスを、最適な地域に向けて提供することにより実現させるとしています。それぞれ詳しく見ていきましょう。
参照:バンダイナムコ「中期計画」
IPを中心にファンと接点を作る新しい方法として、IP×Fanでは各IPに対応したメタバースの構築を進めています。
バンダイナムコは、IP×Fanの推進により、ファン同士の空間内での交流や作品のアイテム購入が可能になると説明しています。
たとえば機動戦士ガンダムでは、ガンダムメタバース「ガンプラコロニー」が2023年10月にテスト公開を予定しています。
引用:HOBBYWatch「ガンダムカンファレンス SPRING 2023」
© 創通・サンライズ
© 創通・サンライズ・MBS
3Dのメタバース空間で、ガンプラを軸とした交流が可能であることが発表されています。
詳細は2023年10月開催のイベント「GUNDAM NEXT FUTURE 2023 EAST/WEST/DIGITAL」で発表予定です。
またアイドルマスターでは、MR(ミックスドリアリティ)を活用したプロジェクトが発表されています。
引用:「『アイドルマスター』シリーズ初のカンファレンス『PROJECT IM@S(プロジェクトアイマス) カンファレンス』開催!」
© 窪岡俊之THE IDOLM@STER™&
© Bandai Namco Entertainment Inc.
モーションキャプチャー技術を活用して、リアル空間でゲームのキャラクターがライブ活動をするイベントなどが企画されています。メタバース空間のみならず、現実の空間にキャラクターを登場させることで、IPとファンの結びつきを強めるプロジェクトです。
参照:BANDAIHobbySITE「GUNDAM NEXT FUTURE 2023 EAST/WEST/DIGITAL」
参照:アイドルマスター「アイドルマスター OFFICIAL WEB」
IP×Valueでは、IPの価値を磨き、ブランド力や商品価値をさらに向上させることを目指します。
現在のIPの展開に留まらず、新しいIPを作り出し、プロデュースしていく方針です。具体的には以下の2つの軸で進められます。
IPを生み出すシステムや部隊を再編し、プロデュース力やIP創出力をさらに高める方針を示しました。
映像やライブイベントなどに関する技術を統合することで、IPの価値をさらに磨きます。
IPそのものの価値の最大化を目指し、各界のパートナーとの協業を重視することを打ち出しました。
IP製作者がIPの価値を最大限に引き出すことを目指し、長期的かつ全体最適の視点でIP展開を模索します。地域や複数事業を横断して展開するIPに関しては、地域や事業を横断したグループ横断プロジェクトを発足する予定です。
IP×Worldでは、各地域にあるバンダイナムコ事業所が一丸となって事業の構築に取り組むことを打ち出しました。
具体的には新しいロゴマークを導入し、ALL BANDAI NAMCOブランドの訴求を行う予定です。また、事業・地域横断プロジェクトを結成し世界的発展にも取り組んだり、各地域発のIPの作成や育成にも注力したりする方針です。
「Bandai Namco Entertainment 021 Fund」とは、バンダイナムコが2022年に立ち上げたIPメタバースを実現させるスタートアップの投資ファンドです。
以下の3つの観点から詳しく解説します。
参照:バンダイナムコ「Bandai Namco Entertainment 021 Fund」
「Bandai Namco Entertainment 021 Fund」はパートナー企業と協業し、IPの戦略とノウハウをかけあわせることを目的としています。Web3.0とメタバースの発展を見据えて設立されました。
バンダイナムコは「Bandai Namco Entertainment 021 Fund」の立ち上げにより、新しいエンターテインメントの実現を加速させる予定です。
参照:バンダイナムコ「Bandai Namco Entertainment 021 Fund」
「Bandai Namco Entertainment 021 Fund」では、投資戦略として以下の3つのテーマが挙げられています。
新しい技術を活用してエンターテイメントを拡張する取り組みを実施するとしています。また、エンターテイメントを届け、人々とつながる活動にも力を入れる予定です。
参照:バンダイナムコ「Bandai Namco Entertainment 021 Fund」
「創り出す〜エンターテインメントを創り出す〜」では、以下の目的のために投資を行うとしています。
エンターテイメントの発展を新しい技術の活用で加速させる予定です。
「届ける~エンターテインメントを届けて、人々をつなげる〜」では、エンターテインメントを楽しむ人々と創り出す人をつなぐことを目的に投資を行います。
バンダイナムコは、新しいエンターテインメントを形成しても、適切に人々に届けなくては意味がないとしています。そのため、エンターテインメントを届ける技術や活動に投資する予定です。
「つながる〜エンターテインメントとのつながりをより熱く、より強くする〜」では、エンターテインメントと人のつながりをさらに熱く強くすることを目的に投資を行います。
近い将来、メタバースの普及により仮想空間での活動が活発化していくと予想されています。そのため、メタバースを通じて人々をつなげる活動に投資する予定です。
IPメタバース関連事業は「つながる」に含まれます。
プレシードからレイターステージまでの、幅広い成長段階のスタートアップ企業を対象に投資すると発表されました。投資の規模として、年間10億円(3年間で30億円)程度の出資が想定されています。
一企業への投資額の目安は、数千万〜5億円の予定です。
投資事例として、スマートフォンでの画面共有型ゲーム配信プラットフォームを開発・運営する株式会社ミラティブへの出資があります。
ミラティブは、自分のアバターを作成して配信することができるプラットフォームです。アバターは自身の動きと連動させることができ、メタバースの先駆けともいえるでしょう。
参照:バンダイナムコ「『Bandai Namco Entertainment 021 Fund』」
参照:PRTIMES「2022年11月、スマートフォンでの画面共有型ゲーム配信プラットフォームを開発・運営する株式会社ミラティブに出資」
バンダイナムコのIP軸戦略において主要IPに位置付けられているのは以下の14作品です。
引用:バンダイナムコ「主要IPのご紹介」
© アイドリッシュセブン
© BNOI/アイナナ製作委員会
「アイドリッシュセブン」は、女性を中心に心を打つストーリーが注目を集める作品です。グッズやアニメなど、多彩なサービスを展開しています。
引用:バンダイナムコ「主要IPのご紹介」
© 窪岡俊之THE IDOLM@STER™&
© Bandai Namco Entertainment Inc.
「アイドルマスター」シリーズは、男女問わず幅広い人気を集める作品です。音楽CDやWebラジオなど多彩な商品を展開しています。
引用:バンダイナムコ「主要IPのご紹介」
© 円谷プロ
© ウルトラマンデッカー製作委員会・テレビ東京
「ウルトラマン」シリーズは、おもちゃを中心に商品を展開している作品です。昭和41年から放送され、現在も幅広い年齢層の支持を集めています。
引用:バンダイナムコ「主要IPのご紹介」
© 2022 石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映
「仮面ライダー」シリーズは、国内外問わず、幅広い支持を集めている作品です。おもちゃを中心にサービスを展開しています。
引用:バンダイナムコ「主要IPのご紹介」
© 創通・サンライズ
© 創通・サンライズ・MBS
「機動戦士ガンダム」シリーズは、映像作品を中心に国内外問わず幅広い年齢層に支持されています。プラモデルを中心としたおもちゃが人気です。
引用:バンダイナムコ「主要IPのご紹介」
© テレビ朝日・東映AG・東映
「スーパー戦隊」シリーズはアジアでの人気が根強く、45作品以上続いています。おもちゃを中心に幅広いサービスを展開している作品です。
引用:バンダイナムコ「主要IPのご紹介」
© やなせたかし/フレーベル館・TMS・NTV
「それいけ!アンパンマン」は親子からの人気が高く、子ども向けグッズを中心にサービスを拡大している作品です。
引用:バンダイナムコ「主要IPのご紹介」
© BANDAI
「たまごっち」シリーズは、携帯型育成おもちゃとして誕生した作品です。他社と共同開発したキャラクターのたまごっちも人気を集めています。
引用:バンダイナムコ「主要IPのご紹介」
© バードスタジオ/集英社・東映アニメーション
「ドラゴンボール」シリーズはアニメやコミックが幅広い層に支持されています。カードやフィギュアなどのサービスが人気です。
引用:バンダイナムコ「主要IPのご紹介」
© PAC-MAN™& ©Bandai Namco Entertainment Inc.
「パックマン」は、老若男女楽しめるゲームとして販売され、世界中で愛されている作品です。ゲームだけでなく、CMでのタレント起用など幅広く利用されています。
引用:バンダイナムコ「主要IPのご紹介」
© ABC-A・東映アニメーション
「プリキュア」シリーズは、3〜6歳の子どもを中心に人気を集めている作品です。おもちゃを中心に商品を展開しています。
引用:バンダイナムコ「主要IPのご紹介」
© 岸本斉史 スコット/集英社・テレビ東京・ぴえろ
「BORUTO」「NARUTO」は国内外問わず、コミックやアニメが人気を博している作品です。ゲームを中心にサービスを展開しています。
引用:バンダイナムコ「主要IPのご紹介」
© 2022 プロジェクトラブライブ!スーパースター!!
「ラブライブ!」シリーズは、スクールアイドルグループの成長物語であり、キャラクターや楽曲が人気を集めている作品です。グッズのほかライブイベントも展開しています。
引用:バンダイナムコ「主要IPのご紹介」
© 尾田栄一郎/集英社・フジテレビ・東映アニメーション
「ワンピース」は、国内外問わずコミックやアニメが人気の作品です。家庭用ゲームやフィギュアなどのサービスを展開しています。
バンダイナムコは、主要IP各々の世界を活かし、価値の最大化を図ることを目指しています。
バンダイナムコ社が提案するIPメタバースは、新しいコミュニティーの形や人同士のつながり方を提案するものです。
メタバース空間でIPとファンの結びつきを強めることで、IP価値の最大化を狙っていく戦略です。
2023年10月のガンダムメタバース「ガンプラコロニー」を皮切りに、IPメタバースの展開は進んでいくでしょう。
IPメタバースをはじめとした、バンダイナムコのIP戦略は、今後も要注目です。
IP magでは、バンダイナムコだけではなく任天堂のIP戦略も解説しています。また、IPコンテンツを使ったマーケティングについても紹介していますのでご覧ください。
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