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「著作権を侵害せず、ポケモンのキャラクターを使用する方法はある?」「ポケモンのキャラクターをSNSアイコンに利用したいけれど、著作権侵害にあたる?」
ポケモンの著作権の扱いについて、上記のような疑問をお持ちの方もいるでしょう。
ポケモンには著作権があり、商用目的の無断使用や法人による無許諾使用は、著作権侵害としてペナルティが科される場合があります。
本記事は、ポケモンの著作権を侵害する可能性があるケースや、侵害せずに利用する方法などについて詳しく解説します。
ポケモンキャラクターを利用したい方や、二次創作したいと考える方はぜひ参考にしてください。
ポケモン(ポケットモンスター)には、著作権があります。
ポケモンの原著作権者は、任天堂株式会社、株式会社クリーチャーズ、株式会社ゲームフリークの3社です。さらに、ポケモンの総合プロデュースを委託している、株式会社ポケモンを加えた4社が著作権を保持しています。その他、ポケモングループの指定する第三者にも、著作権が帰属しています。
4社がそれぞれ明示している著作権のガイドラインは、以下のとおりです。
著作権者 | ガイドライン |
---|---|
任天堂株式会社(ビデオゲーム製造・販売) | ゲームからキャプチャした映像およびスクリーンショットについて ・適切な動画や静止画の共有サイトに投稿(実況を含む)する ・別途指定するシステムを使用した収益化に対して著作権侵害を主張しない |
株式会社クリーチャーズ(トレーディングカードゲーム・ビデオゲームの開発など) | イラスト・写真などの著作物は、著作権法によって認められる場合のみ利用できる |
株式会社ゲームフリーク(『ポケットモンスター』シリーズの原案、ビデオゲームの開発) | 文章・画像などの著作物は、著作権法によって認められる場合のみ利用できる |
株式会社ポケモン(ポケモンの総合プロデュース) | ・データは個人的に楽しむ場合に限り、利用を許諾される(著作権は譲渡されない) ・データのコピー、改変、配布などはできない |
参照:任天堂株式会社「ネットワークサービスにおける 任天堂の著作物の利用に関するガイドライン」
参照:株式会社クリーチャーズ「サイトポリシー」
参照:株式会社ゲームフリーク「サイトポリシー」
参照:株式会社ポケモン「ご利用について|ポケットモンスターオフィシャルサイト」
なお、任天堂の著作権についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
ポケモンの著作権を侵害する可能性があるケースとして、主に以下の4つが挙げられます。
それぞれについて、詳しく解説します。
なお、著作権についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
商業目的の利用は、ポケモンの著作権を侵害する可能性があります。
株式会社ポケモンと任天堂株式会社のガイドラインによると、著作物の利用は個人的に楽しむ場合に限り許諾するとされています。収益化を狙い、キャラクターの画像を無断で使用した場合、著作権侵害にあたるため注意しましょう。
著作権管理を委託されている株式会社小学館集英社プロダクションは、アニメ作品『ポケットモンスター』の違法コンテンツに対応しています。具体的には、海賊版が出回らないよう、世界各国の動画投稿サイトなどを監視、内容に応じて差止対応を行っています。
ポケモンキャラクターの商品化、商業目的の公式画像の使用許可などについては、個別に契約しなければなりません。別途問い合わせや、ポケモンキャラクターの著作権管理窓口に申請が必要です。
参照:株式会社ポケモン「ご利用について|ポケットモンスターオフィシャルサイト」
参照:任天堂株式会社「ネットワークサービスにおける 任天堂の著作物の利用に関するガイドライン」
参照:株式会社ゲームフリーク「各種お問い合わせ先」
参照:株式会社小学館集英社プロダクション「ShoPro メディア事業本部 ライセンス事業部」
法人が無許諾でコンテンツを使用することは、著作権侵害にあたる可能性があります。
原則として、株式会社ポケモンや任天堂株式会社が定める著作物の利用についてのガイドラインは個人が対象です。法人の場合、著作権法によって認められている「個人的に楽しむ目的としての使用」に該当しません。
法人がコンテンツの使用を希望する場合、個別の契約が必要です。
参照:株式会社ポケモン「ご利用について|ポケットモンスターオフィシャルサイト」
参照:任天堂株式会社「ネットワークサービスにおける 任天堂の著作物の利用に関するガイドライン」
ゲームは開発者やメーカーの著作物となるため、無許諾のゲーム配信は、著作権侵害にあたる場合があります。著作物を利用したゲーム配信については、著作権者からの許諾を得ることが必要です。
任天堂株式会社は、創作性やコメントが含まれたゲーム紹介動画やゲーム実況動画等の投稿を認めています。ただし、以下の行為はガイドライン違反です。
ポケモンの著作権を持つ他3社は、配信に関する規約を公開していません。
参照:任天堂株式会社「ネットワークサービスにおける 任天堂の著作物の利用に関するガイドライン」
なお、任天堂とゲーム実況の著作権についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
著作物を利用して二次創作したコンテンツを無許諾で販売すると、著作権侵害にあたる場合があります。
任天堂株式会社は、著作物を利用して創作した音楽や動画、静止画などを許可なく販売しないよう求めています。株式会社ポケモンも、データの改変や配布などはできないと明示しているため、違反しないよう注意しましょう。
参照:任天堂株式会社「ネットワークサービスにおける 任天堂の著作物の利用に関するガイドライン」
参照:株式会社ポケモン「ご利用について|ポケットモンスターオフィシャルサイト」
ポケモンの著作権を侵害せず、コンテンツを利用する方法として以下の方法があります。
5つの方法について、詳しく解説します。
著作権を侵害しない方法として、ポケモンセンター公式X(旧Twitter)が提供している素材を利用する方法があります。
SNSのアイコンや壁紙としての利用を許可されている画像であれば、著作権を侵害せず、ポケモンキャラクターをSNSのアイコンや壁紙に使用可能です。
ただし、以下の利用規約を守る必要があります。
また『ポケットモンスター』のイメージを損なう可能性がある場合は、使用停止などの措置を講じるとしています。
画像の使用に関連する損害が発生した場合、損害賠償を求められる可能性があるため注意が必要です。
参照:ポケモンだいすきクラブ「プロジェクトカビゴン」
参照:ポケモンセンター公式X
ポケモンのロイヤリティフリー素材なら、著作権を侵害せずに利用できます。ロイヤリティフリーとは、著作権は保持されているものの、規約範囲内なら利用可能であることです。
教育・保育目的の素材提供サービス「ポケモンイラストラボ」は、ポケモンのイラスト素材を無償でダウンロード可能です。100種類以上のイラスト素材やぬりえ素材、ポスター素材など多数そろっています。
使用する際のルールは、以下のとおりです。
対象施設 | 小学校(公設学童含む)・幼稚園・保育園・認定こども園・児童館(屋内施設)・図書館・小児医療機関・公民館や生涯学習センター等の子ども用スペース |
---|---|
利用可能範囲 | 施設内の非営利活動における使用に限る |
たとえば、教材の挿絵や季節ごとの飾りつけ、掲示物などに幅広く活用できます。
ただし、Webサイト、屋外看板など対外的な広報・宣伝活動や、屋外壁面、門の装飾などの屋外使用はできません。著作権を侵害しないよう、ルールを守って適切に利用しましょう。
参照:株式会社ポケモン「ポケモンイラストラボ 教育・保育目的の素材提供サービス」
なお、ジブリの著作権についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
商用利用を望む際は、申請を行うことが必要です。商品化やポケモン公式画像などの商用利用を希望する場合は、申請窓口が設けられているため、そちらを利用しましょう。
著作権者の1社である株式会社ゲームフリークは、株式会社集英社プロダクションにキャラクターの著作権管理窓口を委託しています。ポケモンキャラクターの商品化、公式画像等の商業的利用申請については、問い合わせ可能です。
商品やキャンペーン・販売促進などのライセンスについては、公式サイトから問い合わせできます。
また株式会社ポケモンでは2018年4月以降、国内の地域ごとに「推しポケモン」を選び、各地の魅力とともに、ポケモンの魅力を国内外に発信するプロジェクトを行っています。
具体的な活動例は以下のとおりです。
グリーティング | 推しポケモンが地域イベントに参加し交流する |
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ラッピングトレイン | 推しポケモンのデザインを施した乗り物を運行する |
ポケモンマンホール | 推しポケモンをデザインしたマンホールを地域ごとに設置する |
観光PR動画 | 推しポケモンを観光パンフレットやPR動画へ活用できる |
取り組みにあたっての使用料は無償です。PR活動を強化したい各自治体の強い味方となるでしょう。
参照:株式会社ゲームフリーク「各種お問い合わせ先」
参照:株式会社ポケモン「日本国内におけるライセンス」
参照:株式会社ポケモン「ポケモンローカルActs - ポケモンだいすきクラブ」
著作権法にもとづき、商業目的以外の利用であれば、著作権を侵害せずに利用可能です。
著作権を持つ4社はそれぞれの公式サイトで、著作権法にもとづく個人利用においては、著作権侵害にあたらない旨を示しています。
著作権法第30条において、個人的または家庭内など限られた範囲内で使用する私的使用であれば、著作物を複製できると明示しています。たとえば、家族に見せるための複製は私的使用ですが、企業が業務上利用する場合は内部的な利用であっても私的使用に該当しません。
また任天堂株式会社は、ゲーム著作物を利用した動画や静止画などについて、営利目的でない場合に限り投稿できるとしています。
参照:任天堂株式会社「ネットワークサービスにおける 任天堂の著作物の利用に関するガイドライン」
参照:e-Gov「著作権法」
なお、ゲーム実況の著作権についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
任天堂株式会社のガイドラインによると、ゲーム著作物について「別途指定するシステム」を使用した投稿であれば、収益化もできるとしています。
2024年11月時点のガイドラインにおける「別途指定するシステム」は、以下のとおりです。
“
“
引用:任天堂株式会社「ネットワークサービスにおける 任天堂の著作物の利用に関するガイドライン」
ガイドラインは随時更新されるため、使用する前に確認することが重要です。
ポケモンの著作権侵害にあたる場合に、想定できるペナルティは主に以下の2つです。
商業目的のキャラクター使用や、法人の無許諾使用などで著作権を侵害していると判断された場合、コンテンツの削除を要請される可能性があります。
著作権者である4社は、著作権者の事前の許可なくイラストや動画などを利用すること(複製、改変、配布、公衆送信等を含む)はできないとしています。トラブルを避けるために、著作権法によって認められる範囲の使用にとどめましょう。
参照:任天堂株式会社「ネットワークサービスにおける 任天堂の著作物の利用に関するガイドライン」
参照:株式会社クリーチャーズ「サイトポリシー」
参照:株式会社ゲームフリーク「サイトポリシー」
参照:株式会社ポケモン「ご利用について|ポケットモンスターオフィシャルサイト」
裁判所の民事手続による救済として、以下の措置を求められる可能性があります。
著作権法第112条によると、著作権侵害を行った者に対する停止請求や侵害を予防する請求ができると明示されています。
著作権を侵害する模倣品・海賊版を製造・販売・輸入するなどしている者に対しては、損害賠償請求されるおそれもあるため避けましょう。損害額については、著作権法第114条において算定規定を設けています。
また著作権法第119条によると、著作権を侵害した者は原則として、10年以下の懲役または1,000万円以下の罰則に処すると定められており、刑事責任の追及がなされる可能性もあります。
参照:特許庁「著作権侵害への救済手続」
参照:e-Gov「著作権法」
ポケモンの著作権に関する事例として、以下の3つを紹介します。
それぞれの事例について、解説します。
ポケモンに登場する「モンスターボール」を無許諾で模倣したモバイルバッテリーの販売停止措置が、2016年に取られました。
模倣されたモバイルバッテリーが、家電量販店オンライン販売サイトで多数出回った事例です。正規品であれば実施している、安全性の確認テストを実施していないことも問題視されました。
株式会社ポケモンは、著作権法ならびに商標法に違反する侵害品として販売停止措置を進め、販売会社に対する法的措置を含めた調査も行いました。
参照:株式会社ポケモン「著作物や商標を無許諾で使用した製品の事例について」
株式会社ポケモンは、ゲームアプリ『口袋妖怪:复刻』の運営者に対して、2021年12月3日に知的財産権の侵害訴訟を提訴しました。
『口袋妖怪:复刻』は、中国で配信されていたゲームアプリです。ゲームアプリ内にポケモンのキャラクターや戦闘システムの酷似などが見られ、大胆なIP盗用が行われたと見なされた事例です。
広東省深圳市中級人民法院において、ビデオゲーム『ポケットモンスター』シリーズの著作権侵害行為が、2024年7月12日に中国裁判所で認定されています。
加えて、不正競争防止法の違反行為もあるとして、損害賠償金1.07億元(約23.4億円・2024年7月12日のTTMレート1元あたり21.89円で換算)の支払いが運営者に命じられました。
参照:株式会社ポケモン「中国における知的財産権侵害訴訟の勝訴判決について」
株式会社ポケモンと任天堂株式会社は、株式会社ポケットペアに対する特許権の侵害訴訟を2024年9月18日に提起しました。
この訴訟は、ゲーム「Palworld / パルワールド」が複数の特許権を侵害しているとして、侵害行為の差止および損害賠償を求めたものです。
特許の内容は公にされていませんが、モンスターボールを投げて、モンスターを捕まえるゲームシステムに関する特許が侵害されているためではないかとの憶測が飛び交っています。
パルワールドは、リリース当初からSNS上でポケモンと酷似しているとの指摘が相次いでいました。
キャラクターが似ているとの声がSNS上で挙がっているものの、見た目の表現を保護する著作権侵害についての訴訟ではありません。システムや技術に関する権利を保護する、特許権を理由にした訴訟です。
株式会社ポケモンは、今後もポケモンに関する知的財産権の侵害行為に対して、適切な対応を取ると示しています。
参照:株式会社ポケモン「株式会社ポケットペアに対する特許権侵害訴訟の提起について」
なお、特許についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
ポケモンの著作権は4社が持っており、ガイドラインに従って適切に利用する必要があります。
原則として、著作権法で認められている「個人的に楽しむ」目的の範囲内であれば、著作権にあたらないといえます。
商用利用においても申請窓口、問い合わせ窓口が用意されているため、その方法を理解したうえで、著作権を侵害しないよう適切に活用しましょう。
IPにまつわる知識・ニュースを随時発信しています。