知的所有権とは?知的財産権(IP)との関係やビジネスへの活用法を解説
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2024.02.02

知的所有権とは?知的財産権(IP)との関係やビジネスへの活用法を解説

「知的所有権はどのような権利なのか詳しく知りたい」

「知的所有権と知的財産権にはどのような違いがあるのだろうか」

「自社で知的所有権を活用したビジネスを始めたいと考えている」

こんな悩みを抱えている方もいるのではないでしょうか。

知的所有権は、人が知的に創造した作品や表現を守るための権利で、ほとんどが法的に定められています。自社のビジネスに活用するには、知的所有権の正しい理解が欠かせません。

そこで本記事では、知的所有権の種類やビジネスシーンにおける実例を解説します。知的所有権を活用したビジネスを検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。

INDEX
  1. 知的所有権とは?わかりやすく解説
  2. 知的所有権と知的財産権の違い
  3. 知的所有権の種類
  4. 知的所有権を活かしたビジネスモデル2選
  5. 知的所有権をビジネスに活かす3つのメリット
  6. 【まとめ】知的所有権はビジネスにも活かせる身近な権利

知的所有権とは?わかりやすく解説

知的所有権とは、人間が知的に創造した作品や表現を守るためのさまざまな権利です。

日本では、2003年に制定された「知的財産基本法」で保護されています。混同されやすい権利に「所有権」がありますが、以下のように知的所有権とは保護される対象が異なります。

所有権

物質や土地など形のあるもの(有体物)を対象とする権利

知的所有権

情報や権利など形のないもの(無体物)を対象とする権利

たとえば、著作権や商号権などは、知的所有権の一種にあたります。知的所有権の種類は、のちほど詳しく解説します。

知的所有権と知的財産権の違い

知的所有権と知的財産権の違いは、以下のとおりです。

知的所有権

財産的価値の保障を必ずしも含まない権利

知的財産権

財産的価値の保障を含んでいる権利

たとえば、アイデアをもとに特許を取得した場合、商品化などがされなければ収益を生むことはありません。この場合、財産的価値の保証を含まないため知的所有権のみが認められ、知的財産権は認められません。

一方で、商品やサービスを実際に開発・提供すると収益性が発生するため、財産的価値の保証を含むとみなされ、知的財産権が認められます。

とはいえ、知的財産権と知的所有権は、実質的にはほぼ同義で使われています。知的所有権によって保障されるもののほとんどが、財産的価値を保有しているためです。

知的所有権や知的財産権については、どちらも「知的財産基本法」で規定されています。

参照:e-Gov法令検索「知的財産基本法

なお、知的財産権(IP)についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

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2024.02.02
IP(知的財産)とは何かをわかりやすく解説!ビジネスでの活用メリットや事例も紹介

知的所有権の種類

知的所有権の主な種類は以下のとおりです。

  • 産業財産権(工業所有権)
  • 著作権
  • 商号権
  • 肖像権

知的所有権を正しく理解するためにも、種類を理解しておきましょう。

産業財産権(工業所有権)

産業財産権は、以下の項目などを含む産業財産を守るための権利です。

  • 新しい技術
  • 新しいデザイン
  • ネーミング
  • ロゴマーク

また産業財産権には、以下の4つの権利が含まれます。

  • 特許権
  • 実用新案権
  • 意匠権
  • 商標権

それぞれの権利について詳しく解説します。

特許権

特許権は、特許登録された発明を保護する権利を指します。たとえば、以下のようなものを対象として特許権が発生します。

  • 自然法則を利用した高度な技術
  • 一定の目的を達成するための具体的な手段

特許権が認められるのは発明です。特許法では、発明を「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」と、規定しています。

参照:特許庁「第1章 発明該当性及び産業上の利用可能性(特許法第29条第1項柱書)

特許権で保護してもらうためには、発明が高度でなければなりません。

具体例として、「VOCALOID」で知られるヤマハ株式会社の音声合成装置があります。人間の歌声に近い、自然な歌唱音声を実現した画期的な技術として特許が認められました。

引用:VOCALOID(ボーカロイド・ボカロ)公式サイト「VOCALOID6の特長
Copyright © 2023 Yamaha Corporation. All rights reserved.

特許権では、従来に新しい技術や機能を有したものを創り出したときに高度と認められ、保護してもらえます。また改良品であっても、従来に無い機能や技術が備わっているものなら、保護の対象です。

権利の存続期間は、登録日から20年間と特許法第67条第1項で定められています。しかし以下の要件を満たしていれば、特許権の有効期限の延長が認められる場合があります。

  • 特許庁の出願審査が遅延した場合
  • 医薬品・農薬などに係る特許発明の場合

有効期限を延長する際は、特許庁長官に対して、延長登録の出願が必要です。特許権の存続期間が終了すれば、誰でも自由に特許発明を利用できます。

参照:e-Gov法令検索「特許法
参照:特許庁「特許・実用新案とは

実用新案権

実用新案権とは、物品の形状、構造もしくは組み合わせに係る考案(アイデア)を保護する権利のことです。「新案特許」とも呼ばれています。特許権とは違い、発明が高度でなくても認められます。

たとえば、実用新案権を取得した事例に王子ネピア株式会社の「ティッシュ箱」があります。従来のティッシュ箱は使い終わった後に箱を潰しにくく、ゴミとしてかさばる問題点がありました。

そこで箱内部にミシンの線を入れることで接着面をはがしやすくして、ぺたんこに潰せるティッシュ箱を発明し、実用新案権を取得しました。

引用:nepia公式ファンサイト イイネピア !「プレミアムソフト
Copyright © 2019. oji nepia co.,ltd. All rights reserved.
Any reproduction, duplication, or distribution in any form is expressly prohibited.

実用新案権の権利の存続期間は、登録日から10年間です。特許庁が管轄する「実用新案法」で規定されています。上記のティッシュ箱の実用新案権も、現在は期間が過ぎてあらゆるメーカーで採用されています。

参照:e-Gov法令検索「実用新案法

意匠権

独創的なデザイン(意匠)を保護する権利です。意匠権を取得すれば、製品や商品のデザインを独占的に使用できるようになります。以下の要素や、これらを組み合わせたものが意匠に該当します。

  • 物品の形状
  • 模様
  • 色彩

自社で創作したデザインを意匠登録しておくことで、コピー商品や類似商品制作への対策に大きな効果を発揮します。意匠登録されている物の具体例は、以下のとおりです。

日用品

文房具や体重計など

住宅関連

テーブルやシステムキッチンなど

衣服類

靴やマフラーなど

容器類

ペットボトルや化粧品容器など

他にも、部品や機械関連の物も意匠登録されています。意匠権の権利の存続期間は、登録日から20年間です。特許庁が管轄する「意匠法」で規定されています。

参照:e-Gov法令検索「意匠法

商標権

自社の商標を保護する権利です。商標とは、自社の製品・サービスを他社のものと区別するために使用するマーク(識別標識)を指します。

具体例として、「Google」が挙げられるでしょう。

引用:Toreru商標検索「商標「Google」の詳細情報

なお、商標権は文字や図形などの「マーク(識別標識)」と、そのマークを使用する商品・サービスとの組み合わせで1つの権利となります。マークのみで商標登録することはできません。

Googleの場合、「Google」のマークと検索エンジンとしての機能や、地図情報をはじめとする商品・サービスとの組み合わせで商標権が登録されています。

商標権を取得しておけば、自社の商標を勝手に真似されたり、使用されたりすることを防げます。自社のブランドイメージを守るためにも、取得しておいたほうがいい権利です。

商標権の権利の存続期間は、登録日から10年間となっています。しかし商標は、事業者の営業活動により蓄積された信用を保護することを目的とした権利です。必要な場合には、存続期間の更新登録を申請することで10年の存続期間を何度でも更新できるようになっています。

特許庁が管轄する「商標法」で規定されている権利です。

参照:Toreru商標検索「商標「Google」の詳細情報
参照:e-Gov法令検索「商標法

著作権

著作権とは、著作者が創作した著作物を、自身の財産として保護する権利です。著作権を取得することで、自分が創作した物を他人に無断で使用されたり、真似されたりすることを防げます。他人が著作物の使用を求めてきたときは、利用を拒否したり制限を設けたりできます。

著作権を認められる対象物は、以下のとおりです。

  • 文芸
  • 学術
  • 芸術
  • 楽曲
  • ソフトウェア

著作権の権利の存続期間は、著者の死後70年間と「著作権法」で規定されています。自身が創作した文章や自作した曲なども、著作権の保護対象です。

身近な知的所有権の一つである著作権の侵害には、細心の注意を払わなければなりません。

参照:e-Gov法令検索「著作権法

商号権

商号権とは、商号を自由に使用できる権利です。商号とは、法務局に登記する会社名や屋号を指します。会社名や屋号を登記する際には、以下のルールなどが存在するため、注意が必要です。

  • 必ず「株式会社」を入れる
  • 同一住所で同一商号は登記できない
  • 公序良俗に反する商号(「詐欺」や「泥棒」など)は登記できない

また以下の権利も含まれて、商号権と呼ばれています。

商号利用権

他人から邪魔されずに商号を使用できる

商号専用権

似ている商号を使用された際に排除できる

商号権を侵害された場合の、権利救済方法は以下のとおりです。

侵害停止・予防請求権

不正に利用した者に対して、侵害の停止・予防を請求できる

損害賠償請求権

侵害した者に対して、損害賠償請求を求められる

商号権は、商法や不正競争防止法などの、法により規定されている権利です。

参照:e-Gov法令検索「商法
参照:e-Gov法令検索「不正競争防止法

肖像権

肖像権とは、自身の顔や容姿を無断で撮影・描写・公表されないように保護する権利です。他の知的所有権とは異なり「肖像権法」といわれる法律は存在しません。法律で定められていなくても、守る必要がある特殊な権利です。

肖像権は、以下の2つに分けられます。

プライバシー権

個人の容姿や情報など、私生活を守るための権利

パブリシティ権

有名人がもつ経済的な利益や価値を財産と捉えて、その財産を独占的に利用する権利

無許可で写真をネットに公開されたり無断で撮影されたりした際には、プライバシー権の侵害にあたる可能性があります。パブリシティ権は、有名人が顧客に与える影響を無断で使用されないように守るための権利です。

他の知的所有権とは異なり、届けを出さなくても権利が保障されます。

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知的所有権を活かしたビジネスモデル2選

知的所有権を活かしたビジネスモデルの例は以下の2つなどです。

  1. キャラクタービジネス
  2. IPビジネス

知的所有権を活かしたビジネスを検討している方は、ぜひ参考にしてください。

キャラクタービジネス

知的所有権を活かしたビジネスにキャラクタービジネスがあります。オリジナルマスコットキャラクターなどを創作し、販促などに活かすビジネスモデルです。

キャラクターを商標登録することで、自社で独占的に使用できます。たとえば、熊本県のゆるキャラである「くまモン」は、商標権を取得している事例です。

引用:くまモンオフィシャルホームページ「プロフィール
©2018 Kumamoto Prefectural Government. All rights reserved.

くまモンの商標は、熊本県のPRにつながるのであれば、原則無料で利用できます。さらに個人の非営利目的での利用であれば許可も必要ありません。

商標登録を行っても、あえて利用制限を緩くすることで、さまざまな場面でくまモンが利用され、認知度がどんどん上昇しました。今や全国的に有名になったくまモンは、キャラクタービジネスを成功させた事例といえるでしょう。

IPビジネス

IPを活用したビジネスも知的所有権を活用したビジネスの一つです。知的財産(IP)を活用し、ライセンス使用料などで収益を得るビジネスモデルです。

一定のブランド力を獲得したIPは、グッズ販売やコラボレーションなど、二次利用・三次利用の形で、商業展開が可能になりますとくにアニメ・ゲームなどの産業で注目されているビジネスモデルです。

たとえば、カードゲームやゲームソフトの開発を手掛ける「株式会社ブシロード」は、IPビジネスを行っています。自社の知的財産をアニメやゲームの製作会社に提供し、協業することで、自社のIP価値を高めることに成功している事例です。

引用:株式会社ブシロード「当社の主要IP
©BanG Dream! Project
©2017 Bushiroad Inc.

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知的所有権をビジネスに活かす3つのメリット

知的所有権をビジネスに活かすメリットは、以下の3つです。

  1. 競合他社との差別化を図れる
  2. 事業展開を有利にする
  3. 社員のモチベーションを上げる

特許庁も、中小企業が知的所有権を事業に積極的に活かすことを推進しています。

競合他社との差別化を図れる

知的所有権を活用することで、競合他社との差別化を図れます。以下の観点から、競合他社との差別化を図り、競争力の強化が可能です。

  • 自社ブランドを構築できる
  • 技術力やオリジナリティをPRする効果がある
  • 自社技術の強みを見える化できる

自社ブランドを構築したり、オリジナリティをPRしたりすれば、自社のファンが生まれ、顧客の囲い込みを狙えます。顧客に自社ブランドを気に入ってもらえれば、新たな商品を出したときにも、買ってくれる可能性が高まるでしょう。

事業展開を有利にする

知的所有権を活用することで、事業展開を有利にできます。以下のような観点から、事業展開が有利になるでしょう。

  • 権利侵害に対して法律に則って対処できる
  • 似ている商品が市場に参入することを防げる
  • ライセンスを利用することで事業の拡大につながる

競合他社が、自社が発表した商品やサービスのコピー商品を出さないように対策できます。他社に自社のライセンスを貸し出すことで、新たな顧客へのアプローチが可能となるでしょう。

知的所有権を活用すれば、自社事業を有利に進められます。

社員のモチベーションを上げる

知的所有権は、社員のモチベーションを上げることにもつながります。

以下の観点から、社員のモチベーションが上がり、会社全体の生産性がアップするでしょう。

  • 社員の創意工夫を推進して社内を活性化できる
  • 報奨制度や表彰制度を導入して社員のやる気を向上させる

ヒットした商品やサービスを開発した社員に報酬や表彰を与えることで、社内の活性化につながります。成果を出せば、報酬をもらえることや表彰されることがわかっていると、他の社員の仕事に対する意欲がアップするためです。

知的所有権を活用すれば、社内の活性化や社員のやる気向上の効果が期待できます。

【まとめ】知的所有権はビジネスにも活かせる身近な権利

知的所有権とは、人間が知的に創造した作品や表現を守るための権利です。知的財産基本法で、規定されています。

知的所有権にも種類があり、ほとんどが法的に規定されているので、権利侵害には注意が必要です。また以下のような方法で、知的所有権をビジネスに活用できます。

  • キャラクタービジネス
  • IPビジネス

知的所有権をどのようにビジネスに活用するか悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。自社の知的所有権を有効活用して、ビジネスに役立てましょう。

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